酵素を使った新技術「バイオリサイクル」が、プラスチックリサイクルを進化させる

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[Publisher] Fast Company

この記事はFast CompanyのAdele Petersが執筆し、Industry Diveパブリッシャーネットワークを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@industrydive.comにお願いいたします。

フランスを拠点とするスタートアップ企業、カルビオス社のとある研究で、飲料ペットボトルやポリエステル製の衣服に含まれるPET(ポリエチレンテレフタレート)樹脂を粉砕したものに水と酵素を混ぜ、加熱して撹拌(こうはん)しています。すると、わずか数時間でプラスチックを分解、モノマーと呼ばれる最小単位の要素にした後、さらに分離・精製することで、新品同様のプラスチック素材として使用できるようになるそうです。同社はこのリサイクル技術の初の実証用工場も建設しています。

「弊社の技術ではあらゆる種類のPET廃棄物をリサイクルし、無限に循環できるのです」と、副CEOのマーティン・ステファン氏は語ります。この「バイオリサイクル」は、加工するたびに素材が劣化する従来のリサイクル技術とは異なり、品質を落とさず繰り返し使用できるのが最大の特徴です。この方法で作られた透明な新品のペットボトルは、原料が古着や汚れた食品トレーの混合物であっても、石油から作られたものと同じような見た目と性能を持ち、「最終製品は石油化学材料のPETと同じ品質になる」とステファン氏は語ります。

既存の方法では染料を除去できず、透明なプラスチックにリサイクルできない色付きのペットボトルも、この技術で命を吹き込むことができます。さまざまな種類の廃棄物を処理することで、プラスチックのリサイクル量を増やすことができると考えている同社。これは、プラスチック廃棄物の増加を食い止める上で重要な取り組みです。この対応を迫られている製造業者にとっても、リサイクル容器の使用を拡大するという目標に対する解決策になりえます。現在、こうしたリサイクル素材は、需要が供給を上回っている状況です。

一例として、ネスレは2025年までに米国内の包装材に再生プラスチックを50%使用する計画を進めています。2019年の初め、ネスレ社、ペプシコ社、サントリー食品社は、ロレアル社とカルビオス社との共同事業体(コンソーシアム)に加入し、このリサイクル技術の早期市場投入を支援しました。これらの企業は、資金やノウハウを提供することでスタートアップ企業を支援しています。

「とにかくリサイクル原料の供給を増やすのが重要ですが、その目標を達成するには既存技術では不十分なことも分かっています」とステファン氏は語ります。「今は質も量も圧倒的に不足しています。現状で再利用できずに価値がないとされている廃棄物をリサイクルに回すことで、必要な量を確保できるはずです」。

ステファン氏によると、ヨーロッパでは毎年約100万トンのPET製食品容器が市場に出回っているものの、リサイクル率はゼロに近いそうです。その理由は、トレーが食品で汚れていることと、プラスチックの構造上、ペットボトルの原料としてリサイクルしにくいこと。しかしカルビオス社の技術により、リサイクル業者がこうした廃棄物を処理できるようになります。一方で、透明なペットボトルのようにリサイクルしやすいものでさえゴミ箱行きになるのが一般的な国もあります。消費者が素材に価値があることを理解すれば、リサイクル率が上がるかもしれません。「プラスチック廃棄物は貴重な原料だと知ってもらえたら、人々の行動も変わると思います」とステファン氏。「そのためには教育的な努力と、回収・分別のインフラへの投資が必要不可欠です」。

カルビオス社の技術が生まれたのは埋め立て地からです。その近くに置いたプラスチック片が、時間の経過とともに部分的に分解されるのを確認し、その場所の土壌の生態を研究することから始めました。すると土壌に含まれる微生物が進化し、酵素を使ってプラスチックを分解していたのです。自然分解の過程には時間がかかり、数日かけて分解されるのはごく一部のプラスチックだけでした。そこで科学者のチームは、酵素の働きを速められるよう研究に取り組みました。「ダーウィンの法則によれば、プラスチックのような炭素源が環境に存在する場合、微生物はその炭素源を消費するために進化するのです」と彼は説明します。さらに「問題は進化を遂げるまで何百年もかかること。プラスチック汚染問題を解決するのにそれほど待てません。そこで酵素の最適化を行い、自然の進化を人工的に加速させたのです」 と語りました。

複数のスタートアップ企業が新世代のリサイクル技術の開発に取り組んでいますが、カルビオス社によると、バイオを用いたリサイクルには化学的な方法にはない利点があるそうです。この技術は、他の技術と比べて低温で処理するので、エネルギー消費を抑えることができます。また、溶剤も使用せず、幅広い種類の廃棄物を処理できるのです。

2019年初めには、同社は新しいプロセスを用いて100%リサイクルされたペットボトルを製造できることを実証しました。そして初の実証プラントも2021年に開業しています。この技術はPET樹脂メーカーにライセンス許諾され、石油からプラスチックを製造する既存工場に組み込まれる予定です。カルビオス社の規模が拡大すれば、石油系プラスチックと直接競合できるコストになると期待されています。「このプロセスは、石油化学製品に匹敵する可能性があると確信しています。もちろん、時間も経験も必要です。PET業界には何億トン分もの経験と40年の歴史があります。私たちは、そこに追いつく必要があるのです」とステファン氏は語りました。

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