中小企業のESG対応。アメリカの専門家に聞いた今すぐできる小さな一歩

[Publisher] The Guardian

この記事は、The GuardianのElizabeth Bennettが執筆し、Industry Dive Content Marketplaceを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@industrydive.comにお願いいたします。

真にサステナビリティに配慮したビジネスモデルへの移行は、途方もない大仕事だ──そう感じる人も多いかもしれません。実際に多くの中小企業経営者は、どこから手をつけたらいいか分からずに悩んでいるのです。ただ、小さな一歩を踏み出すだけで、大きな効果を得られる方法もいくつかあります。例えば、契約中の電力供給業者の変更、出張や出勤に関する社内規定の見直し、企業年金の運用方法の変更、従業員の意欲向上を図る報酬の導入などです。自社のCO2排出量を削減しつつ、ESG投資などさらなる投資を呼び込む新たな試みは数多くあります。すぐにでもできることではないか、専門家に意見を伺いました。

「測定できないものを管理することはできません」と語るのは、ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)スクール・オブ・マネジメントで、経営戦略とサステナビリティを研究するパオロ・タティッキ教授です。「中小企業経営者は、サステナビリティへの対応を開始するために自社のカーボンフットプリントを総合的に評価する必要があります」。幸い、現在はカーボン・トラスト社ノーマティブ社などが提供する無料のツールがあり、企業の温室効果ガス排出量を簡単に算出できます。自社が環境に対してどのくらい影響を与えているか、改善点はどこにあるかなどが把握できれば、現実的な目標設定ができるようになるはずです。ただし、ESG投資を呼び込みたい場合には、業界標準の数値に沿って目標を立てたほうが良いでしょう。

また、オフィスや倉庫、店舗や工場などの建物は、温室効果ガス排出源の一つです。サステナビリティを専門とするコンサルティング会社、バイオ・リージョナル社のサステナブル・ビジネス部門を率いるシアン・クック氏は、「温室効果ガス排出量実質ゼロを達成するには、借り手と貸し手の連携が不可欠」と述べています。エネルギーの効率性や再生可能エネルギーへの移行について話し合う際、建物の持ち主を引き込むことは重要です。「賃貸オフィスの貸主は、グリーン・クレデンシャル(環境保護の信頼性)の強化に注力しています。今は借り手市場なので、さまざまな物件を見比べてみてください」とクック氏はアドバイスしました。他方、自社ビルや店舗を所有している中小企業は、再生可能エネルギー供給業者と認定された電力会社に切り替えれば、排出量において大きな変化をもたらすことができるでしょう。

従業員の出張や出勤について少し見直すだけでも、大きな効果が得られます。出張は、本当に現地へ行く必要があるのか、あるいはリモートでも事足りるのかを見定めることが大切です。通勤についてもより環境に優しい手段を模索するよう、クック氏は次のようにアドバイスしています。「例えば自転車通勤の奨励や、従業員に定期券購入費を無利子かつ有利な条件で貸し出すシーズンチケット・ローンの導入などが挙げられます。炭素排出量が少ない交通手段での出勤を促すことや、電気自動車(EV)への切り替えに資金を投じることも検討してみてください」。

多くの企業は、温室効果ガス排出の実質ゼロを目指すべく、何らかの形でカーボンオフセットを行う必要がありますが、この場合、事業活動の中で可能な限り排出量削減に努めたうえで、それでも排出してしまう分に限られます。この考え方は、企業が排出するすべての温室効果ガスをよそでの削減分で埋め合わせることで排出を実質ゼロにするという、カーボンニュートラルとは対照的な考え方です。カーボンオフセットを実現させるには、パートナー企業の選定が鍵となります。タティッキ氏は、「必ずしも安価なほうがいいというわけではない」と語り、また全体戦略としてカーボンオフセットに依存しすぎるのも適切ではないとも指摘しています。「カーボンオフセットの価格は急上昇する見込みです。つまり、大変お金のかかる手段となるでしょう。中小企業は今後を見据えて慎重になるべきです」。

意外なことに、中小企業が最も簡単に自社のビジネスモデルを改善できる方法は、投資と年金です。企業の資産や企業年金の運用先を、化石燃料業界やその周辺の産業以外へ振り替えれば、有意義な変化が生まれるかもしれません。「年金投資の透明性向上を目指す団体『メイク・マイ・マネー・マター』の算出では、航空機の利用停止、菜食主義への転向、再生可能エネルギーへの乗り換えをすべて実施したとしても、『環境に配慮した年金運用』のほうが21倍も効果的に炭素排出量を削減できるのです」と、クック氏は語っています。

そして、中小企業の中核を担っているのは人なので、従業員を自社の持続可能性への取り組みに巻き込むことも大きな力になります。環境・社会・ガバナンス(ESG)専門家のマイケル・ジョンストーン氏は、経営や規制上の観点から考えるのみならず、ビジネス全体の転換を図ることが重要だと強調します。「従業員への教育や支援を通じて彼らの問題意識を高め、炭素排出量ネット・ゼロ文化を育む必要があります。例えば、ネット・ゼロに最も熱心に取り組んでいる従業員たちを評価しましょう。そして、従業員の行動を阻むことがないように報酬を設けるなどして、ネット・ゼロへの移行を促進しなければなりません」。

同様に、取引先や顧客に参加してもらうことも極めて重要です。「熱心な顧客を積極的に探し、気候変動に焦点を置いた取り組みの検討やデザイン、改善に巻き込むようにしましょう。その活動を楽しめるよう工夫して、自社ビジネスの差別化要因としてもアピールできるものにするのです。顧客は変化をもたらす活動の一端を担っていると認識し、きっと喜んでくれるはずです」とジョンストーン氏は述べています。

次に、すべての中小企業にとってESG投資を呼び込むことは非常に重要であり、その点から見ても、環境に配慮したビジネスモデルへの転換は良い方法となりつつあります。また、環境保護や持続可能性のための取り組みに利用できる資金も存在します。イギリス持続可能な投資・金融協会(UKSIF)のジェームズ・アレグザンダーCEOは、中小企業がエシカル志向の投資家を引きつけたいと考えている場合、企業として説明責任を果たせるようになることが重要だと強調します。「自社が気候変動にどのような影響を与えているかを考慮しましょう。その影響の低減に向けては、スケジュールや目標を盛り込んだ計画書を作成し、取締役会からの承認を得てそのとおりに実行してください」。またアレグザンダー氏は、その計画がビジネス全体にもたらす波及効果を考慮することを推奨しています。さらに、「気候変動がビジネスと顧客にもたらしうる影響を、取締役レベルで積極的に検討します。温室効果ガス排出量を含むESG関連のデータを、幅広く集めて公表してください」と語り、企業の透明性が鍵を握ると付け加えました。

中小企業が持続可能なビジネスモデルに転換することは、決して容易ではなくコストや時間がかかる場合もありますが、時代に即して事業を継続していく確実な方法だと考えます。ここで挙げたような小さな一歩を積み重ねていくことで、自社の利益を得やすくなることや、ひいては地球を救うことにもつながるのです。

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