物流業界の持続可能性を高めるIoT活用のコツ

[Publisher] VentureBeat

この記事はVentureBeatのMoeco and Alexa Syniachevaが執筆し、Industry Dive Content Marketplaceを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@industrydive.comにお願いいたします。

この記事の著者であるアレクサ・シニアチェワ氏は、モエコ社の共同創業者兼CEOです。

社会の持続可能性に配慮しながらビジネスを行うことは、かつてないほど重要になっています。各企業は費用対効果や効率を維持しながら、可能な限り環境に配慮することを強く求められているのです。これらの要求は、顧客、従業員、政府、そして多くの場合は株主など、あらゆる方面から寄せられています。

多くの企業にとって、コストを増やさずに持続可能性への配慮を高めることは不可能に思えるかもしれませんが、そうとも限りません。

近年、特に2021年のCOP26(第26回気候変動枠組条約締約国会議)以降、「環境・社会・経済」の観点から企業の持続可能性を追求することがビジネスリーダーの最重要課題と位置づけられており、その意識も浸透してきています。テクノロジー企業のABBが765人のビジネスリーダーを対象に行った調査によると、コロナ禍以降、持続可能性に関する目標の優先度が高まっていると回答した人は71%に達しました。

ただ、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響でビジネスが急拡大した一方、真の意味で持続可能性に配慮していると言うにはまだ道半ばである産業もあります。その一つが物流業界です。

興味深いことに、ABBによる調査への回答者のうち72%が、持続可能性への対応を目的とした産業用IoT(モノのインターネット)への投資を増やす計画があるとしています。筆者も、彼らの選択を支持しています。

デジタル化が私たちの生活や仕事に多大な影響を与えることが明らかになるにつれて、私たちはIoTを、効率化のためだけに使用する状況から次のステージに移行しつつあります。IoTは今や、持続可能性に関連した手段であり、あらゆる企業にとって例外ではありません。ボーダフォン社とWPIエコノミクス社が作成した報告書によると、IoTや5Gなどの新しい技術によって、イギリスは年間1740万トンのCO2を削減できると述べています。

筆者は数年前から、物流をより持続可能性へ配慮した業界にする手段としてIoTの活用を提案しています。物流業界には解決すべきいくつもの重要な要素がパズルのように存在しており、IoT技術が解決の助けとなるのです。

物流工程全体の持続可能性と破損品への対処

破損した商品を欲しがる人はいないはずです。破損品は製造元と顧客の双方にとって頭痛の種であり、企業はこの問題による影響を少なくするために結果として炭素排出量を増やしてしまう可能性があります。筆者は、この問題の根元にある原因はデータ不足だと考えています。

破損品については目的地で報告されるのみで、過程におけるデータがほとんど、あるいは全くないため、「なぜその状態になったのか」を正確に把握することは、物流会社にとって困難と言えるでしょう。

つまり、いつどこで破損したのか、また、破損を回避する機会があったかなどについて、必ずしも知ることができないのです。その結果、日常的に商品が破損する可能性が高まり、企業のコストや環境にまで影響が及んでしまいます。

IoTトラッカーは、位置、衝撃、温度、湿度、光など、貨物の重要な指標に関する情報をリアルタイムで収集できるため、問題を特定し、取り返しのつかない損害が生じる前に是正できます。リアルタイムでのデータ収集により、企業は正常値から逸脱した時にすぐデータを受け取れます。例えば食品や医薬品を輸送する場合には、湿度や温度の指標が非常に重要です。これらの指標が推奨値から外れると、商品の劣化が始まります。また、リアルタイムセンサーを用いれば、異常が起きたらすぐ輸送業者に通知が送られるので、破損を発見した時ではなく問題が発生したタイミングで解決できるのです。

品質管理やリスク対策のための人件費の削減

デジタル化の主な利点の一つは、業務プロセスが簡素化され、単純な反復作業を人が行う必要がなくなることです。

機械のほうがより効率的かつ正確に行えるところに人員を投入すると、炭素排出量の増加につながります。しかし物流業界ではそれが一般的なのが現状で、裏を返せばデジタル化に取り組む機が熟しているとも言えるでしょう。

