「良い危機」を無駄にせず、不況を生き抜いて会社を成長させるヒント

[Publisher] e27

この記事はe27のGavin Teoが執筆し、Industry Dive Content Marketplaceを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@industrydive.comにお願いいたします。

私は10年以上にわたって金融機関系VC(ベンチャーキャピタル)の一員として働き、それ以前はスタートアップに勤めてきました。そのキャリアにおいて、景気循環の中で会社を育てることに関する、いくつかの厳しい教訓を学んできました。かつてチャーチルは「良い危機を無駄にするな」と言いましたが、スタートアップにとって、不況は会社を育てる絶好の機会です。

必要は発明の母

私が大学を卒業した2003年当時、米国はドットコムバブル(ITバブル)とその崩壊に続く不況からまだ抜け出せていませんでした。シリコンバレーにある投資銀行のテクノロジーM&A部門でインターンをしていた私は、ある日出勤すると、プライベートエクイティーチームの同僚が全員解雇されていたことを鮮明に覚えています。

私たちは皆、世界が終わると思ったものです。しかし、ウェブバン社やペットドットコム社など、持ちこたえる力のないWeb1.0時代のeコマース企業の多くが破綻する一方で、グーグル社のような新興プラットホームは、検索アルゴリズムなど耐久力のある技術を開発することで収益性の高いビジネスモデルを生み出し、厳しい経済情勢下でも多額の資金を調達していきました。

それから何年もたち、私がビジネススクールを卒業した2010年、世界は再びグレートリセッションに揺れていました。私はMBA取得後の夏休みの半分をプライベートエクイティーファンドでインターンとして過ごし、新聞などの斜陽資産を格安で購入してレバレッジをかける業務を行っていました。そして、もう半分を過ごしていたマイクロソフト社の「Xbox」部門では、クラウドゲームが従来のパッケージソフトを逆転し始めていたのです。

同僚たちや私は、経済は再び成長軌道に乗れるのだろうかと考えていました。しかし、リーマン・ブラザーズ社のようなレバレッジをかけすぎた金融機関が破綻する一方で、デジタル決済やソーシャルメディア、コンテンツ配信といった分野では、クラウドベースの新しいWeb2.0プラットホームが登場して莫大(ばくだい)な価値を生み出すようになりました。そして、フェイスブック社(現メタ社)やジンガ社などのスタートアップが、IPOを行って成功しました。ジンガ社は「サービスとしてのゲーム(Games as a Service:GaaS)」の先駆者であり、私がプロジェクトマネジャーとして参加した企業です。

最善を期待し、最悪に備えよ

現在、私たちが再びテクノロジー不況を迎えていることに疑問の余地はありません。ナスダックは2022年6月、年初来25%の下落を記録し、その後わずかに反発しましたが、マルチプル(企業価値を算出するときに使う倍率)はさらに25~30%下降すると予測されており、企業価値評価はさらに低下する見込みです。

さらに、高インフレが貯蓄と投資の意欲を減退させています。フェデラルファンド金利は2022年7月に2.25%に達し、年内には3%になると予想されており、2019年以降で最も高い借り入れコストをもたらしています。2四半期続くマイナス成長は「テクニカル・リセッション」と呼ばれますが、マクロ的には間違いなくその渦中にあります。

しかしスタートアップにおいては、マクロなトレンドに逆らうミクロな業務遂行が肝心です。上述したグーグル社やフェイスブック社、ジンガ社のような例に加えて、アジアでは中国のアリババ社やタオバオ社がアジア通貨危機の真っただ中に誕生しました。グラブ社とウーバー社は、ともにグレートリセッションの中で創設されています。

2022年現在の東南アジアには、若い地域人口、中間層の購買力上昇、雇用の力強い成長という強みがあります(この状況下で7月に52万8000人の雇用を増やした米国と同様です)。

確かに、東南アジアのスタートアップの多くはうまくいかずに終わってしまうかもしれません。しかし、強力なリーダーシップと収益性への道筋を備えたスタートアップは、成功する可能性を秘めています。中には、競合他社を吸収して市場におけるリーダーシップを確立したり、既存企業を打ち崩して業界変革を加速させたりするような企業さえ出てくるのではないでしょうか。

