フィンランドに見る「都市のデジタルツイン」の現在と未来への期待

[Publisher] VentureBeat

この記事はVentureBeatのGeorge Lawtonが執筆し、Industry Dive Content Marketplaceを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@industrydive.comにお願いいたします。

北欧フィンランドの首都・ヘルシンキで展開されているデジタルツインプログラムは、世界屈指の歴史を誇ります。1990年頃から果敢な挑戦を行い、コンピューター支援設計(CAD)と都市の3Dマッピングを早期に導入。その後、本格的なデジタルツインを取り入れて活動を発展させてきました。この間に数多くのアイデアを試し、その多くが市民をはじめ、都市計画立案者や地元企業に利益と恩恵をもたらしています。

ヤルモ・スオミスト氏は、初期の取り組みが軌道に乗りだした1998年に、ヘルシンキ市の企画部門に入りました。その後、2014年から「Helsinki 3D+」プロジェクトのリーダーとして、ヘルシンキ全域のデジタルツインプログラムを統括しています。

スオミスト氏はVentureBeatに対し、「デジタル都市は、取り組みを開始した約30年前には理想主義的で壮大な夢でした。今やそのビジョンがとても身近なところにあります」と語りました。

デジタルツインが描き出すヘルシンキ。
画像提供:ヤルモ・スオミスト氏(Helsinki 3D+ プロジェクトマネジャー)

ヘルシンキは現在、デジタルツインを、CO2の削減や市が提供するサービスの改善や、画期的な都市開発の広報などに活用しています。

デジタルツインの試作品

ヘルシンキのデジタルツインの歴史は1980年代初頭、同市の都市建築設計コンペから始まりました。当時は、建築デザイナーが描いた白黒の線画をレンダリング(コンピューターを用いて元のデータに処理や演算を行い、画像や映像を生成すること)するのに12時間かかっていましたが、それ以来、その工程と技術はかなり進化してきたそうです。

「今では、影や反射にも対応した、毎秒60フレームの3Dレンダリングが可能です」とスオミスト氏は述べます。

スオミスト氏は2000年にチームと協力し、ベントレー社の専門ソフト「MicroStation」を用いてヘルシンキ市全体を3DCADに取り込みました。また、都市計画に関する展示会では、4台の大型コンピューターエンジンと三つのプロジェクターを使って、ヘルシンキのリアルタイムコンピューターシミュレーションを実演。これによってヘルシンキ中心部における新規開発の必要性が浮き彫りになり、新たな図書館、音楽ホール、公園などの建設や、ビジネスの開発の起爆剤になりました。

「ヘルシンキのデジタルツイン」の進化を示す年表。
画像提供:ヤルモ・スオミスト氏(Helsinki 3D+ プロジェクトマネジャー)

「都市建築設計コンペが何度かあり、われわれはこの地域の未来を披露したいと考えたのです」とスオミスト氏は述べます。

1カ月にわたって開催されたこの展示会で、人々はヘルシンキの中心地区を上空から見て回ることができました。当時コンピューターゲームを見たことがなかった年配の人たちは、3Dマウスで操縦するまで、映像だと思い込んでいたほどです。中には、その世界観に何時間も没入する人がいたそうです。展示会の終了後も、このシミュレーションは都市計画の案内に活用され続けました。

「メッシュデータ」と「意味データ」の統合

ヘルシンキは2015年、Helsinki 3D+を立ち上げました。写真画質に迫る3Dリアリティーメッシュ(3DCGで立体を表すデータ形式の一つ)と、CityGML(City Geography Markup Language)を使ったセマンティックデータ(意味データ)の取り込みと統合について、新しいツールを活用し始めたのです。

「この二つは、異なった制作プロセスを使う補完的な技術です。われわれは、価値を生み出すために両方を活用しています」とスオミスト氏は述べます。

リアリティーメッシュは、「Unreal Engine」「Unity Engine」「Minecraft」などのゲームエンジンによってヘルシンキの街をレンダリングするためのデータを一元化します。5万点を超える航空調査画像が、ベントレー社のソフトウエアによって精度10センチという高精度のリアリティーメッシュモデルに変換されました。最初のモデルは、完成に約1カ月を要しました。

一方でCityGMLは、建物、道路、インフラ、植生に関係するデータの分析に適しています。ヘルシンキは、さまざまな地図やデータベースなどのベクトルデータとセマンティックデータを整理し、統合した都市モデルをまとめました。

初期の成功事例

スオミスト氏のチームは2016年、プログラムの資金調達に関わる意思決定者に対して、データモデルが持つ力を見せたいと考えました。そこで、2カ月ほどかけて新しい都市モデルにつながるパイロットプログラムと、12のプロジェクトを策定しました。それらのうち約半数が常設プロジェクトになっています。

最も成功したプロジェクトとしては、新たな住宅開発に関するコミュニケーションのためのサービス、地下の接続マップ、植樹の効果を示す方法などです。これらはリアリティーメッシュで得られる豊かなグラフィックスを活用したものでした。一方、データ分析の側面に重点を置いたプロジェクトのほうは、複雑すぎて当時のツールでは実装が困難になりがちだったといいます。

その後、モデルの精度と解像度が大幅に向上し、さまざまなゲームエンジンへの統合も改良されています。CityGMLについては、周辺ツールのシステム環境が充実してきていますが、活用するにはさらなる専門知識を必要としています。一方で、CityJSONインターフェースでCityGMLデータを他のアプリケーションに統合することは容易になってきており、こちらのほうが開発は容易です。

長期的な価値を創り出すために

デジタルツインプロジェクトを始めたばかりの都市は、小さく出発するべきです。まずは、デジタルツインの魅力が目に見える形で分かるリアリティーメッシュを使い、都市中心部に焦点を当てたプロジェクトを進めるべきでしょう。ただしスオミスト氏は、長期的にはCityGMLモデルが、持続可能性と都市開発の両軸で目標達成するために重要な役割を果たすようになると考えています。CityGMLモデルのほうが、表面に現れない隠れたデータを見抜けるからです。

戦略レベルの目標を中心に合意形成をして、デジタルツインの採用を促進する方法もあります。例えばフィンランドは、2035年までのカーボンニュートラル達成、2050年にはすべての廃棄物をリサイクルするという目標を設定しています。それらの達成に向けて、政策の違いや個人の判断がどのような影響を与えるかというシミュレーションに、デジタルツインを活用するのです。

一例としてヘルシンキでは、CityGMLデータを活用して太陽放射を分析し、屋根、壁、ドア、窓の改修におけるカーボンフットプリントの潜在的な影響を調べられるサービスを開発しました。ヘルシンキに住む住宅所有者は、断熱材や窓、ヒートポンプを新しくするためのコストや、期待される省エネルギーとCO2削減とを比較することができます。「スタートするための最良の方法は、リアリティーメッシュモデルを使うことです。良い結果が得られ、見た目も美しいからです」とスオミスト氏は述べます。「そうして市の幹部にその力を理解してもらえれば、さらにプロジェクトを展開できるリソースを確保できるでしょう。良いモデルを構築して数年運用し、それをベースにして次のモデルを発展させることができるのです」。

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