電子廃棄物という社会問題。東南アジアにおける現状と課題を徹底解説

[Publisher] e27

この記事はe27のThibaut Meurgue-Guyardが執筆し、Industry Dive Content Marketplaceを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@industrydive.comにお願いいたします。

サステナビリティとは、排出権取引やカーボンオフセットといった注目が集まるプロジェクトばかりではなく、しばしば忘れられがちな事柄や、わざと目を背けていることも含まれます。残念ながら、電子廃棄物(e-waste)もその一つとなってしまうのではないでしょうか。

廃棄物処理には目新しさがないから?大量消費か節制の二者択一だから?あるいは企業が廃棄物に価値を見いだそうとしていないから?廃棄物の価値については後述しますが、何とも説明しがたいのが現状です。

ただ100%確かなのは、電子廃棄物が今世紀最大の問題の一つになるということです――そして、それを知っている人はあまりいません。

2019年8月、『Eco-Business』というメディアが記事「Defusing the e-waste bomb in Asia」を公開しました。ここに書かれていることは、当時から現在までほぼ変わっていません。改めて、この話題について考えるべきではないでしょうか。

それでは、東南アジアの電子廃棄物の現状はどうなっているのか。現状は、どこでも同じなのか、それとも国によって差があるのか。中でもシンガポールは、アグリテックやサステナビリティに貢献する新技術、食品ロスの分野などで先進的な取り組みが見られますが、電子廃棄物に対しても同様に先進的な取り組みが生まれているのか。そしてそもそも、電子廃棄物の何がリスクと言えるのか。

こうした疑問に答えるために、特にシンガポール、マレーシア、インドネシアという3カ国に焦点を当てて、東南アジアの電子廃棄物の現状と今後の展開を紹介します。この問題について知り、なぜアジアの未来が危ぶまれているのかを理解していただくための考察です。では、本題に入りましょう。

まずは背景を見ていきます。「世界のE-wasteモニター2020」には、次のように書かれています。

  • 世界の電子廃棄物の発生量は、2019年5360万トンまで上昇。過去最多に。さらに2030年までに7400万トンに達する見込み。
  • 2019年の電子廃棄物のうちアジアの発生量は2490万トンで世界最多、増加率も世界最大。

Total e-waste(kilo tonnes)

  • 先進国では電子廃棄物への対応が本格化し、適切な処理が行われるようになっているが、多くの中・低所得国ではそれを処理するインフラが整っておらず、中には管理が全く行われていない国もある。電子廃棄物の管理を続けるには処理施設と人(つまり資本)が必要であることを考えると、当然の流れである。

電子廃棄物とは

電子廃棄物とは、廃棄される全ての電子機器や装置を指します。ノートPCやスマートフォンのみならず、テレビやDVDプレイヤー、プリンター、機械類も含まれます。

一般的に不要になった機器は、以下のいずれかの道があります。

  • 修理や整備を行い、再利用する
  • 中古品を扱うプラットホームなどで再販売する
  • 回収をして再資源化する
  • 純粋に廃棄される

廃棄物と循環において重要な「3R(リデュース、リユース、リサイクル)」の概念にも、これらの選択肢は含まれています。3Rについてさらに知りたい方は、こちらのページ(シンガポール環境庁(NEA)サイト)をご覧ください。

電子廃棄物は、必ずしも簡単にリサイクルできるものではありません。電子廃棄物の回収日を年に数回設けている自治体もありますが、それまで各家庭で不要品を保管しておかなければなりません。

家電量販店の中には電子機器の無料回収を受け付けているところ(Best BuyStaples)や、AppleSamsungMicrosoftDellなど、自社製品を回収してリサイクルを行うメーカーもあります。

意外かも知れませんが、例えば、消費者目線では動画ストリーミングサービスや動画SNS、企業目線では5GやIoT、最先端テクノロジーの導入など、新しいインターネットの使い方が増えていることも、電子廃棄物の増加に寄与していると言えるのです。

これは性能の向上や最新製品がどんどん誕生することで、機器の寿命が短くなっていることを意味しています。この現象を裏付けるため、機器の平均寿命を見てみましょう。

1990年代、電子機器の寿命は20~25年とされていましたが、現在は平均して約4~5年です。消費者向け製品(例えば一部のスマートフォンの寿命は3年未満)と企業向けの機械(約7~8年)の間には、大きな差があります。

今後、新技術の登場により寿命はさらに縮まるでしょう。特にアジアでは、デジタル化と中産階級の発展が世界のどこよりも急速に進んでいるため、今すぐ策を講じることが必要なのです。

高度な技術が使われた機器は、リサイクルが難しいことがあります。一部の電子回路基板に使われている、ごくわずかな鉱物を混ぜ合わせた合金ナノ粒子は、処理設備が万全に整っていたとしてもリサイクルが非常に難しく、かつコストもかかります。

一般的なスマートフォンには金が0.4グラム含まれていますが、その回収に大量のエネルギーが必要だとしても回収する価値はあるのでしょうか?鉱物資源の枯渇とエネルギー消費の悪循環について考えを巡らせるきっかけになりそうです。

電子廃棄物に関するさまざまな問題

電子廃棄物は、たくさんの問題を引き起こします。記事の中で徹底的に解説するのは難しいですが、主な問題としては、環境、人々の健康、社会的なトラブルなどが挙げられます。

