M&A期間中がチャンス。円滑にDXを進める方法

[Publisher] e27

この記事はe27のJan Wuppermannが執筆し、Industry Dive Content Marketplaceを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@industrydive.comにお願いいたします。 

企業は顧客により良いサービスを提供し、長期的な企業成長と社会の持続可能性を実現するため、業務プロセスの対応力を高めたいと考えています。そのなかで、現在多くの企業がM&A(合併・買収)によるデジタルトランスフォーメーション(DX)に注目しています。新たなチャンスを競合他社よりも速く捉えるべく、スピードと柔軟性を手に入れたいと考えているためです。

M&AによるDXは、企業の成長を犠牲にすることなく、人材とスキルの両面でサービス提供上の課題を解決できるため、魅力的な選択肢となっています。

M&Aの成長軌道は2023年まで堅調に推移すると見られ、さらにはM&Aを通じた組織の統合がDXを促進するという強力な証拠も示されています。

M&Aに関するEY社デロイト社の調査によれば、2022年上半期、M&A件数の4分の1、またM&A取引額の3分の1超で、新たなデジタル技術の導入が行われました。また、ビジネスリーダーの3分の1以上が、DXに最適な時期はM&Aの期間中だと報告しています。

M&Aが、企業DXを支援する効果的なメカニズムとなっていることは驚きではありません。こうした企業は、M&Aによる「変革力」をもって、その価値を引き出しているのです。

組織の統合に関心を持つ企業はまず、複数の異なる事業を単一の戦略にまとめることについて考えなければなりません。具体的な課題としては、社内の複数のグループがそれぞれにデジタル化を進めていること、ビジネスの成果に対する期待が過度であること、ビジネス機能や業務プロセスがばらばらであることなどが挙げられます。

これらの落とし穴は、明確なガバナンスとリーダーシップを確立し、変革に向けた戦略的かつ集中的なアプローチをとることで解決することができます。プロジェクトを小さな流れに分解し、戦略的なビジョンを見失うことなく、重要な要素を優先するのです。

さらに、よく似た機能や工程を最初から連携させておくことが重要です。重複しているプロセスを削減することに加え、何よりも、部門を超えて能力を活用することで共に変革を促進できるためです。

つまり、確実に成果を出すためには、経営陣がよく調整されたまとまりのあるDX戦略を策定し、全社のデジタル機能を統合することが重要なのです。

この点においては、時間(より速い)、コスト(より安い)、パフォーマンス(より良い)のバランスを取るという「トレードオフの三角形」を考慮しなければなりません。この三角形の頂点は、各企業が達成したい最高の成果を表していますが、それぞれが重要な点でありながら相互相反する関係にあります。

組織上の制約により特定の優先順位を決定した場合、優先順位が下がった項目には機会費用(意思決定の際に選択しなかったことによる「失われた」利益)が発生します。そのため、鍵となる意思決定者はある成果を優先するかどうかを決定する際に、連鎖的な影響を理解しておくことが不可欠です。

異なる事業を統合するための強固な土台を作る

複数の異なる事業を統合することは、非常に複雑な課題です。アーキテクチャーを共有し、技術的な連携を実現するだけでなく、企業が達成しようとする成果と相反するものとのバランスを取り、達成すべき望ましいビジネス目標を明確にする必要があるためです。

前述の「トレードオフの三角形」により、妥協点や業務上のギャップは必ず発生します。あらゆる変革の取り組みには、時間、リソース、資金が必要です。従って、特に統合プロセスでは優先順位を付けることが重要となります。

例えば、経営陣が「顧客に対する法的な影響や契約上の影響、課税構造の変更を最小限に抑える」と決定した場合、短期的には業務効率が犠牲になるでしょう。優先すべき目標が明確でないと、経営陣や従業員の賛同を得ることが難しくなり、統合プロセスの進行に支障をきたします。

統合におけるもう一つの強力な柱は、企業を支えながら変化をもたらす「人と文化」です。複数の異なる事業を一つにまとめるには、経営陣の適切なバランスに加えて、従業員にとって可能な限りスムーズな移行が必要です。経営陣の手腕と全体戦略との連携は、変革に向けた構想をより速く、信頼と確信を持って展開するために不可欠な要素となります。

それらを実現するためには、新組織を形成する主要な事業の代表者が、経営陣に名を連ねる必要があります。また、新しい企業文化の一部として組織的な傾聴と内省を培うことが大切です。その理由は誰もが、自分が既に知っていることやより直感的に従っていることに偏る傾向があるためです。

