テクノロジーへの苦手意識を解消する。DXの五本柱を徹底解説

[Publisher] e27

この記事はe27のPhang Wai Yinが執筆し、Industry Dive Content Marketplaceを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@industrydive.comにお願いいたします。

新型コロナウイルス感染症が発生した際、企業におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)は重要な分岐点を迎えました。企業存続のためには、オンラインへの移行が必須になったためです。この2年あまりでDXを進める中小企業は増えましたが、一定の割合でいまだ導入をためらっている企業もあります。

筆者の意見として、主な問題は、初めてテクノロジーを活用する人の「デジタル化」の解釈にあります。伝統的な業務の進め方に慣れている経営者は、デジタル化の可能性を探ることさえ、何から始めればよいのか分からずためらってしまうため、大きな影響を受けることになるでしょう。

こうしたテクノロジーへの苦手意識を克服できるようにするために、デジタル化を小さなピースに分解して理解しやすくする必要があります。

革新的な変化をためらう経営者を説得する最も効果的な方法は、デジタルツールの導入がもたらす利点を正確に描き出すことだと、筆者が約10年、さまざまな企業とDXに取り組んできた経験から確信しています。

経営者が優先するのは、明確で現実的な投資対効果(ROI)と顕著な付加価値です。このことを理解したうえで、各企業において「デジタル化のステップ」がどう進んでいくかについて、時間をかけて段階的に説明することが極めて重要だと考えます。

そして同時に、各企業におけるデジタル化のステップがビジネス目標の達成につながるよう、DXにおけるポイントとなる五本柱を設けて、その準備や計画、優先順位付け、実行までを着実にこなしていくことが求められます。この五つについて、以下に詳しく説明していきます。

経営陣のマインドセットと連携の維持

一つ目の柱は、経営陣の意見を一致させ、連携を維持すること。企業におけるDXはここから始まると言っても過言ではありません。経営陣が「DXは自社に利益をもたらす」「実行可能であり、時間、資金、労力を費やす価値がある」と考えている必要があります。

経営陣は、社内の課題に気付いていることもあれば、そうでないこともあります。課題があると自覚できていない場合、DXをそもそも達成不可能な偉業と捉え、「壊れていないものは直さない」という考えに至る人もいるようです。

こうした場合は手始めに、技術ベンダーのワークショップやウェビナー、イベントに参加してもらい、DXへの信頼を育むことが鍵となります。

一方で、課題意識を持っているチームリーダーはDXがもたらす利点を理解し、自社のテクノロジーに関する緊急かつ重要な問題を解決しようと少しずつ前進しています。ただし明確なイメージやロードマップはまだ持っていないことが多いです。

このような状況を打開するために、インパクト・エフォート・マトリックス(成果・労力マトリックス)というものを使って優先順位を付け、デジタル化のステップを進めるために小さな成果を積み重ねていくことが大切です。この考え方は企業が素早く軌道修正してチームの優先順位を調整し、時間と労力を節約しながら、問題に対する最善の解決策を特定するのに役立ちます。

課題が特定されたら、解決を意識すること。また、企業が持続可能かつ長期的に成長できるよう、DX推進のための強固なロードマップを構築し、考え抜かれた取り組みをサポートできる十分なリソースを投入することが必要なのです。

ビジネス主導のDXロードマップの作成

経営陣のマインドセットが定まり、DXについて理解が深まったら、次は、DXを成功に導くビジネス・ロードマップを描くことが求められます。作成にあたり、初心者にとっても分かりやすいシンプルなものであることがベストです。強固で実行可能なロードマップを作成する最も簡単な方法は、次の二つのカテゴリーに大別することだと考えています。

  • 企業価値を高めるもの
  • 環境、インフラ、ガバナンス

このパラメーターがあれば、何をデジタル化しようとしているのか、どのような経済的効果があるか、どうすれば目標を達成できるか、どの分野を優先すべきかについて、経営陣やリーダーが確実に把握できます。

