「2024年問題」に挑む建設テック5社のすごい新技 大手ゼネコンと次々に協業し業界の課題を克服

[Publisher] 東洋経済新報社

この記事は、東洋経済新報社『東洋経済オンライン/執筆:梅咲 恵司』(初出日:2023年9月17日)より、アマナのパブリッシャーネットワークを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせは、licensed_content@amana.jpにお願いいたします。

建設業界には2024年4月から残業規制が適用される。業界各社はその対応を急ぐ(写真はイメージ、撮影:今井康一)

デジタル技術を武器に台頭するベンチャーが、ゼネコン業界に新風を起こそうとしている。

建設業には2024年4月から、「働き方改革関連法」に基づく時間外労働の上限規制が適用される。特別な事情がない限り、時間外労働を月45時間、年360時間以内に収めなければならない。違反すれば罰則が課せられる。

人手不足が深刻なゼネコン各社は目下、あらゆる業務の効率化を図ることで「2024年問題」に対応しようとしている。大手ゼネコンの中には、小資本ながらも得意領域を持つベンチャーと手を組み、業界課題を克服しようとする動きもある。

「建設業はこの先もたない」

2007年設立のリバスタ(東京都江東区)は、最近台頭するベンチャーの中でも先輩格にあたる。創業者の高橋巧代表は鹿島でのエンジニアリングの経験があり、ベンチャーの共同創業を経て、その後にリバスタを設立した。

「職人の高齢化や若者の就労不足といった課題を解決しないと、建設業はこの先もたない」。リバスタの高橋代表はそう強調する。

リバスタは産業廃棄物処理の業務フローを適正・簡素化する「電子マニフェストサービス」を中心に成長。電子マニフェストサービスはいまや、建設、産業廃棄物処理業界の1万社以上の顧客に利用されている。

リバスタの「Buildee」を使えば、施工管理の効率化が可能だ(写真:リバスタ)

同社の目下の成長エンジンは、建設現場の施工管理業務を一括でサポートするクラウドサービス「Buildee(ビルディー)」だ。

車両運搬出入・揚重(ようじゅう)機材の使用予定などを元請け会社と協力会社の間で常に共有・確認でき、現場業務の効率化を可能にしている。

リバスタは今年7月、スーパーゼネコンの竹中工務店と共同開発した新サービスを投入した。竹中工務店は作業員の生産性向上を目指す業務アプリ「位置プラス」シリーズを展開する。このシリーズの1つである高所作業車の管理に特化したサービス「高車管理」と、リバスタのビルディーが持つ作業計画書などの帳票作成機能を連携させた。共同開発した新サービスは、高所作業車の管理業務を効率化できる。

竹中工務店から共同開発のオファー

「複数の業者が入り乱れる建設現場では、高車などの機械の管理は複雑。それにもかかわらず、現場ではこれまでホワイトボードを使って調整されていた。竹中工務店と共同開発した新サービスでは、各業者が機材を使用する計画やスケジュール管理をマッチさせながら、WEB上で効率的に調整できる」(リバスタの東修平執行役員)。

実は、この共同開発は、竹中工務店側からオファーしたものだった。いまから約3年前の建設業界向けの展示会で、竹中工務店の関係者がリバスタの展示ブースに来場し、商談によりビルディーとの連携について、具体的に検討していくこととなった。

竹中工務店は自社開発した位置プラスシリーズの外販を積極化する意向を持っており、リバスタと連携すれば、ビルディーを利用している約300社もの建設会社に訴求することも可能になる。リバスタ側としても、「大手ゼネコンとの連携を拡大していこうという考えがあった」と、東執行役員は話す。

リバスタはほかにも、スーパーゼネコンの大成建設とのCO2(二酸化炭素)排出量計測管理サービスを開発中。準大手ゼネコンの安藤ハザマ、戸田建設、西松建設の3社とも、建設現場の進捗・歩掛(ぶがかり:必要な作業の手間を数値化したもの)管理サービスを共同開発している。

リバスタはこういった大手ゼネコンとの連携をテコにして業容を拡大。売上高は2018年度19.7億円、2020年度32.2億円、2022年度45.3億円と、2桁成長を継続している。利益ベースでも、創業2年目から増益路線を継続中である。

「若い人の建設業への流入が増えることも期待」

リバスタの高橋巧代表(写真左)は鹿島でのエンジニアリングの経験を持つ。写真右は同社の東修平執行役員(記者撮影)

リバスタは芝浦工業大学とも、建設技能者向け「ポイント付与システム」を開発中だ。元請け会社が推進する活動に対して、インセンティブとなるポイントが技能者に付与される。技能者はたまったポイントをアプリ経由で電子マネーとして使うことができる。

