SDGsで「失敗する企業」「うまくいく企業」の境目 社会課題をビジネスで解決する「3つの柱」

[Publisher] 東洋経済新報社

この記事は東洋経済新報社『東洋経済オンライン/執筆:深井宣光』(初出日:2023年4月9日)より、アマナのパブリッシャーネットワークを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせは、licensed_content@amana.jpにお願いいたします。

最近ビジネスでよく聞く「SDGs」という言葉。「無償の奉仕」や「CSR的な社会貢献」という印象を抱く人も少なくないでしょうが、中には「社会課題」を「ビジネスで解決」し、本質的な意味で「持続可能」な事業を展開しているスタートアップも存在しています。

ビジネスの成長と、社会課題解決の両方を実現させている企業と起業家に共通する「成功法則」とは?本稿では深井宣光氏の著書『SDGsビジネスモデル図鑑 社会課題はビジネスチャンス』より一部抜粋・再構成してお届けします。

前回の記事では、社会課題をビジネスで解決していく意義について説明しました。

では、どうすれば、アイデア追求型から社会課題解決型に転換し、社会課題をビジネスで解決していくことができるのでしょうか。あなたが「社会課題解決型」となり、社会課題をビジネスで解決していくために必要な3本の柱があります。

1つ目の柱:「コアイシューの発見」=「ソーシャルインパクト」

「社会課題解決型」が最初にすること。それは、社会課題を生み出している本質的な課題「コアイシュー」の発見です。なぜなら、表面的に見えている「社会課題」のほとんどは、たしかに解決すべき課題=「イシュー」ではあるものの、そのまま解決策を検討しても本質的な解決策にいっこうに辿り着くことができないものだからです。まずは、今すぐ解決を求める人たちの「強い欲求」を生み出している「コアイシュー」を見つけることが必要です。

また、課題設定を誤ることで、「アイデア追求型」のように解決策としては一見新しく斬新でも、「需要」のない解決策を市場に送り出してしまうことになりかねません。誤った課題設定の挽回は困難。いずれにしてもソーシャルインパクト(社会的影響力)を生み出すことはできません。

しかし、「コアイシュー」の発見によって、急速に求められる解決策を市場に供給し、ソーシャルインパクトを生み出しているのが「社会課題解決型」です。

社会課題解決型の秘密(1)「シンプル」にする

社会課題をビジネスで解決することをこれまで考えてこなかった人にとって、社会課題は「数」や「範囲」が広すぎて、一体何から手をつければいいのかわからないものです。

しかし、一見手の施しようがない「社会課題」も実は、大きく分けるとシンプルに、次のたった3つしかありません。それが、「経済圏(Economy)」「社会圏(Society)」「生物圏(Biosphere)」の3つです。

経済圏:国、地域、企業、個人を問わず経済的な発展・成長などに関する「社会課題」
社会圏:人が社会生活を営む上で、必要不可欠な衣食住、インフラ、収入、教育、身体的・精神的な健康と安心・安全などに関する「社会課題」
生物圏:生物多様性など地球上に生きる全ての生物の生存、気候変動や環境破壊、地球そのものの存続などに関する「社会課題」

例えば、SDGsの17個もある目標を通して示されている「解決すべき課題」=「イシュー」も、全て上記のように3つに分けられます。

数や種類が多すぎて手の施しようがない「社会課題」も、シンプルに、この3つの視点で捉えることで、解決すべき「コアイシュー」をあなたも発見することができます。

課題を分解し、空白の社会課題解決市場を発見する

社会課題解決型の秘密(2)分解する

社会課題を3つの視点でシンプルに捉えることができるようになったあなたが次にすること。それは、社会課題の「分解」です。

なぜなら、「社会課題」はいくつもの「課題」の集まりで引き起こされているからです。そして、分解するときにも、1つひとつの課題を3つの視点を使って順番に分解していくことで、より大きなソーシャルインパクトを生み出すことができます。「コアイシューは一体どこにあるのか」、そして「社会課題の全体構造はどうなっているのか」がハッキリとわかるようになります。

そうしてあなたが発見した「コアイシュー」は、まるでボウリングでセンターピンを倒してストライクを出すような影響力を持っており、まさに社会課題解決のセンターピンとも言えます。

そして、分解していくことで、「コアイシュー」と共にあなたが発見するのは、解決が必要とされているのに、まだ誰も解決策を供給できていない、空白の社会課題解決市場です。

