コロナ禍の存続危機乗り越えた経営者3人の奮闘 売り上げ急減の事態、どう対処してきたのか

[Publisher] 東洋経済新報社

この記事は、東洋経済新報社『東洋経済オンライン/執筆:斉藤カオリ』(初出日:2022年8月23日)より、アマナのパブリッシャーネットワークを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせは、licensed_content@amana.jpにお願いいたします。

2020年4月、1回目の緊急事態宣言が発動、街から人が消えた。飲食店をはじめ、さまざまな企業が打撃を受けたのは周知のとおりだ。実際に、新型コロナウイルス関連の倒産(法人および個人事業主含む)を確認すると、全国で3636件と判明している(7月4日時点、帝国データバンク)。さまざまな対策をし、ギリギリのところを何とかもちこたえていた企業も多いだろう。

足元では新型コロナウイルス第7波に見舞われており、再び苦難に直面している企業も少なくないだろう。一方で、苦しい局面を乗り越えて体質が強くなった企業も少なくない。今回は、業種の異なる経営者3名を取材。ホテル業、食品加工業その他(サービス一般)、日本語教育とグローバル共創デザイン、それぞれの2020年から現在まで「コロナ禍」に苦しんだ企業が、「この2年をどう過ごし、現在はどのような状況なのか」を追った。

インバウンドがゼロになって大赤字になったホテル

1人目は、ベッセルホテル開発・代表取締役社長の瀬尾吉郎さん。ベッセルホテル開発は、現在開発中を含め、グループで34軒のホテルを全国に展開。地方の名物など魅力的な朝食サービスやくつろげる客室、好立地で家族連れにも人気のホテルグループだ。

しかしコロナ禍で厳しかった2020年度は、グループで30億円以上の赤字を計上。瀬尾さんは「本気の生き残りをかけて、多くの改革に取り組んだ」という。

「2020年度がいちばんの底でした。売り上げの30%を占めていたインバウンド(訪日外国人客)利用が消滅したんです。2020年度の既存店の売り上げは、2019年度比50%以下に激減し、稼働率も20~30%台のホテルが続出しました。とくに沖縄本島は、現在4つのホテルがあるうち6~7割が海外のお客様だったのが、一気にゼロになりました。本当に厳しい時期でした」

コロナ禍での会社の生き残りは「スタッフ全体で取り組まなければならない」と、瀬尾さんは全従業員に向けて、毎月ビデオレターを作成している。

「私は毎月、グループの全従業員に向けたビデオレターでエールを送り、さまざまなことを話してきました。その中で『売り上げ増加策やコスト削減策、お客様満足度の増加策はないか』とアイデアを募ったんです。特に宿泊客が減っている中で、宿泊以外の部門で売り上げを上げられないか、を中心に考えてもらったんです。そうしたら多くの案が出て、それを実現していきました」

従業員の案で実現してきたなかの一部は、以下のような内容だ。

・ホテルでのウーバーイーツの導入
・お土産販売
・イベント開催
・マルシェ販売
・デイユース販売
・漫画喫茶開始
・外部への駐車場貸出
・マッサージ師への賃貸

特にウーバーイーツの導入はうまくいった。ベッセルホテルズの特質上、厨房は朝食しか使わないので、昼夜は空いている。そこで、ウーバーイーツに特化した会社とフランチャイズ契約し5店舗を運営。年間7000万円以上の売り上げを獲得でき、1つのビジネスとして根付いてくれた。

2021年度からは、どうにか黒字転換に成功。2022度も黒字を維持し、稼働率も70%台に回復しているという。

会社設立ほどなくコロナ禍、企画がすべて中止に

2人目は、KAWANEホールディングス代表取締役社長の迫 洋一郎さん。静岡県・榛原郡 川根本町は毎年200人強の人口減少が起き、限界集落、消滅地域へと進んでいる地域だ。迫さんは2020年1月にKAWANEホールディングスを設立。現在は7つの事業(宿泊&観光事業、ゆず加工販売事業、お茶加工販売事業、食事業、介護事業、ICT事業、経営コンサル事業)を展開している。

しかし起業してほどなくコロナ禍に見舞われる。

「高品質で、静岡県イチの出荷量を誇る『川根本町産ゆず』という特産品を使った、ゆず加工販売事業を行う子会社化『KAWANE SENSE』も同月に設立していました。しかし、予定していた企画はほとんど中止。海外向けでは流通がすべて止まり、国内向けでは観光客などの人流が止まり……。対面販売等の営業行為を大きく見直さざるをえない状況となりました」

