求められるサステナブルな航空燃料。解決の鍵を握るのはメタン。

[Publisher] Waste Dive

この記事はWaste DiveのSheila Remesが執筆し、Industry Dive Content Marketplaceを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@industrydive.comにお願いいたします。

※この記事はシーラ・レメス氏とジョン・プラザ氏の2名による寄稿記事です。シーラ・レメス氏は、世界最大手の航空・宇宙機器開発企業であるボーイング社の環境サステナビリティ担当副社長。ジョン・プラザ氏は、アメリカ・オレゴン州ベンドに拠点を置くSkyNRGアメリカズ社の社長兼CEO。両名は、北米全域でSAF(持続可能な航空燃料)専用の製造施設の建設に注力しています。

※寄稿された記事は、『Waste Dive』の編集としての立場を反映したものではありません。

航空業界は新たな転機を迎えています。地球規模の気候危機に対して社会全体の関心が高まるなか、同業界でも2050年までのCO2排出量ネットゼロ(実質ゼロ)達成を目指し、新たな取り組みが進められています。

例えば、23カ国のリーダーたちが、CO2排出量の削減と持続可能な航空燃料(SAF:Sustainable Aviation Fuel)の開発を約束する「International Aviation Climate Ambition Coalition」を結成しています。他には、ホワイトハウスが、アメリカ航空業界のネットゼロに向けて複数の省庁によるロードマップを発表しています。

航空業界は、世界のCO2排出量の約2〜3%を占めています。脱炭素化が難しい産業であり、電気や水素を動力源とする航空機の普及は、数十年先の見込みとなっており、排出量はこれからも上昇すると予想されています。 

では、短中期的にアメリカを始めとする航空業界の、サステナブルな未来を実現するための現実的な打ち手とは何になるのでしょうか。その答えの一つがメタン、具体的にはバイオガスのメタンから得られるSAFだと考えられています。

2021年に開催されたCOP26(国連気候変動枠組条約第26回締約国会議)では、100カ国以上が「グローバル・メタン・プレッジ」に署名し、2030年までにメタン排出量を30%削減することを宣言し、注目されています。メタンは放出されると、20年間はCO2の少なくとも80倍以上の熱を大気中に閉じ込める力があると言われています。CO2排出量を制限する場合と比較すると、メタン排出を制限することは、短期間で大きな温暖化抑制効果を得られる可能性があると考えられています。

バイオガスのメタンを原料とするSAFというのは聞き慣れないかも知れませんが、二つのメリットが同時に得られます。一つは、埋め立て地や農業地域、排水処理施設などから大量に供給される材料を利用し、化石燃料に代わる低炭素燃料を製造できること。アメリカの埋め立て地だけでも、2019年に大気中に放出されたメタンはCO2換算で推定1億1450万トンにのぼり、アメリカ国内のメタン排出量の17%以上に相当します。二つ目は、大気中へのメタン放出量の削減と、フライトによるCO2排出量緩和を同時に実現できることです。

バイオガスのメタンを回収してSAFに利用することで、CO2排出量を削減するだけでなく、バイオガスの持続的な管理と再利用を含めた経済の好循環を生み出します。これこそ、「持続可能性(サステナビリティ)」の定義そのものです。

また、メタンを原料にしたSAF生産は商業的に実行可能であることも重要なポイントです。SAFは「絵に描いた餅」のような技術ではありません。技術の進歩により、バイオガスのメタンをエネルギー効率の高い燃料へと高効率に変換することが可能になったのです。規模拡大のための次のマイルストーンとして、インフラ資本、政府系ファンド、官民パートナーシップが、廃棄物業界の大手企業やプロジェクト開発者と連携し、バイオガスのメタンによるSAF生産を広げていくことが期待されます。この有望なソリューションへの投資は、メタン排出量を削減し、競争力のある価格設定と規模で全米に導入可能な「将来を見据えた」SAFの開発において、重要な役割を果たすことになるでしょう。

この建設的な解決策は、SAF市場全体における顕著な動向を背景に生まれたものです。例えば2021年には、使用済み食用油から農業廃棄物などあらゆる原料のSAF生成と使用を拡大するべく、航空業界の関係者から30以上のパートナー提携や取り組みの構想が発表されています。最近は世界の航空メーカー7社の技術責任者が、政策立案者、研究機関、サプライヤー、燃料メーカー、空港に対して、航空業界の持続可能性に向けた課題解決のための行動を呼びかけました。SAFの迅速な導入は、今回の発表の重要な部分を占めています。

こうした業界の実行力には期待が高まりますが、スピードがすべてではありません。航空業界にとって最も持続可能な解決策に重点を置きつつも、例えば食料生産など、他の必要な用途に取って代わらないような原料を使用することも考慮に入れる必要があります。急速な発展により、航空業界の脱炭素化に着手し始めましたが、業界の未来は長期的な解決策にかかっていると言えるでしょう。

旅行好きな人は、気候対策における率先した取り組みも求めています。バイオガスのメタンから作られるSAFの生産規模を拡大するには、メタン回収施設のネットワークの中心となる廃棄物業界の賛同が必要です。SAFの需要が高まる中、航空業界、廃棄物業界、再生可能エネルギー業界がこれをチャンスと捉え、パートナー提携を組み、持続可能な航空機への移行を支えるWin-Winの戦略に投資することが不可欠となっています。

環境エネルギー事業・サービス

法人のお客さま向け事業・サービス

サステナビリティ

ページの先頭へ

ページの先頭へ