多くの場合、一度の輸送の間に人が何度も商品の状態や品質を確認しなければなりません。この作業は、倉庫からトラック、トラックから港、港から船といった地点でどの輸送業者にも発生します。しかしこの方法は、人が毎回の確認を正確に行うことを大前提としているため、ミスが起こる可能性は低いのです。

ただ、仮に人為的なミスがなかったとしても、地点間の輸送中に商品が劣化することはあり得ます。しかし、センサーならば見逃すことはありません。次の確認作業が入る地点で商品の破損が発覚するのではなく、破損の可能性が生じた時に警告を発してくれるのです。

輸送の状態や現在地に関するデータをエンドツーエンドで途切れなく得ることができれば、あらゆるコストの削減に役立ちます。

1. 商品の安全点検を行う人材のコスト
2. 商品が破損した場合に、保険金を支払うコスト
3. どのような問題が、なぜ起きたかを特定するためのコスト

これは荷主や受取主だけでなく、物流工程全体を構成する各会社にとっても標準的な取り組みになるべきものだと筆者は確信しています。なぜかと言えば、物流会社は輸送中の貨物に対する責任を負っているからです。輸送中に何かが起こった場合には、すべて物流会社が責任を取ります。状況をリアルタイムに追跡することができれば、仮に商品の保管状態に変化が生じても劣化する前に修正できるのです。

CO2排出量に関わるデータ収集の徹底

すべての企業がCO2排出量の削減を求められていますが、中には取り組みの目標や期限を設けていない企業もあります。

さらに、特定の貨物輸送のCO2排出量を確認する一貫した方法がまだ存在しません。これは重要なことであり、多くの国や地域で義務化が進められています。

とはいえ、位置や状態のデータは、非常に高い精度でカーボンフットプリントを推定するのに役立つでしょう。私たちの計算では、エンドツーエンドの状態監視は物流工程全体で破損品や人件費を削減でき、環境に優しくなることが示されています。

例えば、貨物の追跡や状態監視のための技術を導入することで、破損品の数を減らし、CO2排出量を削減することができます。

ここで一つ補足しておくと、貨物の正確な位置と状態を監視するソリューションは複数ありますが、これらは再利用できる高価なIoTセンサーに依存しているため、すべてのビジネスに適しているわけではありません。

こうしたソリューションは通常、トラック会社やコンテナ業者などの、一つの物流事業者に限定されます。一方、貨物輸送の95%は片道のため、最終顧客が何かを送り返すのはほぼ不可能です。仮に受取主が荷主に対して再利用可能なセンサーを返送する場合、10~30分の人件費と輸送費、それに伴うCO2排出量が追加されることになります。

持続可能性に配慮した物流業界の未来を目指して

私たちの研究から、サプライチェーンのデジタル化は、効率と収益性を高めるだけでなく、環境にも良いことが分かりました。

私たちは皆、この両面からサプライチェーンの持続可能性という問題に取り組んでいますが、使い捨てタイプのIoTトラッカーこそがその答えになる、と筆者は強く確信しています。

トラッカーを廃棄することは意に沿わないかもしれませんが、エンドツーエンドの監視が可能になった場合、使い捨てのトラッカーを製造することによるCO2排出量は、再利用されるセンサーに関わる労働、輸送、リバースロジスティクスのCO2排出量を下回ります。

また、貨物の行程をすべて把握できることも助けになります。状態データに空白がなければ、受領側の品質管理に関わる人件費を削減できるのです。例えば、貨物が配送センターまでしか監視されていないなどの理由でデータが不足している場合、受領側が手形引受を行う際の質問に対して、明確な回答が必要になります。

物流におけるCO2削減は、位置データや状態データを組み合わせることで、SaaSプラットホームや使い捨てIoTセンサーの運用に伴うCO2排出よりも大きな効果を期待できるでしょう。

これは、梱包材の大部分が使い捨てであることと同じ理由で、経済的要因が関係しています。商品の破損を避けるために段ボール箱を少し厚くしようとすると確かに費用がかさみますが、破損品はその分減るので、長い目で見ればかなりの節約になります。

サプライチェーンにおける持続可能性への配慮を高めたいと考えている場合、トラッキングソリューションにもこの理論を当てはめることをおすすめします。

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