なぜ今、企業は「SX」による変革を求められているのか(前編)

[Publisher] 日本ビジネス出版

この記事は、日本ビジネス出版『環境ビジネスオンライン/執筆:齊藤三希子(株式会社スマートアグリ・リレーションズ〈バイオマスレジングループ〉 社長執行役員)』(初出日:2022年8月30日)より、アマナのパブリッシャーネットワークを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせは、licensed_content@amana.jpにお願いいたします。

2021年のIPCC(気候変動に関する政府間パネル)の第6次評価報告書で公表されたとおり、人類の生存基盤である地球環境は、『プラネタリー・バウンダリー(人間が安全に活動できる境界を越えるレベル)』に達している。また近年の不確実な社会背景により、持続可能な社会の構築に向け、グローバルな社会課題を解決しつつ、経済の維持、社会の発展を図るための手法として、サステナビリティ・トランスフォーメーション(SX)への関心が高まっている。

本稿では、SXの定義、SXが求められている背景、グローバル動向について概説し、今後日本企業が求められる変革について言及する。

サステナビリティ・トランスフォーメーション(SX)とは

2021年より、日本においても、SX(Sustainability transformation:サステナビリティ・トランスフォーメーション)が注目されてきているが、まだSXの定義は明確に決まっていない状況である。

経済産業省は、SXとは企業のサステナビリティ(稼ぐ力)と社会のサステナビリティ(将来的な社会の姿や持続可能性)を同期化させる経営の在り方と定義している。

気候変動対策だけではなく、新型コロナウイルス感染症(COVID‑19)などのパンデミックや、ロシアによるウクライナ侵攻など、企業経営を取り巻く社会・環境変化の不確実性は一段と高まっており、企業価値向上を実現していくための中長期的な経営の在り方は重要課題となっている。


図1 サステナビリティ・トランスフォーメーション(SX)とは
(出所:経済産業省, 2020.8, サステナブルな企業価値創造に向けた対話の実質化検討会中間取りまとめ)

経済産業省の「サステナブルな企業価値創造に向けた対話の実質化検討会中間取りまとめ」では、SXの実現のためには、以下3点が必要であると示されている。しかし、現在の資本主義社会における価値観を変えないと、経産省が定義しているSXの実現は難しいと思われる。

  1. 事業ポートフォリオの変革やイノベーションにより、企業の稼ぐ力の中長期的な強化
  2. 不確実性に備えて中長期的なリスク・機会を把握し、経営戦略に反映
  3. 将来のシナリオ変更を想定した企業と投資家の綿密な対話

本稿では、SXは「環境・社会価値が毀損されない持続可能な社会の構築に向けて経済合理性のリデザインを図ること」と定義し、「環境・社会を取り巻く8つの社会課題(図2参照)」の解決に向け、経営資源の再分配が適切に進んでいる状態」を今後目指すべきSXのゴールに設定する。

図2 社会・環境を取り巻く8つの課題(出所:Ridgelinez株式会社)

なぜ、今SXが求められているのか?

経済活動は6つの資本を投入することにより回っているが、これまで、企業は自然・社会資本(外部不経済)はコストとして反映せず、短期的な利益を確保してきた(図3参照)。

その結果、IPCCの第6次評価報告書(2021年8月)では、「人間活動が温暖化を引き起こしたことは疑う余地がない」と公表され、外部不経済が自然の自浄作用の範囲をはるかに超えているという現実が明らかになった。


図 3 価値創造プロセス(価値が創出・保全・棄損されるプロセス)
(出所:国際統合報告<IR>フレームワーク,2021年1月)

持続可能な社会へ構造転換を図るためには、化石燃料依存型社会かつ途上国の資源・労働力依存型の現在と、2050年にサステナブルな社会が実現されている『望ましい未来』とのギャップを埋めていく必要がある。

サステナブルな社会の実現に向けては、まずは環境の上に社会があり、これが成り立ってこそ経済が成り立つこと、環境が崩れると社会・経済も成立できなくなることを理解することが重要である。これまでは、経済・社会・環境は相互に影響を及ぼしており、相互依存関係にあると認識されてきた。しかし、実際には経済も社会も環境へ依存しており、環境が崩れると社会・経済も成立できない。

2030年の分岐点に向けて、あらゆる基盤である環境を維持しながら、社会・経済の持続的な成長に向け、企業の経営資源を再分配し、社会・経済の構造転換を図ることが不可欠である。

後編に続く

著者プロフィール


株式会社スマートアグリ・リレーションズ(バイオマスレジングループ) 社長執行役員
齊藤 三希子 氏

国内Sier、日系シンクタンクを経て現職。
外資系コンサルティングファームを中心に15年に渡るサステナビリティ関連コンサルティングの経験を有し、サステナビリティトランスフォーメーション(SX)関連の書籍や講演、執筆も多数有する。
地域資源を活用した持続可能な地域モデルの創出や、AgriFoodTech、カーボンニュートラル、サーキュラーエコノミー、バイオエコノミー、SX、食料安全保障、などの事業創出に多数従事。
地域資源を活用した持続可能な地域モデルの創出や、先進的な「農業×エネルギー」「食農×医療・福祉」「AgriFoodTech」などのビジネス策定に取り組む。
『Newspicks』にて「環境・エネルギー、食・農業」分野のプロピッカーとして活動中。
著書:「バイオエコノミーの時代」(2022年6月、きんざい出版)

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