その後も、コロナ禍の影響で事業全体が苦戦。営業活動が思うようにできない日々でも、人件費、その他経費はかかり続けた。

そして、政府からの支援はゼロだった。

「政府はコロナ対策の支援として、事業の持続化給付金など対策を打ち出しましたが、その要件は『売り上げが前年同月比50%以上の減少』。当然、2020年に起業した会社には当てはまらず、厳しい時期でした」

2020年の第1期は3つの事業を開始したが、赤字決算となった。

2021年1月、行政より相談があり、町営施設『ウッドハウスおろくぼ』指定管理を受け、宿泊&観光業を開始。4月に営業をスタートしたものの、コロナの第4波が襲来。宿泊客は月36人、初回から振るわなかった。

「4月のFLコスト(食材費と人件費の合計金額)は売り上げの472%とスタートから大赤字。5月はGWの月なのに宿泊客は94人、FLコストは売り上げの99%、困難な運営が続きました」

雨季(6月)や閑散期(1月~3月)にはコロナ第4波、第5波、第6波が襲来。8月は1カ月に「255人のキャンセル者」が出た。

次々と施策を実行

2021年、「生き残るために」以下のような施策を実行した。

【ゆず・お茶加工販売事業】
・ふるさと納税やお中元で販売を強化
・ゆず粉を使用した商品の発売
・HPやSNSでの情報発信
・「川根路特産作り協議会」を結成
・駅に「お茶加工商品の自動販売機」を設置
・コラボ商品販売やコラボイベントを実施

【宿泊&観光事業】
・HPやSNSでの情報発信
・家族向けイベントや町民向け企画を実施
・CRMクラウドサービスで顧客管理を開始
・飲食店に調理業務を委託、FLコストの改善を図る

【その他】
・2月から経営コンサル事業を開始
・10月から介護事業を開始

2021年の第2期は5つの事業中3つが赤字だったが、「ゆず・お茶加工販売事業」では黒字を達成。

そして2022年。追加で「宿泊&観光事業」「経営コンサル事業」の黒字も達成。4月にはICT事業(情報通信技術)を開始し、第3期上期の経営状況として、「6つの事業中、4つの事業が黒字」で半期折り返しとなっている。

3人目は、エルロン・代表取締役社長の石川陽子さん。エルロンは日本語教育とグローバル共創デザインを行う企業だ。外国人や日本語教師、外国人を迎え入れる日本人に向けた研修などを行っている。

「2019年3月に創業し、当時はオリンピックを控えてインバウンド事業(訪日外国人観光などの事業)も拡大していて、研修はすべて好調でした。大型案件も入り、創業融資も希望額を借りられて、一気にビジネス拡大を狙っていたんです」

しかし、同年12月くらいから、外国人が「コロナ感染」を警戒。対面研修をオンラインに切り替えるも「研修をキャンセルしたい」という連絡が増えていく。

そして2020年、大型案件を含む、見込んでいた売り上げがすべて失注となってしまった。

「涙が出るほどつらい時期でした。『月の売り上げが10万円もない』ということも……。資金はショート寸前で、さらに信頼していたスタッフも退職。しかし鬱になっている暇もなく、とにかく毎朝瞑想して『今日に集中』するよう努めました」

さらに、必要と感じるサービスをどんどんリリースしていく。

「1年で約20個のサービスを出しました。しかし成果が出ないものがほとんど。毎月、自転車操業のような状況でしたが『諦めない』と決めて行動しました」

第2期は必死に働くも、大赤字の一年だった。

新規事業の急成長に助けられる

しかし2021年、売り上げは前年比160%増となった。新規事業の1つ、「日本語教師向けの講座」が急成長したのだ。

「コロナで『(日本語学校の)海外留学生の入学がなくなった』ことで、仕事が減り、日本語教師が一気に排出されてしまった。そこで現在約4万6000人いるといわれる日本語教師がチームとなって強い組織を作れたら、と」

講座では日本語講師の技術力や授業力を上げられるよう、工夫をこなした。結果、現在までに延べ1000人の日本語講師が国内外から参加してくれた。

2021年6月には「一般社団法人 外国人の子供たちの就学を支援する会」を設立。同年11月にはクラウドファンディングで、外国人の子供たちを義務教育につなげるための資金調達を実施。200名以上から支援され、114%を達成、事業を開始できた。

2020年より突如現れた「コロナ」という荒波に対して、恩恵を受けた業種・業態はあったが、存続の危機にさらされるほど必死にもがいた経営者も多かった。

そんな中で今回の3名の経営者に共通するのは、素早い経営判断とともに、ひねり出した施策を次々に実行したこと、粘り強く立ち向かったことだ。3名の経験から、今後の企業がまた新たな危機を迎えたときに必要となるであろう「精神・行動の両面のヒント」を教授してもらえた、そんなことを感じる取材だった。

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