戦略的パートナーシップの持つ、中小企業にとっての可能性

[Publisher] TechBullion

この記事はTechBullionのAngela Scott-Briggsが執筆し、Industry Dive Content Marketplaceを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@industrydive.comにお願いいたします。

中小企業の経営者のみなさんは、黒字を維持するためなら出来うる限りの手を打ちたいと考えているのではないでしょうか。比較的新しい企業であれ経験豊富な企業であれ、事業を拡大するための最良の方法の一つが戦略的パートナーシップです。

戦略的業務提携とも呼ばれる戦略的パートナーシップは、二つの企業が互いに独立したまま、双方にとって有益なプロジェクトを始めるために合意することです。企業が戦略的パートナーシップを検討する理由はさまざまであり、短期、長期、公式、非公式のものがあります。

戦略的パートナーシップが、中小企業である自社にどう役立つのだろうと思われている方もいるのではないでしょうか。また、行動を起こす前にもう少し情報を集めたいと思う方に、この記事を読み進めることをおすすめします。

戦略的パートナーシップの種類

企業が検討すべき戦略的パートナーシップには、三つの種類あります。

一つ目は合弁事業(joint venture)です。二つの企業が、特定の目標を達成するためにリソースを持ち寄り、別々の事業体を維持したままコストと利益に責任を持つというものです。二つ目は資本業務提携(equity strategic alliances)で、二つの企業が互いの株式を持ち合います。そして、三つ目は業務提携(non-equity strategic alliances)で、二つの企業がリソースを持ち寄る契約を締結しますが、資本を共有したり、新たに別会社を設立したりすることはありません。

中小企業は、自社にとって最適な戦略的パートナーシップの形は何かを考えることが、最初のステップになるでしょう。

戦略的パートナーシップの事例

モード社のクリエーティブディレクターを務めるジョージ・バイバー氏は、戦略的パートナーシップの事例は至るところに存在すると言います。「スーパーマーケットに銀行のATMがあるのを見たことがあるでしょう。気付いていないかもしれませんが、あれが戦略的パートナーシップの事例です」。

ショッピングモールでの買い物ついでに、同じ建物内のスターバックスに立ち寄ったことはないでしょうか?これもその実例と言えます。また、音楽ストリーミングサービスのSpotifyとフェイスブックも戦略的パートナーシップの関係にあり、これを機にSpotifyは急成長を遂げました。フェイスブックと提携することは難しいかもしれませんが、急成長を遂げるチャンスは他にもまだまだあるのです。

戦略的パートナーシップの利点

マーカンテック社の事業開発担当バイスプレジデント、カーティス・E・サハキアン氏は、「パートナーシップは、事業改革の手段として最も手っ取り早く効果的なものです」と述べます。戦略的パートナーシップが、あなたのビジネスにどのようなメリットをもたらすのか、その一部を見ていきましょう。

1. 新規顧客の開拓

戦略的パートナーシップの最大の利点はおそらく、新たな潜在顧客との接点が得られることでしょう。ルマ・ニュートリション社のジェイク・ラングリーCEOは、「戦略的パートナーシップは、最高の無料広告です。パートナーの顧客基盤に、すぐさまアクセスできるようになります」と説明します。

別の企業と手を組むことで、その企業のブランドと提携することになり、取り引きしているすべての人にアクセスできるようになります。これにより、見込み客の数が急増するのです。

モブ・フーカー社のメヘディ・マラクシCEOは、「信頼を確立し、新規顧客を獲得し、あなたの事業の価値を即座に世に問うことができる方法を考えてみてください。戦略的パートナーシップはまさに、事業にこのような効果をもたらすものなのです」と付け加えます。「提携先の企業ブランドがあなたの企業の信頼性を後押しし、あなたも彼らの保証人となるのです。これこそ、真のWin-Winの関係と言えます」。

サーキュラー社のアマウリー・コスマンCEOは、「信頼関係の構築が大事だ」と言います。「顧客や取引先などの仕事相手からの評判を高めることができます。皆それを忘れているのです。潜在顧客の開拓のためだけではなく、ビジネス上の重要な関係性も得ることができるのです」

2. 新規市場の開拓

提携先のパートナーがどのような市場に存在するかを考えてみましょう。戦略的パートナーシップを結ぶことで、現在の市場で顧客を拡大できるかもしれませんし、補完的な業界で、まったく新しい顧客を開拓できるかもしれません。ストレート・アップ・グロース社の共同創業者ダニエル・テハダ氏は、「顧客基盤に多様性を持たせたい場合には、業務提携は大きなメリットをもたらします」と述べます。

世界市場に進出したばかりの企業について考えてみましょう。中国では、アメリカ企業の知名度がないため、その市場の一部には信頼されません。アメリカ企業が中国企業と戦略的パートナーシップを結ぶことができれば、単独で市場に参入しなくても、提携先企業の恩恵を受けて中国の顧客から信頼を得られるようになります。

中小企業の場合で言えば、例えばコーヒーを販売する企業が地元のバリスタと提携するといったことが考えられます。バリスタがそのコーヒーブランドを使っているのを見れば、顧客が同じ商品を購入し、自宅で試してみる可能性が高まるはずです。