この評価システムはさらには、国土交通省が推進するCCUS(建設キャリアアップシステム:建設業に関わる技能者の就業履歴などを登録・蓄積する仕組み)と連携して、技能者キャリア形成促進の一環としての展開も視野に入れる。

「このサービスが実現すれば、技能者の待遇改善につながる。ひいては若い人の建設業への流入が増えることも期待できる」(高橋代表)。リバスタはポイント付与システムを2024年内にリリースする算段だ。

大手ゼネコンとの連携を打ち出す建設ベンチャーは、ほかにも数多くある。

研究開発型の建設テック「DataLabs(データラボ)」(東京都中央区、2020年設立)は、自動3Dモデル(BIM/CIM)技術を基に建設業務を効率化するクラウドシステムを提供している。  

主力サービスの「Modely(モデリー)」は、建物の配筋配置(鉄筋の配置)をチェックする「配筋検査」の省力化に役立つ。iPadなどで取得した配筋の点群データをクラウドにアップロードすると、それを自動でモデル化し、検査帳票も自動で出力できる。検査帳票を共有すれば、発注者の現場での立ち会い頻度も減らせる。

DataLabsの主力サービス「Modely(モデリー)」は、建物の「配筋検査」の省力化に役立つ(DataLabs提供)

従来の配筋検査には複数人必要だったが、モデリーを使えば1人での作業が可能になる。鹿島や清水建設といった大手ゼネコンから地方建設会社まで、こぞって導入している。

田尻大介社長は大学卒業後、JAXA(宇宙航空研究開発機構)で衛星データの利用普及事業に従事した経験を持つ。「さまざまな技術を知ることが好きで、それらの技術がビジネスにつながることに面白みを感じる」と語る。

建設工事で発生するCO2排出量をAIで自動算出

環境分野に焦点を当てた建設DX(デジタルトランスフォーメーション)の領域を開拓しようとしているのは、2022年に設立したばかりの「ゴーレム」(東京都千代田区)だ。

国内で初めて、建築物のCO2排出量計算ツールを提供。建物の資材製造・建設工事など一連の過程で発生するCO2排出量をAIで自動算出できる。

ゴーレムの野村大輔社長は、環境分野に焦点を当てた建設DXの領域を開拓する(記者撮影)

大手ゼネコンとの連携を強化しており、スーパーゼネコンの清水建設とは共同でCO2排出量算出プラットフォーム「SCAT(スキャット)」を開発、今年4月から本格運用を開始した。

カーボンニュートラル実現に向け、大手デベロッパーの間では環境性能の高い建物への需要が高まっている。建物建設中の環境負荷についても、正確に算出しようとする動きが顕著になっている。

ただ、大手ゼネコンともなると複数の現場を持っており、すべての現場で環境負荷を出そうとすると膨大な時間と費用がかかる。ゴーレムのプラットフォームを使えば、CO2排出量の算出効率化を期待できる。

ゴーレムの野村大輔社長は大手素材メーカーの生産技術エンジニアの経験があり、ソフトウェアエンジニアを経て、建設DXを手がけた実績がある。その過程で環境分野についての知識を習得。「建設×データ解析×環境の領域で、当社より詳しい会社はない」と野村氏。大手デベロッパーやゼネコンと連携し、まずはCO2排出量計算ツールの企業への浸透に力を注ぐ。

建機レンタルや職人向けの新サービス

Arch(アーチ)」(大阪府大阪市、2021年設立)は、建機レンタルの管理をデジタル化するアプリを展開。建設会社と建機レンタル会社をつなぎ、レンタル業務を効率化することができる。「非効率で、ずさんな管理が残る建設業界を変えたい」と、松枝直代表は力を込める。

クラフトバンク」(東京都中央区、2021年設立)は工事の受発注会社をマッチングするサービスを推進。

多重下請け構造の建設業界では、工事会社間でミスマッチが起こりやすいが、クラフトバンクを使えば無料で工事会社を探せる。より多くの工事会社から選べる有用プランは、月2万円から利用可能だ。

最近では、リアルマッチングイベント「職人酒場」を全国で実施。各会場には左官、解体、塗装といったあらゆる業種の職人が集まる。人脈形成の場として重宝されている。

江戸時代や明治時代に創業したスーパーゼネコンを頂点に、約47万社もの事業者が裾野を広げる建設業界は、変革の意識が乏しく、いまだに電話やファクスで帳票のやりとりを行う会社があるなど非効率な面が数多く残る。新機軸を打ち出す建設ベンチャーは、業界全体を変革する「台風の目」となれるか。

週刊東洋経済 2023年9/16・23合併特大号(すごいベンチャー100 2023年最新版)』(東洋経済新報社)

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