古いオフィスを住宅に。アメリカ・ワシントンD.C.の不動産開発事情

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[Publisher] Digital Journal

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アメリカの首都ワシントンD.C.の中心、ホワイトハウスから数ブロック離れた場所に、かつて米国司法省がオフィスとして使用していた建物があります。一見地味なこの建物が、数百人も居住できる住宅に改装されることになりました。

この空きビルの用途転換は、2021年にアメリカの不動産市場を席巻した「アダプティブ・リユース(適応型再利用)」プロジェクトの一つで、経営不振に陥ったホテルやオフィスを開発業者が買い取りマンションにする計画を発表したものです。

「オフィスとして存続させるより、転用することで価値を高めることができると市場全体が認めたのです」と、フォルガ―プラット社のマネージングディレクター、マイケル・エイブラムス氏は語ります。同社は、ニューヨーク通りにある14階建てのビルを255戸のマンションにするプロジェクトを進めている不動産開発会社です。

不動産情報サービス「RentCafe」が実施した調査によると、2021年、アメリカでは約2万100戸のマンション(アパート)が古い物件から改装された「コンバージョン物件(用途転換)」で、その数は前年のほぼ倍になっていることが分かりました。

コロナ禍が始まって約2年、オフィスから人が消え、土地の所有者や地元企業が苦境に立たされて以来、都心部の様相は一変してしまいました。しかしコンバージョン物件は、アメリカの都心を再開発する手法として有望です。

「賃貸オフィス市場の回復は遅れており、空き物件を維持するコストは高くなる一方です」と、エイブラハム氏は語ります。

特にワシントンのように、家賃の高さで有名な都市では、コンバージョン物件が低価格住宅不足を解消する役割を果たすかもしれません。

「市場全体を見ると、住宅の供給量を増やすことが求められています。そうすれば住宅価格の高騰も緩和され、家賃も下がるでしょう」と、全米不動産協会のチーフエコノミストであるローレンス・ユン氏は説明します。

- アメリカにおける家賃相場の高騰 -

NARのデータによると、新型コロナウイルスの感染拡大によって景気が後退したものの、中古住宅価格の中央値は2021年の間に15.8%上昇、供給量は同年12月までに過去最低となり、コロナ禍以前から低価格住宅の不足傾向は鮮明となっています。

2017年時点で、米国会計検査院(GAO)により、収入の30%以上を家賃に充てている「家賃負担が大きい」と分類される居住者は全体の48%で、この数字は過去16年間で6ポイント上昇していました。

一方、オフィス物件は供給過剰な状態にあります。「1980年代に建てられたビルが多く、企業にとっては古すぎて魅力的ではない」と、ブルッキングス研究所のトレイシー・ハーデン・ロー氏は指摘します。

ファイルキャビネットを置くスペースなど、現代のニーズには適さない設計が基本となっており、「建物自体が時代遅れになってしまっています」と、彼女はインタビューで語っています。 

– 相次ぐオフィスビルからの撤退 –

ニューヨーク市のオフィスビルをマンションに転換した実績を持つローズ・アソシエーツ社の最高投資責任者マーク・アーリック氏は、こうしたプロジェクトは、好立地物件であることが多いと言います。

かつて電気通信会社のAT&Tが使用していたオフィスビルを「人々が住みたいと思える場所」に改築するというプロジェクトは、彼の会社で手がける最新の取り組みの一つです。

屋根付き駐車場などの設備がないため、商業テナントが入る可能性は低かったと、アーリック氏は言います。

リノベーションしたマンションは、入居者のほとんどが在宅勤務を続けることを想定し、コワーキングスペースを併設する予定だということです。

ワシントンD.C.では現在、政府がかつて借りていた物件を、開発業者が次々と買い取っています。

その中に含まれるのが、国務省が使用していたオフィスビル「The Wray(レイ)」で、現在は全面改装して住居用マンションとして生まれ変わっています。

ロビーに敷き詰められた建設当時のタイルと、ここを使用していた国務省のオフィス名が記載された名簿だけがかつての面影を残しています。

「こうしたビルに再入居する商業テナントの数は激減しており、不動産業界にとっては悩みの種ですが、同時にチャンスでもあるのです」と、エイブラムス氏は説明します。

「アダプティブ・リユース」プロジェクトでは、かつて共用だった建物に、新たに個別のお風呂やトイレを設置するなど費用のかかる改修が必要になるため、賃料が高くなる傾向にあるとロー氏は言います。

供給を拡大することで、住宅市場の賃貸料の価格圧力を緩和する効果があると分かっているものの、「これは本当の解決策にはなっていない」と、彼女は付け加えます。

「オフィスビルが立ち並ぶような都心部を、活性化させることにはつながると思います」 。

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