不況下で、より強い企業を育てるための三つのヒント

企業の創業者や経営陣にとって、成功への近道は以下の方法を実践することだと私は考えています。

インフレを最大限に利用する

可能であれば価格を引き上げましょう。サービス業では、賃金上昇が消費者物価の上昇に追従する傾向があるため、インフレは短期的な利幅を拡大させる可能性があります。値上げができない場合は、実勢価格(実際の取引が成立する価格)で顧客と長期契約を結び、需要が見通せるその状態を利用して、投入物価格の上昇に先行して在庫のバッチ処理や積み増しを実施することでコスト管理を行います。

最近、インドネシアの食品業界で活躍する機知に富んだ起業家に話を聞いたのですが、彼は種苗費などの投入物価格が上昇するのに伴い、商品構成を低コストかつ質を落とした野菜にシフトしたそうです。そうすることで価格上昇分を転嫁せずにマージンを確保し、シェアを拡大したと話してくれました。厳しい環境下でも成功する条件を知っているのはまさに、彼のような人やチームなのです。

貸借対照表とキャッシュフローを厳しく管理する

好景気のときには、ほとんどのスタートアップが、損益計算書(P/L)の上半分、特に流通取引総額(GMV)と売上高に焦点を当てます。しかし不況下で重要なのは、現金のみです。財務に精通した事業者や経営者は、ユニットエコノミクス(顧客・製品・店舗などの1ユニットあたりの経済性・採算性)や、事業のキャッシュフロー・サイクルを厳しく管理します。

資金管理の方法としては、買掛金の支払いを遅らせたり、積極的に売掛金を回収したりします。たとえそれで、厳しい条件に不慣れなベンダーや顧客との摩擦が生じたり、ファクタリング(売掛金をファクタリング会社へ売却し、手数料を差し引いた代金を受け取って資金調達する手法)のコストでマージンを失うことになったりしても、です。こうした厳しい管理こそ、事業が長続きする秘訣(ひけつ)なのです。

クリエイティブに資金調達する

「連続するアップラウンド(資金調達ラウンドごとに企業価値が上がること)」という道を通らない企業は、賞賛されるよりもむしろ失敗例として敬遠されることがよくあります。しかし賢明な創業者は、こうした内外からの偏見を見極め、回避することを知っているのです。まずは、フラットラウンド(前回と同じ企業価値)またはダウンラウンド(前回を下回る企業価値)での資金調達は、成熟と適応力の証しであることを堂々と認め、考えを同じくするベンチャー・キャピタル(VC)を探すことをスタート地点にします。

東南アジアのVCの中には、苦戦を強いられているシリーズBスタートアップの資本再構成に心を砕くならば、同様のビジネスモデルを追求するシードラウンドのチームに、新たに「投資クラブ(少数の個人が集まり、投資を学びながら実際に資金を出し合って合議のうえで投資を進める組織)」レベルで少額の資金を投じるほうがいい、という意見も聞かれます。スタートアップの利益が出るようになるまでは、「ランウェイ(キャッシュ不足に陥るまでの残存期間)」が最重要です。近くで応援するだけでなく、ともに戦ってくれるVCを味方につけたいものです。

マクロ経済が25~30%下落して調整局面にあれば、ダウンラウンドと資本再構成は、資本基盤を強化するために必要な作業です。それらに抵抗しようとするのではなく、資本政策表にメスを入れてくれる経験豊富な機関系VCと手を組みましょう。たとえそれが、リストラの断行や低い評価額でのさらなる希釈化、あるいは保有株式の実質的減少に慣れていない初期投資家との摩擦につながる可能性があるとしても、です。

チャンスを逃さず、挑戦し続けよう

結局のところ、変動の激しいときほどチャンスは大きくなるものです。ダーウィンは「生き残るのは、最も強い種でも、最も賢い種でもなく、最も変化に適応できる種である」と述べています。

そのような姿勢の持ち主にとっては、今こそ、会社を大きくする絶好の機会です。私たちアルタラ・ベンチャーズ社は、目の前の課題やチャンスにクリエイティブに向き合うことを好む、機知に富んだ創業者とともに、東南アジアのスタートアップを育てることを楽しみにしています。

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