3. 事業運営リソースの共有

ラシュカラー社のスミール・コールCEOは、「ディズニー社とピクサー社を見てみてください。スティーブ・ジョブズ氏のアニメーション制作会社だったピクサー社は、配給の手段を持ち合わせていませんでした。両社のパートナーシップは、製品とリソースの完璧な融合であり、どちらも多大な恩恵を受けています」と説明します。「理想的な戦略的パートナーシップは、あなたと相手がそれぞれ提供する最高のものを組み合わせることです」。

あなたの企業が提供できる最高のものは、優れた製品かもしれませんし、提携先のパートナーは優れたマーケティングの知識を持っているかもしれません。パートナーシップを結ぶ前に、相手企業が自社の知識のギャップを埋めてくれるかどうかを確認する必要があります。また、自社の生産能力を拡大したい場合も、戦略的パートナーシップを検討することが重要です。成長期を迎えながら規模を拡大する方法が分からないのであれば、次のレベルへの到達を手助けしてくれるような企業との提携を検討してみましょう。

4. 売上高の増加

クロノス・エージェンシー社のジョシュア・チンCEOは、ここまでに述べた戦略的パートナーシップの利点はすべて、売り上げの増加につながるはずだと言います。「当然のことですが、最善の結果は売り上げの増加です。リソースや専門知識は重要でないとは言いませんが、良い業務提携のメリットをすべて享受し活用できれば、提携期間中または終了後に売り上げが伸びるでしょう」。

戦略的パートナーシップの第一目標が収益である必要はありませんが、もし増加しないのであれば提携を見直すべきかもしれません。パートナーシップは、双方に利益をもたらすものであるはずだからです。相手企業への投資を価値あるものにするため、ROI(投資利益率)を確認することを念頭に置いてください。

戦略的パートナーシップを成功させるための方法

戦略的パートナーシップに乗り出す前に、相互に利益があることを確認しましょう。カウフマン法律事務所のCEO兼創業者ニナ・カウフマン氏は、「業務提携は一筋縄にはいきません(中略)互いをよく知る必要があります」と述べます。

以下に、戦略的パートナーシップを成功させるために守るべきルールを紹介しましょう。

A. ニーズを特定し、パートナーを評価する

戦略的パートナーシップを結ぶ前に、両社が提携すべき理由を見極める必要があります。自社の強みと弱み、提携先の強みと弱みを知り、互いの事業計画にどう適合するかを判断してください。あなたがパートナーシップから得たいものを、前もって明確にしておきましょう。

WANTD社の社長兼共同創業者であるリッキー・ナリアーニ氏は、こう助言します。「重要な質問を投げかけながら、パートナー候補を評価してください。具体的には、『事業はどこで対立する可能性があるのか?どちらが何の支払いを担当するのか?会社の価値観は似ているか?どのように意思決定を行うのか?仕事の進め方は?』といった質問です。他にも多くのことが、パートナーシップの成功を左右します。徹底的な評価をしないままで提携に踏み切ることはやめましょう」。

B. 目的や責任を明確化する

相手が何に期待しているかということを、双方が明確にしなければなりません。期待は現実的なものでなければならず、十分にコミュニケーションを取る必要があります。どちらかが一方的だと感じれば、関係はいずれ悪くなるでしょう。誰が何に責任を持つかを、前もって明確にしておきます。あなたの強みと、相手の強みは何でしょうか? 対立が生じた時に、どこに答えや解決策があるかが分かるようにしておきましょう。

C. コミュニケーションを取る

個人的なものであれ、仕事であれ、コミュニケーションはあらゆる関係の鍵を握ります。エイカー・ゴールド社の業務責任者を務めるジャレッド・ハインズ氏は、同様にコミュニケーションが戦略的パートナーシップの重要な要素であることを見落としてはいけないと指摘します。

「互いにコミュニケーションを取るだけで、誤解や失望を避けることができます」とハインズ氏は言います。各社は進捗(しんちょく)状況を正直に伝え、改善のための提言を受け入れるべきです。「これらは、すべてをスムーズに、かつ双方の期待通りに進んでいることを確認するため、定期的に行う必要があります」。

D. 対立に備える

ハイブリッド・トゥー・ゴー社のコール・スティバーソンCOOは、「完璧な関係はありません。何をしても、対立は生じるものです」と語ります。「そうなった時に対処できるよう、あらかじめ準備しておきましょう」。

不調和が起こった時に対処するための計画を用意し、率直な対話を行いましょう。その際、責任の追及に重点を置いてはいけません。解決策を考え、必要であれば提携を解消する覚悟を持つことです。また、仮に物別れに終わった時にも無防備であってはいけません。提携をスムーズに解消できるような出口戦略を組み込んだ契約を結びましょう。

忍耐強くあれ

「ローマは一日にして成らず」。戦略的パートナーシップも、投資の回収や維持に時間がかかるものです。目的に集中し続け、目標が達成されているかどうかを定期的に確認しましょう。これまで十分に時間をかけてきて、さらに投資の回収を期待するようになっているのであれば、見直しを始めることができます。

中小企業にとって、戦略的パートナーシップは素晴らしい選択肢ですが、軽はずみに締結できるものではありません。評価を重ね、十分な情報を得た上で慎重に判断してください。そうすれば、双方が短期間で利益を得られるようになるでしょう。

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