太陽光発電EVの先駆けになれるか。オランダ発の電気自動車登場。

[Publisher] TechRadar

この記事は、TechRadarのAxel Metzが執筆し、Industry Dive Content Marketplaceを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@industrydive.comにお願いいたします。

オランダの自動車系スタートアップであるライトイヤー社が、量産準備が整ったとして「ライトイヤー・ゼロ(Lightyear 0)」を公式発表しました。これは太陽光発電で充電する電気自動車(EV)で、従来型の充電器に接続しなくても最大で7カ月、走行可能とされています。

6年におよぶ研究開発の成果であるこの自動車には、60kWhの小型バッテリーパックが搭載され、ルーフとボンネットには曲面の太陽光パネルが複数枚取り付けられています。この組み合わせによって航続可能距離は388マイル(625キロメートル)にもなり、そのうち44マイル(70キロメートル)は太陽光発電の電力のみでまかなえるということです。

ライトフライヤー・ゼロは、太陽光を浴びている間に自動的に充電されます。そのため、例えば44マイル(70キロメートル)未満の走行であれば、電源に接続することなく数カ月間続けて走行することができます。

もちろん太陽光パネルで発電される電力量は利用する地域の日射量に依存しますが、ライトイヤー社によれば「一度の充電でオランダのような気候でも2カ月、スペインやポルトガルであれば7カ月は持つ」とのことです。

さらに、同社が特許を取得している「ダブルカーブ・ソーラーアレイ」は、年間1万1000キロメートル相当の電力を生み出すように設計されているとも説明しています。

ただ、バッテリーの大きさが限られているので、ライトフライヤー・ゼロはまだ十分な車とは言えません。前述した60kWhのバッテリーパックにより、174馬力と1,269ポンドフィート(約1,720.5ニュートンメートル)のトルクが得られますが、これによる0-62マイル加速(1-100キロメートル加速)には約10秒必要となり、やや物足りない印象ではあります。スピードメーターも、最高で時速100マイル(約160キロメートル)まで設定されています。

とはいえ、この車は性能で業界を変えることを目指してはいません。ライトイヤー社が望むのは、優れた走行可能距離を約束することで、メルセデスやアウディ、テスラのような高級EVの「先にあるもの」に期待してもらうことなのです。

同社は、25万ユーロ(約3,440万円)で946台を生産する計画だと述べています。公式Webサイトからすぐにでも注文可能ですが、最上級クラスのEVである「メルセデスEQS」が2台、あるいはEVスポーツカーの「ポルシェ タイカン4S」を3台買ってもまだお金が余るほど高額です。

これを踏まえると、ライトフライヤー・ゼロが現在のEV市場に破壊的な変革を起こすとは考えにくいかもしれません。ただ、太陽電池を搭載するEVの未来の可能性を示唆する、紛れもなく躍動的なイノベーションであることは間違いないでしょう。

「太陽光発電EV」時代の到来か?

ここ数年間は人々を引きつけるための取り組みが中心だったように見えたものの、自動車業界はいよいよ太陽光発電の実用化に向けて動き出しています。ライトイヤー社に加えて数社が現在、間もなく路上に登場するであろう、量産可能な太陽光発電EVの生産を始めようとしています。メルセデス、ヒョンデ(現代自動車)、テスラ、トヨタなどの大手ブランド数社が、太陽光で発電するモデルやハイブリッド型の自動車開発に積極的に取り組んでいるのです。

こうした新しいEVの開発において課題はたくさんあります。悪天候やその他の障壁(ルーフの太陽光パネルに日光が当たるのを遮る多くの建物や橋、樹木、トンネルなど)による発電量の低下だけでなく、車両の安全性や信頼性を高めながら費用効率の良いモジュールを製造する難しさも含まれます。

ライトイヤー社は、性能よりも効率を重視してきました。ライトフライヤー・ゼロは日常的な使用を想定した車であり、理想的な条件下であれば、継続的なトリクル充電(二次電池の自然放電を補うため、微小電流により絶えず充電する方法)に相当する約1.05キロワットを、太陽光パネルから得られるとされています。

同社のこうした取り組みの価値を判断するには、ライトフライヤー・ゼロが実際に路上を走り始めるまで待つ必要があるでしょう。ライトフライヤー・ゼロの初回注文分の引き渡しは、早ければ2022年11月になるとのこと。今後の動向にも注目です。

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