社会課題解決型の秘密(3)ステークホルダーの「経済的メリット」

社会課題をビジネスで解決する上で忘れられがちなのが、課題解決で生み出すことのできる「経済的メリット」です。なぜなら、社会課題の解決で利益を得ること、儲けることへの無意識下の心理的抵抗は、お金によいイメージを持っていない人ほど強く、経済的メリットに触れることを敬遠する傾向にあるからです。

しかし、この「ステークホルダーの経済的メリット」こそ、急成長してソーシャルインパクトを生み出している「社会課題解決型」にとって、実は極めて重要な鍵です。

なぜなら、どれだけ環境や社会に良くても、同時に経済的課題を解決することができなければ、社会課題解決型はもとより、ステークホルダーにとっても事業として立ち行かなくなるからです。

そして、それだけでなく、経済的な課題自体が大きな社会課題そのものでもあり、解決することで生み出されるソーシャルインパクトは大きいのです。

(1)の「シンプルにする」で解説した視点でその構造を表すと、「経済」が中心から全体に影響を与えることができる構造がよくわかります。「コアイシュー」は、ステークホルダーが課題を抱えていたことでかかっていたコストや、これからかかるはずだったコストを、「課題」の解決によってどれだけ軽減できるのかを定量的に表すことができます。

そのため、これまで環境や社会に対しての課題を認識していながらも、目を背け続けざるを得なかった社会課題の解決策を生み出す力を持っています。

例えば、飲食店や中食などで発生している「食品ロス」という課題。「売れ残らないように値下げをして食品ロスを解決する」という課題設定は、表面的なイシューであり、今すぐ本質的に解決策を求められる「コアイシュー」ではありません。

なぜなら、飲食店や中食業にとって食品ロスは、大量廃棄による環境負荷という課題だけでなく、自分たちがつくった食品を捨てなければならないという精神的苦痛があるなかで、それでも単純に値下げや安売りをできない事情があるからです。それは、「食品ロスは利益率を下げてしまうが、単純な値下げや安売りはブランドイメージを下げる恐れがある」という経済的な課題です。

2つ目の柱:発明はいらない、「新結合」せよ

実は、社会課題解決型も常に「新しいアイデア」を追求しています。しかし、アイデア追求型のように需要なき市場で失敗に終わるということはありません。それはなぜでしょうか。

社会課題解決型の秘密(4)社会課題解決型アイデアの「仕組み」

アイデア追求型の「アイデア」とは、ビジネスのアイデアを指します。それに対して、社会課題解決型の「アイデア」とは、まさに、本書で紹介してきたスタートアップ各社のビジネスモデルそのもの。「社会課題をビジネスで解決する仕組み」であり、この仕組みを生み出すアイデアです。

そして、この仕組みこそが「社会課題解決型」が「社会課題解決市場」に供給する解決策です。

社会課題解決型はこの「社会課題をビジネスで解決する仕組み」のアイデアを常に追求し続けています。なぜなら、これから社会課題をビジネスで解決し始めるときだけでなく、より最適な解決策の追加供給であったり、事業規模を拡大するときであったり、あらゆる場面において、課題解決のために必要不可欠かつ強力な武器となるからです。

社会課題解決型の秘密(5)ゼロイチの発明は不要

「社会課題を解決する仕組み」はイノベーション=「新結合」によって生み出されています。新結合とは、経済学者ヨーゼフ・アロイス・シュンペーター(1883~1950)が提唱した概念で、「これまで組み合わせたことのない要素を組み合わせることによって新たな価値を創造すること」を指します。

つまり、ゼロからイチの発明は不要。社会課題をビジネスで解決するイノベーションは、すでに私たちの社会にあるものの組み合わせで起こすことができます。

組み合わせの仕方は自由。あなたが解決する「社会課題」とまだ誰も組み合わせたことのない専門技術、テクノロジー、知識、ノウハウ、システム、ツールなどの「解決策」を、あなたが自由に「新結合」させることができます。

トーマス・エジソン(1847~1931)は、蓄音機や映写機をはじめ、私たちの暮らしを一変させるような1,300にも及ぶさまざまな発明を後世に残した発明王として知られていますが、実は、そのエジソンですらゼロイチの発明はしていないと言われています。

例えば、「暗闇」という社会課題を劇的に解決した、長時間使える白熱電球は、「イギリスのジョゼフ・スワン(1828~1914)が発明した白熱電球」と「日本の八幡竹」(※京都の石清水八幡宮周辺に自生している竹)の「新結合」によって生み出され、世界中の人類に光を灯しました。

