東京駅で爆売れ「お土産菓子」作る鳥取企業の正体 あの北海道「ルタオ」生み出したヒットメーカー

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この記事は、東洋経済新報社『東洋経済オンライン/執筆:田中 理瑛』(初出日:2023年5月31日)より、アマナのパブリッシャーネットワークを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせは、licensed_content@amana.jpにお願いいたします。

「ザ・メープルマニア」「東京ミルクチーズ工場」「バターバトラー」など東京駅だけで12店の土産店を出店している(撮影:尾形文繁)

観光客や訪日外国人客であふれかえり、賑わいを取り戻した東京駅。駅の構内や改札外にずらりと並ぶ土産物屋の中で、とりわけ混雑する店がある。

ザ・メープルマニア、東京ミルクチーズ工場、COCORIS、岡田謹製あんバタ屋、PISTA & TOKYO、バターバトラー。東京駅で人気のお土産ランキングで常連のこれらのブランドは、実は鳥取県米子市に本社を置く寿スピリッツが手がけている。

寿スピリッツは東証プライム市場に上場する持ち株会社で、地域限定の観光土産菓子で最大手。傘下には「ザ・メープルマニア」などを手がける中核企業シュクレイ、北海道の「ルタオ」などのケイシイシイ、長崎の「九十九島せんぺい」などの九十九島グループを含め17の子会社がある。

2021年3月期にはコロナ禍で29億円の営業赤字に陥ったものの、2023年3月期の業績は売上高501億5500万円(前期比約1.5倍)、営業利益99億5100万円(同約7倍)と急回復。インバウンド需要がコロナ前水準まで戻らない中でも、売上高、営業利益ともに過去最高を記録した。営業利益率は19.8%と大手菓子メーカーでは類をみない高収益体質となっている。

経営不振の菓子会社を再建

前身は1952年に河越誠剛社長の父が米子市で設立した、山陰の銘菓「因幡の白うさぎ」が有名な寿製菓。製造工程を見学できる大型直販施設「お菓子の壽城」も運営する。全国にまたがる多彩なブランド展開の背景には、経営不振の菓子会社を傘下に収めて再建してきた買収戦略がある。

1996年に北海道で廃業寸前だったチョコレート工場(現ケイシイシイ)を買収し、その後「ルタオ」を立ち上げた。東京では1998年に宮内庁御用達の老舗和菓子「ちとせ」の商標を譲受し、和菓子ブランドを展開。ほかにも2005年に九州拠点の九十九島グループの菓子事業を継承し、2016年には明治ホールディングスから赤字だった洋菓子のフランセを取得した。

再建と高成長のカギは独自のブランドプロデュース力だ。ブランド開発の核として寿スピリッツが掲げるのが「プレミアム・ギフトスイーツ」という概念。従来の旅行や帰省のお土産としてだけでなく、手土産や誕生日、バレンタインデーなどイベントでのギフト、さらには自分へのご褒美として買ってもらえる商品のことを指している。

同社グループ経営管理本部長の松本真司常務取締役は「多用途で買ってもらえるギフトの市場を作り、自分たちで拡大させてきた」と話す。

万人受けする安い商品ではなく、高価格帯で他にはない味や商品であることも重要だ。近年は菓子を受け取った人が商品についてインターネットで調べることも多く、人気やこだわりのある商品がギフトとして喜ばれる。「年々、ギフトに求められる価値は高まっている」(松本氏)。

リピーターを生み出す

「嗜好品」に特化していることは、高い収益力にもつながっている。菓子業界は、鶏卵などの原材料価格の急激な高騰に直面している。もともと価格競争の激しい「日常用の菓子」は、値上げによって客が離れ販売量を落とすリスクがあり、各社はどこまで値上げするかに頭を悩ませている。

河越社長は5月16日の決算説明会で「プレミアム・ギフトスイーツに特化していることで、売価を適正に上げることができている。こういうこと(コスト上昇)がなくても商品の価値を上げて、売価を上げてきた。時代に適応したビジネスになっている」と語った。

ブランド開発ではファン作りも意識する。東京ではグレープストーンの「東京ばな奈」、北海道では石屋製菓の「白い恋人」がそれぞれの地域の定番土産で1強の状態だが、それらのバリエーション展開は味違いの商品が中心だ。

一方で「ザ・メープルマニア」は、クッキー、フィナンシェ、バームクーヘン、パイサンドなど複数種類を用意しており、期間限定商品もある。「例えば週1回の出張のたびに、1度買ってもまた別の商品を買ってもらえるのが我々の強み。ブランド自体の熱狂的なファンになってもらえる」(松本氏)。

ファンがリピーターとなり、ギフトを受け取った人も気に入って購入する。莫大な広告費をかけずとも裾野が広がっていくという好循環を狙っている。

店舗展開は、土産物売り場の激戦地である東京駅エリアで攻勢をかけている。2020年3月期には東京駅での出店は3店舗だったが、コロナ禍でも出店を拡大し現在はシュクレイの8店舗を中心にグループで12店舗になった。

松本氏は「東京駅は土産が一番売れる場所なので、どの会社も狙っている。その中で次々に出店できているのは、ザ・メープルマニアを中心に店舗や催事で実績を残せたからだ」と語る。

「ザ・メープルマニア」は、女性受けのよいメープル味を打ち出し、売り場で過去最高の売り上げを記録した。すると人流が多い売り場に出店できるようになった。そこで売り上げを伸ばし、さらに好立地の売り場への拡大や他のブランドの店舗の出店につながった。

「いい売り場をいただいて、期待以上に成果を出すことが一番の営業活動」(河越社長)。今後の成長のカギは東京駅など首都圏でのシュクレイの拡大と、インバウンド需要の復活だ。

コロナ禍から株価は3倍へ上昇

インバウンド向けで重視している国際線ターミナルのギフトショップでの売上高は、2020年3月期に約54億円から2021年3月期に約9800万円とほぼ消滅した。ただし昨秋の入国制限緩和以降は回復基調。2026年3月期に100億円の目標を掲げる。

とはいえインバウンドでは知名度の高い土産が人気で、まだ認知度が低い。国際線ターミナルでの営業に力を入れ始めたのは7~8年前からで、東京ばな奈や白い恋人と比べて「入り込むのは遅かった」(松本氏)。

そこで外国語で接客できる販売員を積極的に配置して、試食を通じた客とのコミュニケーションを重視する「超試食販売」と呼ぶ得意の手法でアピール。東京駅と同様に、実績を重ねて好立地の売り場を拡大していく目論見だ。

コロナ禍でも新ブランド開発や出店拡大など、攻めの姿勢を続けた寿スピリッツ。2020年9月に約1500億円だった時価総額は、5月末時点で3200億円超へ倍増している。株式市場の期待を集める中、どこまで快進撃が続くのか。本格的に人流が回復する中、真価が問われるのはこれからだ。

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