M&Aに成功した米国経営者が、七つのポイントを解説

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この記事はInc.のEntrepreneurs' Organizationが執筆し、Industry Dive Content Marketplaceを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@industrydive.comにお願いいたします。

M&Aは、失敗する確率も高いとはいえ、入念に準備すれば会社を急成長させることができます。

起業家機構(EO)アトランタ支部のメンバーであるグレイシー・マーフィー氏は2010年、アドバンスト・ケア・パートナーズ(ACP)社を創業しました。米南東部で暮らす患者向け在宅介護サービスの品質向上が目的でした。マーフィー氏は創業時から2021年まで、最高経営責任者(CEO)としてACP社をけん引。同社はその間、年40〜50%で成長を続け、「Inc.5000」に6年連続でランクインした数少ない企業になりました。Inc.5000は、アメリカで最も急成長している民間企業5000社を選出する取り組みです。マーフィー氏は、ACP社を成長させるために、既存の経営資源を利用したオーガニック戦略とM&A戦略を、どのように組み合わせてきたのかについて語ってくれました。

アメリカの平均的な企業は、従業員が5人未満、年間売上は100万ドルに届きません。同国のみならず、企業規模が小さいままである要因はいくつか考えられます。市場が比較的小さいことや資本不足なども挙げられますし、あえて規模を拡大しない場合もあるでしょう。しかしほとんどは、経営陣が自社の経営資源のみを頼りに成長を試みていることが理由なのです。確かに、企業のM&Aは複雑なうえに、リスクも大きいようにも見えます。

しかし、成長を実現する手段として経営者がM&Aを検討すべき理由は多々あります。例えば、新規の製品・サービスの導入、あるいは補完的な商品・サービスの導入、地理的領域・シナジー効果・財務・規模の拡大などです。M&Aを取り入れれば、自社の経営資源のみによる成長よりもはるかに速く、事業の展開と成長を可能にします。そして、スピード感の有無はたいてい、ビジネスにおける死活問題です。M&Aは、会社が新たな専門知識や才能を獲得できる可能性も秘めており、人手が不足している状況下では、確固たる人材計画の一環にもなりうるでしょう。M&Aにはほかにも、リスク管理の多様化や信用度の強化、場合によっては節税対策になるなどの利点があります。

筆者が創業したACP社も、上記に述べたような状況に直面したことがあります。当時のACP社は創業10年目で、米南東部の主要な在宅介護サービス供給業者になっていました。そこに至るまでは、オーガニック成長を頼りにしていました。事業を徐々に拡大し、対象患者を小児だけでなく成人まで広げたほか、在宅介護に限らず医療機関やPPEC(病弱な子どもに長期的に医療を提供する療養サービス)でも、サービスを提供するようになりました。このサービスの提供は、幸いなことに成功は収めたものの、私たちにはさらなる野望があったのです。

目標の一つとして、米ジョージア州とフロリダ州以外への事業拡大を目指していました。とはいえ、この二つの州だけでも需要は高まっており、既存の従業員がそれに対応しようと全力を尽くしていることも知っていました。この状況を踏まえてさらなる成長と規模拡大を目指すためには、すでに運営されている組織を買収することが最善策と考えたのです。最適な相手を何カ月もかけて探した結果、テキサス州サンアントニオにあった小児向けデイケアサービス会社であるリトル・エンジン・ホームケア社の買収へと動き始めました。実現すれば、高い成長率を誇るテキサス州に進出できるだけでなく、すぐに稼働して収益性を確保することができます。これこそWin-Winの関係です。

オーガニック成長と、M&Aによる成長という二つの成長戦略を組み合わせた結果、ACP社はアメリカで最も早く成長したヘルスケア企業の一つとなり、Inc.5000に6年連続ランクインを果たしたのです。

以下では、買収という手段を通じて会社を成長に導くためのポイントを七つ紹介します。

理想的な投資先を明確に定める

買収先の候補を探す前に、まずは、どのような企業を買収したいのかをしっかりと定義しましょう。例えば、相手企業の規模(売上、EBITDA、従業員数など)、現在の経営陣、立地、望む製品やサービスの種類などを明確にします。企業の価値観や社風も忘れてはなりません。自社が大切にしているコアから離れれば離れるほど、統合は難しくなってしまうからです。

買収額と財務モデルを決める

次に自社がいくら支払えるのかと、買収が現在の経営状況に与える影響を、現実的な視点に立って考えます。また、買収にかかる資金は手持ちの現金から捻出するか、または銀行から借り入れるのかを決めておいてください。これにより、各取引を評価してリスクが高すぎないか、見返りが少なすぎないかなどが判断しやすくなるでしょう。

買収前から、統合を見据えた計画を立てる

M&Aでよく見られる過ちが、買収取引が完了してから統合計画を立てることです。しかしM&Aによる成功を収めるには、買収に踏み切る前に二社の統合を担うチームを結成しておく必要があります。この統合担当チームが当初から組織・経営・財務・技術、そして何よりも企業文化の統合に向けて計画を立てるべきです。

適切な機会を探し求める

市場価格を下回る価格を提示して売却しようとしている企業には注意が必要で、一般的には避けたほうがいいでしょう。一方、投資銀行などが仲介している企業とは対照的に、売り手企業と独自の取引(プロプライエタリー取引)を行うことは、より経済的な効果をえやすいでしょう。

分析とデューデリジェンスを徹底的に行う

優れたデューデリジェンス(適性評価手続き)には、コストも時間もかかります。ただこれに関しては、お金や手間を惜しんではいけません。買収しようとする相手をくまなく把握する必要があるからです。財務(収益報告)、人事、知的財産(IP)などについて詳細を隅から隅まで調べることで、棚卸資産や企業価値をしっかりと評価してください。

条件を交渉する

交渉すべきことは、買収額だけではありません。エスクロー(金融機関など第三者の仲介サービス)や、売り手側の財務・法務などの諸情報が事実であることを保証する表明保証の存続期間、アーンアウト条項(M&A後の追加額の支払い義務)などについても話し合う必要があります。

適切にコミュニケーションを図る

的確で透明性の高いコミュニケーションは、スムーズな取引につながります。ここがうまくいかないと、買収が失敗しかねません。適切なコミュニケーション戦略は、事業の継続性を促進します。加えて顧客や規制当局、ベンダー、従業員など、主要な内外のステークホルダーに対して、統合後のビジョンや戦略を伝えることが可能です。M&Aは企業にとって、素晴らしい可能性を秘めた胸躍る機会なのです。

企業は毎年、2兆ドルを超える資金を買収に投じています。にもかかわらず、M&Aの失敗率は常に70〜90%のままとなっているのです。経営者が入念に準備を行えば、M&Aを機に会社が成功する確率は大幅に上がります。ここで紹介したM&Aのポイントを忘れず、飛躍的な成長に向けて歩んでいってください。

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