会社の明るい未来に「忍者人材」が必要とされる訳 新市場を探りながら、いろいろ仕掛けていく

[Publisher] 東洋経済新報社

この記事は、東洋経済新報社『東洋経済オンライン/執筆:河瀬誠』(初出日:2023年2月3日)より、アマナのパブリッシャーネットワークを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせは、licensed_content@amana.jpにお願いいたします。

会社の未来のために、創造を担うチームをどう組織し、どのような心持ちで取り組むべきかを、エムケー・アンド・アソシエイツ代表の河瀬誠氏が前回の記事(こちらより)で解説した。今回も同氏による『30年後のビジネスを「妄想・構想・実装」する 未来創造戦略ワークブック』を一部抜粋・再構成し、チームで活躍できる人材の育て方を解説する。

年度ごとの利益で評価される本業にとって、赤字となる未来創造は邪魔者だ。仮に「本業との親和性が高い」といった理由で、未来創造のチームが本業の組織の中に置かれると、すぐに未来創造の活動は止まる。そして当初は未来創造に割り振られていた経営資源も、しだいに本業に引き抜かれていく。本業にとっては、それが合理的な選択なのだ。

これをシリアルアントレプレナーの守屋実氏は、「本業からの汚染」と表現している。左手の未来創造は、右手の本業とは切り離してマネジメントする必要がある。

未来創造を本業と切り離して考える必要

未来創造を推進する組織は、経営者の直下に置く。これは大原則だ。実際の会社だと、「新規事業推進室」「新領域創造事業部」「未来プロジェクト室」といった部門が担当することとなるだろう。

そして、財務経理・人事評価・意思決定といったマネジメントの基本的な仕組みも、以下のように本業とは別立てにすべきだ。こうしたマネジメントの切り離しは、いずれも新たな社内規定として公式に作り始めると大変な時間と労力がかかる。まずは、運用面での「例外扱い」という形で始めてみるのが現実的だろう。

本業は、3年程度の中期経営計画のもと、単年度の損益計算の結果で業績を評価する。この仕組みのもとでは未来は創り出せない。

本業と同じ財務経理の仕組みを適用してしまうと、投資フェーズの時期にも毎年の単年度黒字を求めてしまい、必要な投資もできなくなる。またビジネスモデルを構想する余裕のないまま、小手先の営業を頑張りがちだ。

こうして、未来創造のプロジェクトは「失敗の烙印」を押されて解散し、以後は「黒歴史」のみが残る。ヘタをすると、この失敗の記憶がずっと残ったまま、未来創造にチャレンジできない会社になってしまう。

本業の基本は「すべきことを正しくする」ことであり、ミスや失敗をすると大きなマイナス評価がつく。

それに対し、未来創造は「失敗という経験」を通じて知見を高め、最後に成功をつかみ取るプロセスだ。この「貴重な失敗」を積み重ね、学習してきた人こそ、価値のある人材だ。それが本業と同じ人事評価を未来創造の部門に当てはめると、最も価値の高い人材が、最もマイナス評価されてしまう。

社員もそんな先例を見てしまうと、チャレンジしようとしなくなる。そして、未来創造の人材が育たない会社になってしまう。

本業は、業務がある程度パターン化されているので、前例を知る人が揃った会議で議論し、全員賛成が前提の稟議による意思決定をしても回る。
しかし未来創造とは、前例がない、かつスピード勝負の世界だ。

未来創造では、情報がそもそも不足し、それも変化するなか、メンバーが迅速に意思決定を重ねていかなければならない。稟議や根回しをしている時間はない。また全員が賛成した結論が正しい、ということは(経験則的に)ほとんどない。

起業家人材を「忍者」に例えて考える

組織の人材には、本業を任せると完璧に実行する管理者人材と、新規事業や未来創造が得意な起業家人材がある。オムロンの竹林一氏は、右利きの管理者人材を「武士」、左利きの起業家人材を「忍者」とわかりやすく例えている。

「武士」といっても戦国時代でなくて江戸時代の武士だ。

立派なお城に通い、主君に直接会う機会はほとんどなく、上司の命令に忠実に服従しなければならない。細かな礼儀作法が大切で、行事を滞りなく進める(成功する)のは当然。失敗をしたら切腹して詫びなければならない場面もある。

