欧州で先行する「サーキュラーシティ」構想 日本での実現性は?

[Publisher] 日本ビジネス出版

この記事は、日本ビジネス出版『環境ビジネスオンライン』(初出日:2023年2月27日)より、アマナのパブリッシャーネットワークを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせは、licensed_content@amana.jpにお願いいたします。 

欧州を中心に、都市計画にサーキュラーエコノミー(循環経済)を組み込んだサーキュラーシティ実現へ向けた取り組みが進む。

その概念や考え方、実現した場合、地域の持続可能な発展にどう寄与していくのか。三菱UFJリサーチ&コンサルティング(MURC)研究員、園原惇史氏に聞く。


三菱UFJリサーチ&コンサルティング
政策研究事業本部 持続可能社会部 研究員

サーキュラーシティ、3つの要素

原材料や製品のライフサイクルを通じ、投入される資源量を削減しながら、付加価値を最大化させるサーキュラーエコノミー(循環経済)。2015年、欧州で循環経済への方向性を示した行動計画『サーキュラーエコノミーパッケージ』が発表され、政策的に動き出した。

ただ、国際的に“何をもってサーキュラーエコノミーとするか”といった定義はまだないのが実情。

「サーキュラーエコノミーを地域、都市のなかで実現していくのがサーキュラーシティですが、その根幹となるサーキュラーエコノミーの定義がないまま、各国が動き始めている状況です」と園原氏。

世界のサーキュラーエコノミーを推進するエレンマッカーサー財団では、まちづくりに循環経済の要素を取り込むサーキュラーシティを3つの要素で説明する。

1つ目は、廃棄物や汚染を都市から排除すること。廃棄物、有害物質、温室効果ガス、大気・水・土壌の汚染、交通渋滞といった環境問題を解決する。2つ目は、製品・ 部品・ 原材料の価値を損なわず、新たに創出しながら利用し続けること。再利用、再製造、リサイクルなどの取り組みがこれに該当する。3つ目は自然の力を再生、取り入れること。有機物を肥料として循環させたり、エネルギーとして効率的に使用したりする取り組みが含まれる。

サーキュラーシティの実現により、廃棄物の発生抑制や環境改善に留まらない効果が期待される。

「循環経済の目的は、資源を無駄なく有効活用しながら、付加価値を高めることです。自治体が保有する施設を適切に補修しながら効率的に使うことで、コストの削減にも繋がっていくと思います」

資源利用の効率化による温室効果ガスの削減、大気・ 水・ 土壌の環境が改善され、住みやすさが向上し、循環経済型ビジネスの浸透に伴う地域雇用の創出や産業の成長も期待できる。

「物質面だけでなく、地域全体の暮らしの水準が向上し“サーキュラーシティ=快適な暮らしができるまち”となれば、自治体としての魅力もアップするかと思います」

「サーキュラーシティ」の構成要素と期待される効果
(出所)Ellen MacArthur Foundation
“CITIES IN THE CIRCULAR ECONOMY:AN INITIAL EXPLORATION”(2017)をもとに筆者にて整理

環境に良い産業政策

欧州の一部都市では、サーキュラーシティ実現を目指した取り組みが進んでいる。特に、オランダ・アムステルダムでは、“2050年までに完全な循環経済を目指す”という野心的な構想の元、サーキュラーシティを掲げながら社会改革を進めている。

「サーキュラーシティ実現へ向けたロードマップを作る上では、都市のどこに無駄が生じているのか、都市の代謝、資源・ エネルギー等の流通構造を適切に把握することが重要です。その上でビジョンを作り、ケーススタディに移っていく必要があると思います」

2015年のサーキュラーエコノミーパッケージを発端とし、政策的に強力にサーキュラーエコノミーを推進してきた欧州。その裏には、環境保全だけではない、産業成長や雇用促進を睨んでいる。

「欧州の場合、サーキュラーエコノミーは環境政策というより、産業政策そのものです。あくまで雇用の拡大、欧州域内における産業の振興を念頭に置く、環境に良い産業政策と言えます」

現在、製造業の多くはアジアにある。循環経済を実現しようと思えば、当然、製造業からリサイクル産業まで全て必要となる。欧州域内にそれらを呼び戻し、新しい仕事、雇用を作っていく。さらに、近年高まる中国、ロシアのリスクを見据え、欧州域内で資源循環のサプライチェーンを再構築していく狙いもあるだろう。

こうしたなか、欧州ではルールメイキングが進む。そこで作られたルールは原則として欧州市場にしか効き目はないが、それが世界基準として普及する可能性はゼロではなく欧州は当然のこと、海外で事業を展開する企業には無視できないルールとなる。

欧州では政令、省令に当たる部分はISOなどで議論されたものを引用する。現在、ISO/TC323(サーキュラーエコノミー)規格の議論が進むが、そこへ日本が食い込むことは重要だ。MURCが会員となっている『循環経済協会』はそうした背景の元に発足。国際的なルール形成に食い込むことで、日本企業の競争力を高めていくことを目指す。

欧州では、サーキュラーシティを
産業政策として推し進めている

サーキュラーシティ実現へ向け幅広い連携が必要

サーキュラーシティ実現に向けては、都市・地域の資源の流れを把握し、それに応じた政策を作っていく必要がある。自治体内での連携、産業部門も含めて議論していくことが重要だ。

「こうして創出された循環経済型の事業を普及させるため、政策的に市場形成を支えていくことも必要です。自治体が実施しうる施策の一例として、条例策定や公共調達の拡大があります」

MURCでは、環境省の実証事業として『包括的中間処理(ソーティングセンター4.0)の実現に向けた再資源化技術・システム実証』を行うなど、全体最適化を目指したリサイクルシステムの設計・実証を様々な角度から進める。

資源循環、リサイクルの取り組みを加速するには、各企業の個別最適化ではなく、サプライチェーン全体での最適化を実現していく必要がある。MURCでは、複数事業者間のコンソーシアム形成、動静脈が連携した易解体設計の推進、ベストプラクティスとなる処理技術体系などについて、事業者と連携しながら検討・実証を行っている。

「サーキュラーシティの実現に向けて、現状を適切に把握したうえで計画を策定し、計画に基づく施策の実行とモニタリングを繰り返していくことが重要です。多様な関係者と連携しながら、計画策定時に不足する情報の収集や、企業・ 市民の行動変容を促していくことが鍵になっていくと思います」

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