また、1908年に登場した自動車「T型フォード」は、「馬車」と「エンジン」と「大量生産システム」の「新結合」によって生み出され、世界の移動手段を一変させました。

そして、Appleが2007年に発表し世界に衝撃を与えたiPhoneも、すでに社会に存在していた電話、インターネット通信機、音楽プレイヤーの「新結合」によって生み出され、ライフスタイルやコミュニケーションの課題解決を根底からアップデートさせました。

今では社会のインフラとも言える革新をもたらしたソリューションも、これまで誰もしたことがなかった当時の「課題」と「解決策」を組み合わせた挑戦者の「新結合」によって生み出されています。

社会課題解決型の秘密(6)「社会課題」と「解決策」をストックすれば「新結合」が起きる

社会課題解決型は、「社会課題」と「解決策」をストックし続けます。なぜなら、「新結合」は「これまで組み合わせたことのない異なる要素」をあらかじめ知っているか、もしくは「新たに知る」ことではじめて起こすことができるものだと知っているからです。

そして、都合よく「新結合」を起こしたいタイミングで、すぐに最適な組み合わせを見つけられるようなものではなく、多くの場合、予期せぬタイミングで組み合わせを思いつくものでもあります。

つまり、普段からストックし続けていくことで、「社会課題」と「あらかじめ知っている解決策」の組み合わせ、「社会課題」と「新たに知った解決策」との組み合わせによって、「新結合」を生み出す確率を高めることができます。

3つ目の柱:スキルや経験よりも「情熱」

社会課題解決型としてあなたに最も必要なものは、スキルや経験よりも「情熱」です。なぜなら、たとえあなたが、スキルや経験がまだなかったとしても、人脈や資金がなかったとしても、専門的な知識が一切なかったとしても、「情熱」さえあれば、それらはすべて解決することができるからです。

社会課題解決型の秘密(7)不都合な真実「大量のトライアンドエラー」

巨大な社会課題解決市場の規模は、課題の解決を早急に求める人たちがどれだけ社会に溢れているかを表す規模だけでなく、ビジネス機会の可能性に溢れる規模であることは、ここまでに書いてきたとおりです。

しかし、もう一つ「社会課題解決市場」にあふれているものがあります。それは、あなたの成功を阻む「困難」です。

解決に必要な「新結合」は組み合わせるだけにすぎません。ですが、シンプルな「新結合」であっても、課題にフィットした最適な組み合わせに辿り着くまでには「大量のトライアンドエラー」が待ち構えています。これこそが、社会課題解決型となるあなたが知るべき「不都合な真実」であり、立ちふさがってくる困難です。

あなたが社会課題解決型となり、「社会課題解決市場」で解決に挑戦すること。それは、そのどれもが「これまで誰も解決しようとしていなかったこと」や「解決に失敗していたこと」です。つまり、いずれにしても、誰も解決に成功していないからこそいまだ存在する課題であり、だからこそ大きな「困難」が待ち構えているものなのです。

「新結合」により世界に光を灯したトーマス・エジソン

ですが、「新結合」によって世界に光を灯したトーマス・エジソンは、このような言葉を私たちに遺しています。

“I have not failed. I've just found 10,000 ways that won't work.”
私は失敗したことはない。うまくいかないやり方を10,000 通り見つけただけだ。
“Our greatest weakness lies in giving up. The most certain way to succeed is always to try just one more time.”
私たちの最大の弱点は、諦めることにある。成功するのに最も確実な方法は、常にもう1 回だけ試してみることだ。
“Many of life's failures are people who did not realize how close they were to success when they gave up.”
人生における失敗者の多くは、諦めたときにどれだけ成功に近づいていたかに気づかなかった人たちである。

〔The Diary and Sundry Observations of Thomas Alva Edison/From Telegraph to Light Bulb with Thomas Edisonより引用〕

エジソンがほとんどの人が諦めるであろう困難を乗り越え、「もう1回だけ試して」その成功を実現させられたのは、必ず成功させるという「情熱」があったからです。

ですが、世界的に偉人といわれるエジソンを例に出したところで、「エジソンの話ならこれまでも聞いたことがある」「それはエジソンだからできたんじゃないか?」と、思う人もいるかもしれません。

しかし、私たちのすぐ身近にも、エジソンと同じように「大量のトライアンドエラー」を繰り返し、「情熱」によって困難を乗り越え、社会課題をビジネスで解決することに成功している人たちがいます。まさしく、今この本を読んであなたが知った「社会課題解決型」の起業家たちです。

そして、あなたも彼らと同じように「社会課題解決型」になることができます。

SDGsビジネスモデル図鑑 社会課題はビジネスチャンス』(KADOKAWA)。

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