[Publisher] Construction Dive
この記事はConstruction DiveのMelissa Goldinが執筆し、Industry Dive Content Marketplaceを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@industrydive.comにお願いいたします。
- 米イリノイ州シカゴに本拠地を置くデジタルツイン・プラットホームを提供するシティゼニス社は、2022年6月にアメリカ合衆国エネルギー省が取り組む「ベター・ビルディングズ・チャレンジ」のロサンゼルス支部と提携し、ロサンゼルス市の一部の「デジタルツイン」である仮想レプリカの構築を支援すると発表。これは市内の建物を、より持続可能で、炭素排出が少ないものにすることを目標としている。
- 本プロジェクトはシティゼニス社の「クリーンシティーズ/クリーンフューチャー」構想の一部。デジタルツインを都市に無料で提供することにより、費用がかかり得る脱炭素化の取り組みを仮想的に実験できるようにする。実験を行った後、現実世界でデータに基づいた決定が下される予定だ。
- まずロサンゼルスのダウンタウンにあるバンカー・ヒルを中心に実施。この提携により、ロサンゼルス市の炭素排出の43%を占める建物部門全体で、2050年までに実質ゼロ排出を実現する「グリーン・ニューディール」目標に向けた取り組みも支援する。
テネシー州チャタヌーガからネバダ州ラスベガスまで、アメリカの各地でデジタルツイン技術に注目する都市が増えています。
例えばチャタヌーガでは、500の異なる情報源から得たデータを利用して、同市のデジタルツインに情報を入力しました。具体的には、「911」の緊急通報データや交通監視カメラ、気象観測所といった情報源のデータです。結果、デジタルツインで行われた実験で、渋滞時の交通量を最大30%削減することができました。
シティゼニス社は、「クリーンシティーズ/クリーンフューチャー」の一環として、ニューヨーク市とアリゾナ州フェニックスにもデジタルツイン技術を導入しています。シティゼニス社のマイケル・ジャンセン最高経営責任者(CEO)によると、同社では最初の評価実験として、この構想を通じて10カ所の都市にデジタルツインを提供する計画であり、近いうちにシカゴとヒューストンでも発表する可能性があるとのことです。
「ロサンゼルス広域建物所有・管理者組合(Building Owners and Managers Association of Greater Los Angeles)」で、政府および公共業務責任者を務めるアーロン・タクシー氏は、この技術は「既存建築物の脱炭素化に、とてつもなく大きく役立つ可能性がある」と話しています。「情報源とするデータと、描画される360度の映像を通じて、建物の所有者たちは脱炭素化に向けた現実的なロードマップを、戦略的かつコスト効率の高い方法で作成できるようになります」。
タクシー氏によると、このような脱炭素化がもたらす恩恵には2つの側面があります。「脱炭素化された建築物は多くの場合、地球にとっても賢明な経営判断においても、好ましいものです」と、タクシーは言います。「脱炭素化が戦略的に行われると、建物運営費を長期的に大きく節約できる可能性があります。そして、いまでは、新しい作業スペースを借りようとする多くの企業が、建物の持続可能性を重視するようになっています」
ロサンゼルスのプロジェクトでは、最初は主要な公共の建物と周辺地域の脱炭素化の取り組みに関連するデータに焦点をあてる計画です。このようなプロジェクトに使われるデータは通常、エネルギーや建物の管理システム、占有率の値、建築に関する情報などから得る、とジャンセン氏は述べています。彼はさらに、ロサンゼルスが解決を望む問題のいくつかは、冷暖房に関する戦略にあると語っています。デジタルツインを用いた詳細な分析を行った後は取り組みを拡大し、同市の残りの地域を含めるだけでなく、その他の都市計画の問題にも対処するとのことです。
「デジタルツインが役立つ使用事例の数に限りはありません。制限は存在しないのです」と、ジャンセン氏は述べます。
ジャンセン氏によれば、デジタルツインの実験は2023年前半に行われる予定とのことです。さらに、「土台となるデジタルツイン」は「主要なアセット」と共にすでに構築済みであり、チームはプロジェクトを完成させるために必要なデータを収集しているところだと話しています。
ジャンセン氏いわく、ロサンゼルスのプロジェクトは、規模が大きいことだけをとっても独自性のあるものだと言います。また、同市近郊における局地気候(周囲とは異なる、その地点特有の気候)を研究できる点もユニークです。こうしたプロジェクトは、個々の建物だけでなく地区全体を脱炭素化するような事業につながる可能性があります。
一方で、バンカー・ヒルが選ばれた理由は、その「魅力的な歴史」にあると述べるのは、デビッド・ホッジンズ氏です。彼はロサンゼルス市水道電力局から資金提供を受けている、「ロサンゼルス・ベター・ビルディングズ・チャレンジ」の事務局長を務める人物です。この地域はもともと、大邸宅や高級ホテルが立ち並ぶ裕福な地域でしたが、20世紀半ばには行政からスラムと呼ばれる状態になっていました。そして1950年代後半に再開発が始まり、商業ビジネス街や文化の中心地になったのです。
バンカー・ヒルでは地域の発電所を改良・拡大する計画もあり、ロサンゼルスでは脱炭素化された建物の数を増やす可能性がある、とホッジンズ氏は述べています。