環境への影響問題

これは今や誰もが関心を持つ重大問題なので、丁寧に説明するまでもないでしょう。電子廃棄物を野ざらしにするのは、地球にとって良いことではないと感じるのはもっともなことです。

電子廃棄物が地球に与える影響として、主に以下のようなものがあります。

  • 電子廃棄物の不適切な管理は地球温暖化の要因に。適切な管理がなされず廃棄された冷蔵庫やエアコンにより、これまでCO2換算で計9800万トンの温室効果ガスが大気中に排出されている。
  • 公害については、電子廃棄物の大半が焼却や埋め立て処分されると、有毒ガスが排出される(水銀、鉛、フロンなど)。これらは生物多様性にとって大きな問題で、他にも大気汚染や、水質・土壌汚染の原因にもなる。例えば電子廃棄物の焼却で残る難燃剤や重金属が土壌に染み込むと、地下水や作物が汚染される。重金属によって土壌が汚染されると、作物がその毒を吸着しやすくなり、病気や各種収穫量の減少を引き起こす可能性も。
  • こうした状況の危険な点は、例えばインターネットサービスにおけるサーバーのように、環境負荷を知らずしらずのうちに、何らかの形で自分以外の誰かに押し付けていること。さらには、電子廃棄物の処理をする国が数少ないため、われわれにはその影響が見えない。東南アジアでは大量の電子廃棄物が「処理」という名目でインドネシアに送られているが、サステナビリティの観点で適切な方法で電子廃棄物を処理する準備ができていない国に送りつけるのは大きな間違いであり、その結末は悲惨なものになる(後述のガーナの例を参照)。

e27では、インドネシアの電子廃棄物危機について説明するため、ジョグジャカルタの状況を紹介する予定です。また、あまり話題にはされませんが、プノンペンの状況も深堀りする価値があると考えています。

健康への影響

有毒ガスの排出は、私たちの健康にも害を及ぼします。水銀、鉛、カドミウム、ポリ臭化難燃剤は特に、脳、心臓、骨格などに悪影響を及ぼします。

また、人体、神経、生殖器系にも大きく影響し、病気や先天性障害を引き起こす可能性もあります。ごみ処理施設で燃やしても、当然改善には至りません。

電子廃棄物が引き起こす健康問題をここで全て列記するのは難しいですが、もっと詳しく知りたい方は、電子廃棄物が原因の病気に関する中国の状況について書かれた「disaster in the making」をご覧ください。

社会的な問題

ここまでに触れた問題の数々は結果として、違法なリサイクルや資源回収で得られた稼ぎをめぐる対立など、社会的な問題につながります。事実、一部の国では、政府の管轄外で経済が動いているところもあるのです。

市場の緊張とサプライチェーンの混乱が起これば、電子廃棄物処理が原因でないにしろ、危機的状況に陥ります。

ガーナのアグボグブロシーの状況を見れば、それは明らかです。子どもたちは電子廃棄物の山で働くために、健康が損なわれたり、家族から連れ去られたりしている現実があります。

電子廃棄物の不適切な管理に関する説明を締めくくる前に、一つ付け加えさせてください。それは、電子廃棄物それ自体は問題ではなく、むしろ解決策の一部になり得るということです。実際に、電子廃棄物に隠された価値を見てみましょう。

2019年に世界で廃棄された電子廃棄物に含まれる原材料の価値は、約570億ドル(約6兆2400億円)相当だったと聞いたら、信じられるでしょうか?

この数字は、「世界のE-wasteモニター2020」で報告されているのです。

電子廃棄物の価値を示す数値は他にもあります。ドイツの統計会社スタティスタ社の推定によると、通常1トン分の電子基板の金含有量は、アメリカで採掘される金鉱石の40~800倍にのぼります。銅の場合は30~40倍です。

これらを見れば、その価値を分かっていただけるはずです。

仕組み全体の立て直しが急務

この記事は、電子廃棄物の危機的な状況を伝える導入的な内容でした。具体的な解決策は別の機会で詳しく言及しますが、その一部をここで少しご紹介しましょう。

  • 節制:企業も消費者も同様に、電子機器の消費を減らす。
  • サステナブルなデザイン:メンテナンスやリサイクルが簡単で柔軟なデザインの機器やソフトウエアを設計する(Fairphoneが好例)。
  • 透明性:ハードウエアメーカーが製造工程やリサイクルの透明性を高めるよう、消費者から意見発信する。
  • 政府の介入:ごみ処理施設やインフラ、法的枠組みの整備は、政府がリードして行うべき内容。現在、日本と台湾はこの分野の取り組みで先進的な国だ。しかし、不適切な現状の仕組みを単に止めればいいというものではない。電子廃棄物の規制は国や地域による公的なものでなければ、うまく機能しない。政府の介入については今後、シンガポールを例に詳しく紹介する。
  • イノベーション:現在、電子廃棄物は簡単にリサイクルできるものではない。電子廃棄物の中の価値ある資源を取り出しやすくなるイノベーションが生まれるかもしれないが、それは、待つべきではない最後の手段。何より、それ自体で廃棄物が増えるという状況が解決されるわけではない。

e27では、今後は上記の他にも、考えうる電子廃棄物の解決策をさらに詳しく解説します。明らかなのは、電子廃棄物を減らすには仕組み全体を見直すとともに、人々の意識を変える必要があることです。その場しのぎの対応は、長期的な解決策にはならないのです。

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