循環経済で変わる日本の環境ビジネス 「転換期のいまこそ中小企業の出番」

[Publisher] 日本ビジネス出版

この記事は、日本ビジネス出版『環境ビジネスオンライン』(初出日:2023年1月27日)より、アマナのパブリッシャーネットワークを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせは、licensed_content@amana.jpにお願いいたします。

ウクライナ危機による原油や小麦の価格高騰、脱炭素へ向けた世界的な動きの進展など、目まぐるしく変化する世界情勢や経済環境。こうしたなか、日本でもサーキュラーエコノミーへの関心が高まっている。アクセンチュアでサーキュラーエコノミーの戦略策定を数多く手がける海老原 城一氏に、世界や日本の動きについて聞く。

アクセンチュア株式会社
ビジネス コンサルティング本部
サステナビリティ プラクティス日本統括
マネジング・ディレクター

行動を開始する先進的企業

ウクライナ危機で資源を他国に頼ることに対する危機感が高まっている。限りある資源を自国のなかで上手く回していくサーキュラーエコノミーの必要性に対する認識は世界的に高い。

「特に日本においては、脱炭素の文脈でサーキュラーエコノミーが語られています。2050年のカーボンニュートラルを考えれば、資源問題の根本部分を解決しないといけません。その有効な手段としてサーキュラーエコノミーが注目されています」

企業においても、中長期の戦略においてサーキュラーエコノミーが違和感なく受け入れられるようになっているという。原材料の価格が高騰するなか、資源を安定的に入手する手段として、バージン材だけでなく、リサイクル材を使った技術の重要性が増している。

「サーキュラーエコノミーを本当に進めようと思えば、『環境にいいから』ではなく、ビジネスモデルとして捉えていく必要があります。先進的な企業は、足下の2030年GHG排出量削減の次を真剣に考え、サーキュラーエコノミーへの転換を見据えた新たな技術への投資やスタートアップとの提携などを開始しています」

Copyright © 2022 Accenture All rights reserved. (出所:アクセンチュア)

ユーザーのUnmetニーズに着目

ペットボトルを回収して熱利用する。これが悪いわけではないが、『持続可能なビジネスモデル』をサーキュラーエコノミーと考えれば、本来であれば、自社の本業として、製品や資源を利用し続けることが理想だ。ただ、たとえばペットボトルや繊維を回収してバージン材と遜色ない品質で再生するにはまだまだ技術的課題が多い。

「最終的に回収してリサイクルするのは一番外側の話です。その少し内側、回収したボトルをそのまま使う、マイボトルを提供するといった考え方に徐々になっていくことが、ビジネスモデルとしては望ましいかと思います」

たとえば、米・TERRACYCLE社が立ち上げたサービスプラットフォーム『Loop』は、使い終えた容器を回収し再利用する“牛乳配達”のような容器再利用サービス。欧米でサービス展開されており、日本でも味の素、イオン、キッコーマン、資生堂など大手企業が参画し日本版『Loop』がスタートしている。

プラットフォームを活用し回収することを前提に、米国ではハーゲンダッツが二重構造のスタイリッシュなステンレス容器を開発。中身のアイスが溶けにくく、長く冷凍庫に入れてもカチコチにならない。ただ回収しリサイクルするだけでなく、ユーザーニーズに着目し、容器に新たな付加価値を付けている。

「これこそが、サーキュラーエコノミーという言葉で本来やるべきビジネスの転換です。回収・リサイクルにとどまらず、ユーザーのUnmetニーズ(潜在的要求・需要)に着目したビジネスをいかにつくっていけるかが、これからのチャレンジになります」

Loopのビジネスモデル

技術を持つ中小企業の出番

サーキュラーエコノミーの視点でビジネスモデルの転換を考えるのであれば、ユーザーニーズをもう一度見据える必要がある。生活スタイル、若い世代の環境意識、世帯年収、ものの保有に対する意識…。それらの動きを見据えたうえで、自社の技術や強みを活かす形で新たな商品、サービスをつくっていく視点が必要だ。

「サーキュラーへ転換すると、中小企業の出番が増えると思っています」

人件費の安い場所でものづくりをして輸入する現状では、中小企業が日本で腕をふるう機会は限定されている。しかし、サーキュラーエコノミーになって、自国内で循環させ、ものを長く使い続ける社会になると国内でのメンテナンス領域の仕事は増えていく。『つくる』より『リペア』の技術力が問われるようになる可能性は高い。

業界を超えてサービスを束ねた例として、プロのスタイリストがコーディネートした洋服を配送する、オンラインのファッションレンタル サービス『airCloset(エアークローゼット)。ここでは、クリーニングの監修をする『ホワイト急便』や洋服の管理や保管を行う『寺田倉庫』が活躍する。高いドレスを傷めずにクリーニングできる技術や徹底した空調管理と効率的な倉庫オペレーション技術がサービス提供における重要な要素となっている。

「サーキュラーエコノミーのビジネスモデルでは、今までの売り切りでは必要としなかった技術にスポットが当たります。そこを掴めるか、そこを起点にビジネスをつくることができるかが、中小企業の活躍するチャンスになっていくかと思います」

これからサーキュラー型のビジネス、仕組みを持っていなければカーボンニュートラルへの移行は難しくなってくるだろう。それを考えれば、今後ほぼどんな企業も大きな意味でサーキュラー型のビジネスのなかに、いちプレイヤーとして入っていく必要がある。

「資源はなくとも、技術力があり、もったいない精神も持っている。サーキュラーエコノミーは日本にマッチする考え方かと思います。若い世代の意識も変わるなか、サーキュラーエコノミーに日本が転換しない理由はない。あとは、企業側がいかに転換していくかが重要なカギとなるかと思います」

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