企業文化は一夜にしてできるものではありませんが、従業員の信頼を醸成するために慎重に考えて調整された決断は、移行期間もその後も有効に働き、利益をもたらすはずです。

さらに、破壊的なイノベーションが次々と出現し進化している今、統合された新企業にとって「デジタル」が意味するものを進化させ、将来にわたる変革的利益を組織にもたらすことができる経営陣の存在が不可欠と言えるでしょう。

データはDXの中核を成す

DXにおいて、その中核となる変化と重要な成功要因の一つは、マスターデータとマスターデータ・ガバナンスをより透明度が高く明確なものにすることです。それがうまくいった場合、その影響は全社に及ぶことになります。生み出される収益はもちろん、何よりも顧客と従業員の体験が変わるのです。

以前は、人、プロセス、テクノロジーという三つの能力で変化を捉えていましたが、今日の新しいデジタル世界では、変化の管理と顧客中心モデルへの移行が必要です。企業が顧客体験に立ち返るには、データ活用が不可欠になります。そのため、企業はデータを、顧客体験の車輪にとって不可欠な第四の歯車と捉えるべきでしょう。

データの影響は、短期、中期、長期の三段階で追跡することが可能です。

  • 短期:データがどのように資産となり、コスト削減など最も具体的な利益をすぐに生み出せるかを理解する
  • 中期:異なる国、異なる企業資源計画(ERP)システムのデータを簡素化・標準化する
  • 長期:データから洞察を引き出し、会社が進むべき将来の方向性を判断する

ただし、データプログラムの管理は技術チームだけでできるものではなく、ビジネスの目標・目的に沿った形で実行しなければなりません。繰り返しになりますが「トレードオフの三角形」とは、経営陣が現在のビジネス需要に基づき、重要なデータ機能に優先順位を付けなければならないことを意味します。

そのため経営陣は、変化によってビジネスのどの領域が最大の打撃を受けるかを予測し、それに対処する余裕を確保しておくことが最も重要です。それが難しい場合は、わからないことが出てきたときにその事実を素早く認め、専門家に参加してもらうのが理想的です。

パートナーシップは、機敏性とイノベーションを引き出し、推進するための鍵である

ますます複雑化するデジタル世界において、企業が存在感と競争力を維持するには、顧客に提供するエンドツーエンドのサービスと社内プロセスの効率性、その両方を継続的に改善していく必要があります。関連するサービスプロバイダーとのパートナーシップは、組織のリソースを解放し、中核事業に集中することを可能にするため、競争優位の源泉となるはずです。

例えばNTT社は、クラス最高の業務プロセスサービスパートナーの支援を受け、世界規模のエクセレンス・プログラムを開始しました。このパートナーシップによって、同社は一部のバックオフィス機能の業務効率化を実現しています。効率的で統制のとれたプロセスを維持し、より機敏で革新的、かつ持続可能な企業になるために必要なことでした。

このようなパートナーシップを結ぶことで、企業は中核事業に集中できるようになり、人材などへの継続的な投資や、ITサービス、インフラ、回線、クラウド、エッジなどの革新的な取り組みに注力することが可能になります。結果、さらなる成長機会を引き出し、継続的な成功と長期的な繁栄を確保できるようになるのです。

企業変革を推進するには、経営陣が優先順位に基づいて、スピードと品質のバランスを考える必要があります。そのためには、企業は強固なコミュニケーション計画を立て、経営陣には十分な準備期間を与えることが大切です。彼らがしっかりと準備をすれば、他のすべての事業がそれに追従するでしょう。

全社規模の戦略的アプローチの重要性

ここまでをまとめると、DXの成功には、全社規模の戦略的なアプローチ、革新的な文化、経営陣の明確なビジョンが必要です。そしてM&Aは、DXに不可欠な技術や人材を素早く獲得する機会を提供してくれます。

組織全体で包括的かつ大規模な変革を成功させることは、困難を極める可能性があります。そのため企業は、DXのプロジェクトを小さなワークストリーム(業務効率化のための一連の流れ)に分解し、戦略的ビジョンを見失うことなく、注力すべきものに優先順位を付ける必要があるでしょう。

優先事項を決定する際、企業は、成長のための投資、コスト削減、収益拡大という要素のバランスを取ることも重要となります。この点で、DXは単なる目的地として認識されるのではなく、企業運営という大きな航海の中での継続的な旅と捉えるべきです。DXの過程では、事業戦略の機敏性を維持するため、オープンマインドを保つことを大切にしてください。

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