しまむら「どん底」から3年で復活遂げた3つの秘策 79歳「中興の祖」が再登板、商品改革にも大ナタ

[Publisher] 東洋経済新報社

この記事は東洋経済新報社『東洋経済オンライン/執筆:山﨑 理子』(初出日:2023年6月21日)より、アマナのパブリッシャーネットワークを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせは、licensed_content@amana.jpにお願いいたします。

いたま新都心の本社に隣接する大型店は、売上高上位5店舗に入る繁盛店(撮影:風間仁一郎)

「ファッションセンターしまむら」などを展開する、低価格の実用・ファッション衣料のしまむらが好調だ。2023年2月期は売上高が6161億円(前期比5.6%増)、営業利益が533億円(同7.9%増)と、2年連続で最高純益を更新した。

しかし直前の3年間は停滞期に苦しんでいた。しまむらは2018年2月期から2020年2月期まで3期連続の減収減益となり、その間にコロナ禍へ突入。2020年2月期の営業利益は229億円と、最高純益だった2017年2月期の487億円から半減していた。

どん底だった2020年2月、社長交代が行われた。就任当時のことを鈴木誠社長は「過去にない業績停滞期で、非常にタイミングが悪かった」と振り返る。同年6月に発表した2021年2月期第1四半期(3~5月)は、12億円の営業赤字に転落。四半期とはいえ会社設立以来、初の赤字決算である。まさに崖っぷちからの船出だった。

崩れた勝利の方程式

しまむらが低迷した理由について鈴木社長は「しまむらの強みは高品質、高感度、低価格で、中でも低価格を打ち出すとよく売れた。他社よりも価格優位性があるということが、過去の成功体験になっていた」と語る。

この“勝利の方程式”に従って特価商品を準備してチラシで売り出したが、消費者の反応は薄まるばかりだった。「(その頃は)日本の消費傾向が変わり、これまでの大量生産、大量消費の時代が終わっていた」と鈴木社長は振り返る。

業績を立て直そうと、店頭には保守的な商品が増えていった。本当は攻めた面白い商品を売りたいが、トライアンドエラーをやる余裕がなかった。その結果、売り場から客足が遠のく負のスパイラルに陥ってしまった。

そこで、鈴木社長は2020年の就任直後から行動に移したことが2つある。1つ目は商品部の会議に出ないこと。「本来はお客様のための商品を作る会議が、社長のための会議になってしまう。役員の顔色をうかがって商品が保守的になる」と理由を語る。年2回の方針会議は「仕方なく出ている」(鈴木社長)が、商品打ち合わせなどの会議には一切出ないという。

2つ目は、中興の祖である当時79歳の藤原秀次郎相談役を取締役に復帰させたことだ。「社長就任時に託された使命は主に2つ。業績回復と、しまむら商売の“原理原則”を再徹底することだ。そこで、藤原に経営への参加をお願いした」(鈴木社長)。

藤原氏は1970年に前身の島村呉服店に入社し、現経営陣の中では断トツの最古参。その後1990年に社長に就任し、埼玉の小さな衣料品店だったしまむらを大手チェーンに育てた「中興の祖」と言われる存在になった。2011年に取締役を退任したが、鈴木社長に乞われて2020年5月、経営へ復帰した。

藤原氏は取締役会議から経営会議まで出席し、商売の原理原則について説いて回った。しまむらの成長基盤を作った元社長が発する言葉は、どれも重みがある。現在も取締役として週2~3日出社しているという。

しまむらの客層が「若くなった」

原点に立ち返ったしまむらは、鈴木新体制に移行してからの中期経営計画で商品力や販売力の見直しに着手。鈴木社長は「当社がここまで成長できた要因は、ひとえに商品力。基本を徹底するため、まず商品を強化した」と語る。

しまむらは婦人・紳士から寝具まで取り扱い商品は幅広い。その中で重点的に改革を進めたのが、①PB(プライベートブランド)商品、②サプライヤーとの共同開発商品、③コラボ商品の3つだった。

PB商品では涼感など機能性を訴求する(撮影:風間仁一郎)

1つ目のPB商品では、主幹ブランドの「CLOSSHI(クロッシー)」を軸に、ベーシックカジュアル衣料や肌着・寝具などを展開し、売上高比率は約2割。涼感や保温性など機能性を打ち出した商品に加え、最近は付加価値をつけた高価格帯も拡充した。円安・原材料高が逆風の中でも、収益性の確保に貢献している。

2つ目のサプライヤーとの共同開発商品も特徴的だ。しまむら店舗に行くと、婦人服売り場ではブランドネームの看板が立てられた売り場が目に入る。これが、しまむらとサプライヤーが共同で開発しているオリジナルブランドの商品売り場である。

「共同開発ブランドは以前から手がけていたが、色々なブランドを立ち上げては廃止するということを繰り返していた」(鈴木社長)。これを安定的に展開するため、しまむらがターゲットとする年齢と服のテイストをそれぞれ縦軸・横軸にとったマトリックス図を作り、空白を埋めるようにブランド作りを進めた。

3年目に入った頃には、ティーンエイジャーから50代以上までをカバーできる約10のブランドが出そろった。そこからは「田舎のおばちゃんの服」と揶揄された、かつての姿は見られない。

3つ目の柱はコラボ商品。漫画やアニメのキャラクターコンテンツ商品と、ファッション系インフルエンサーなどと企画したアパレル商品に大きく分けられる。とくにキャラクター商品の需要は旺盛で、2023年2月期のコラボ商品の占める割合はしまむら事業の売上高1割強まで増加した。

コラボ商品はアパレルの「端境期」となる8月や2月を狙って投入されることが多い。旬のキャラクター商品はセールに依存しなくても安定した売り上げが見込めるため、季節による売上高変動を緩和することにも一役買っている。

商品力強化に加え、在庫管理も見直した。通常の仕入れは商談から納品まで5~6カ月かかるが、売れ筋商品の追加発注などのために40日の短納期生産の体制を整えた。トレンド衣料が多い10~20代女性向けのブランドでとくに活用されている。

2030年には国内ユニクロの規模目指す

しまむらでは提携工場と専用の生産ライン契約を、メーカーとは「特定時期までに使い切る」という生地契約を結んでいる。在庫リスクをしまむらが負う代わりに、必要な商品の最短40日生産を可能にした。鈴木社長は「価格優位性を保つには、小売りがリスクを取ることが重要」と語る。

商品改革で売上高が伸長しただけでなく、在庫整理の値引きロスが減ったことで粗利益率が上昇。チラシやテレビCMからネット広告へ軸足を移したことで、広告宣伝費も減少し、営業利益率は2020年2月期の4.4%から前期は8.6%まで大幅に回復した。

今2024年2月期は売上高6350億円(前期比3.1%増)、営業利益545億円(同2.4%増)と、3期連続の最高純益更新を計画する。2030年には売上高8000億円以上を目指しており、達成すればファーストリテイリングの国内ユニクロ事業(前2022年8月期の売上高が8102億円)と比肩する規模となる。

足元はしまむら事業で1418店舗、グループ全体で2213店舗(2023年2月期末時点)を展開。計画達成に向けて、毎年50~60店の新規出店を続け、既存店2~3%の成長を前提としている。

実現に向けたハードルは高いが、鈴木社長は「現状維持の発想では衰退する一方」と言い切る。しまむらは過去の成功体験を捨てることで、3年間の停滞のトンネルを抜けた。2030年に向けて、さらなる改革が進みそうだ。

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