それに対して「忍者」は、主君の直下で、隠れてこそこそ動く。目立ってはいけない。敵地(新しい市場)を探り、大名(関係者)の間の提携とか、新しい作戦といった仕事を仕掛けていく。

忍者の仕事は、必ずしも成功するわけではない。いろいろ仕掛けていって、そのうち成功するのはごく一部だ。しかし仕事が不首尾でも、忍者は切腹してはいけない。しぶとく生き延びる必要がある。未来を創り出す人材とは、この「忍者人材」だといってよい。

忍者を育てるのは、実際に忍者修行をさせるしかない。座学だけでは忍者になれない。忍者の教科書を読めば「正しい手裏剣の投げ方」などが書いてあるかもしれない。しかしその内容は、実際に訓練することではじめて身につけられるものだ。

忍者修行とは失敗の連続だ。最初から忍術を使える人はいない。何回もトライして、ようやくうまくできるようになる。

ところが、1度失敗したら「自分には適性がない」と思ってしまう人は多い。また多くの日本企業は、失敗すると担当を外す。それではいつまでたっても忍者は育たず、未来創造はできないままだ。まずは「未来創造プログラム」への参加を入口に、忍者人材を育てていこう。

最初から「忍者人材」は集まらない

未来創造のチームメンバーに、最初から「できる忍者たち」が集うことはない。最初に集まるのは、よくわからないパーパスを掲げる変わり者と、なぜか指名されてしまった「どこか心許ない人たち」というのが現実だ。
しかし、未来創造のパーパスを掲げ、ビジョンの実現に向けて努力しているうちに、そんな彼らがしだいにリーダーとして変身していくのだ。

この過程は、映画の世界で描かれる「冒険ストーリー」に似ている。集まった仲間が、困難のなか共通の目標を目指すのだ。ときにはお互い対立することもあるだろうし、去っていくメンバーや新たに迎えるメンバーもあるだろう。

そして、そんな経験を積むうちに、最初は心許なかったチームが、お互いの個性を発揮し、どんどん力強く成長していくのだ。未来創造という困難に真剣にチャレンジすることで、仮にそのチャレンジには失敗したとしても、メンバー1人ひとりがリーダーとして「一皮むけて」大きく成長しているのだ。

忍者は、パーパスという「青くさい想い」を持っている。この青くさい想いを失ってしまうと、関係者を動かすことはできない。

しかし忍者は同時に、自分のチームや会社を動かす必要がある。そのためには、組織の力学や人間関係を理解して動かす、ある程度の「腹黒さ」も必要だ。そうした腹黒さがないと、会社の中での居場所さえ失いかねない。

この青くささと腹黒さ、どちらが欠けても忍者として動けないし、どちらか一方では忍者ではない。両方を兼ね備えた「青黒い忍者」を目指そう。

困難は「想定内」、良い経験だと思って楽しむしかない。

未来創造は、楽しい仕事であると同時に、たいへんツラい仕事でもある。失敗したら努力は無に帰す。また苦労して成功しても、関係ない(どころか邪魔をしていた)人たちが「オレの成果だ」と手柄を横取りする。

「やってられない」と思うかもしれない。しかしそんなことは「想定内」だ。大変なことは、はじめからわかっているのだ。「それでもやる。やりたい!」そんな「覚悟」を持って取り組むのが未来創造だといえる。

もしも、未来創造に失敗しても、チャレンジした経験は、あなたの宝物になる。このチャレンジを通じて、あなたのスキルも、視座も、ネットワークも、格段に高まるはずだ。

失敗しても頑張りが認められることも

それに(社内起業の場合)失うものは、意外と少ない。失敗しても会社をクビになることはないだろう。せいぜい出世が遅れるとか、左遷されるくらいの話だ。仮に失敗しても、頑張りが経営陣に認められ活躍の場が広がったとか、新しい人脈を得てもっとやりたい仕事をつかんだ、という人は数多い。

つまり、未来創造プログラムは、仮に失敗してもリスクは限定的で、成功したときのリターンは結構大きいのだ。

未来創造プログラムには、多様な困難が降りかかる。それらをどこか第三者的に「良い経験」だと思って、楽しんでほしい。ぜひ覚悟を決めて、失敗の山をくぐり抜け、新しい未来を創り出していこう。

30年後のビジネスを「妄想・構想・実装」する 未来創造戦略ワークブック』(日本実業出版社)

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