ITコンサルティング企業であるSRKK社のチームでは現在、フォーマット化されたロードマップを用意し、コンサルタントがさまざまな顧客企業と会話する際に利用しています。その結果、顧客企業が抱える課題を解決しやすくなり、70%以上の企業が、明確に定義された同社のDXフレームワークを有効活用してデジタル化を開始しているそうです。

例えば、ヤシ油のプランテーションや農業、畜産業を営むマレーシアのある政府系企業は、コロナ禍におけるハイブリッドワークのために「Microsoft 365」を導入することで、DXを推進し始めています。

また、SRKK社はさまざまな局面でロードマップのカスタマイズを行い、サイバーセキュリティーを含む事業プロセスの改善なども支援しました。顧客企業が、情報を扱う従業員744人のメールセキュリティーを改善すると決断した際には、マルウェア、フィッシング、スパムメールに関する問い合わせが大幅に減少したとの報告がありました。

各企業に合ったDXの手法を採用すれば、迅速かつ低コストでデジタル化を推し進めることができるのです。

DXを推進する人材の起用

経営陣における適切なマインドセットや強固なロードマップの作成に欠かせないのが、変革プロセス推進の鍵となる人材です。会社全体の戦略とロードマップを深く理解してプロジェクトの優先順位を付けるべく、テクノロジーに精通したビジネスリーダーを配置することが重要になってきます。

その役割には、プロジェクトが売り上げではなく価値主導で進むようにすることも含まれます。そして、チームメンバーが新たな挑戦を受け入れ、部署を越えた変化を意識付けるためには、言葉が明確で説得力があり、粘り強く取り組める熱意のある変革推進者が望ましいです。

また、優秀なIT管理者の存在も重要であることは言うまでもありません。自社のIT環境をベースにしながら、技術選定プロセスの調整と促進、試験や導入の支援を行える人材です。DXに関する決定を実行するには、内製か外注かにかかわらず、技術リソースが不可欠と言えます。

DXフレンドリーな企業文化の醸成

よくある誤解は、企業がテクノロジーを改善しさえすればDXは完了する、というもの。しかしDX推進で肝心なのは、ソフトウエアやテクノロジーではなく組織のアジリティー(機敏性)です。アジリティーの高い環境では、従業員は「早く失敗し、そこから学ぶ」ことで罰せられる心配はありません。慎重さよりも大胆さが推奨され、計画を立てるよりも多くの行動を起こすことが重視されます。

アジリティーが高い企業は、社会全体のDXがもたらす市場の変化に素早く対応し、同時に経営陣は戦略的な意思決定に集中できます。現状に疑問を持ち、変化を恐れないDXフレンドリーな企業文化を取り入れることが重要です。

そうすれば、従業員が自分の強みをさらに生かし、弱点を発見できるような「安全な空間」が生まれ、イノベーションがさらに促進されるでしょう。

成果を重視したテクノロジーの導入

企業のDXの成功は、テクノロジーの導入によって企業の業績が向上したかどうかにかかっています。

これを知るためには、技術者とエンドユーザーの双方向のコミュニケーションが非常に重要です。絶えずフィードバックが行われれば、結果として成功率が向上するためです。

コミュニケーションを容易にするのに有効なのは、スクラムとアジャイルというプロジェクト管理のフレームワークです。スクラムとは、アジャイルに沿って構築したプロジェクトを効率的に実行するためのルールや役割、あるいはイベント(会議など)のことを指します。

このフレームワークは、導入時に検討すべきものです。部門横断型のチームが定期的にコミュニケーションを取り、プロジェクトの優先順位を常に確認し、フィードバックへの対応を完了させて、迅速に価値をもたらすことができます。

ここまで紹介してきた五本柱を中心に、経営者の皆さんには、生産的な話し合いや効果的なブレーンストーミングを行ったうえで、準備、計画、優先順位付け、よりよく実行するためのアイデアを得ていただければと思います。

国境が再び開かれ、企業が立ち直り始めてきました。この機会に、より多くの伝統的な企業がこの五本柱の助けを借りてデジタル化に着手すれば、国の経済にも多大な影響を与えられると確信しています。

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