今あらためて注目される資金調達「セール&リースバック」~アメリカの事例~

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[Publisher] CFO Dive

この記事はCFO DiveのTed Knutsonが執筆し、Industry Dive Content Marketplaceを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@industrydive.comにお願いいたします。

今、世界中で需要が大きく伸びている「セール&リースバック」。グローバルな資産運用会社コリアーズ・インターナショナル社のシニアバイスプレジデントを務めるパトリック・ジェット氏によると、セール&リースバックは企業の資産を現金化し、成長に向けて自由に使える資金を調達する絶好の機会を生み出すものだそうです。

セール&リースバックとは、自社で所有しているオフィスなどの不動産を売却し、新しいオーナーと長期的なリース契約を結ぶ取引のことです。取引時の交渉に基づき、リース期間中の不動産の賃料や使用方法に変更が生じることはありません。不動産が売却された場合、リース契約は新たな所有者に移管されます。

アメリカで需要が高まっている背景には、アメリカの不動産ファンドや不動産投資信託(REIT)が投資しようとしているものの、見合う物件が限られているという状況があります。ジェット氏によれば、需要に見合うだけの十分な投資適格の商品がないのだといいます。それに加えて、短い期間で高い内部収益率(IRR)を出すことを目的に契約を結んだ企業からの預り資金であれば、短期的成果が求められるため、より選択肢が狭まります。

セール&リースバック契約は、資産やポートフォリオの規模や範囲にもよりますが、通常45~60日の比較的短期に完了でき、リース期間は10~20年の契約が多くなります。

この分野を専門とするB+E ネットリース社の調査によると、2020年第4四半期(10-12月)以降、セール&リースバック取引へ関心のある企業が20%増加しました。その取引の多くは、2022年の第2~第3四半期(4-9月)に完了する見込みとのことです。

セール&リースバックを利用して資産を現金化し、他企業を買収したり株式上場の準備金に充てたりしている企業が増えているとジェット氏は指摘します。未公開株式を専門とする投資会社もこの分野で活発に活動しており、EBITDA倍率(企業価値を算出するために、EBITDAなどの複数の指標を用いた評価方法)に基づき買収が行われています。

セール&リースバックへの魅力に拍車をかけているのは、還元利回り(不動産などの資産価格と資産から得られる純収益の比率)が歴史的な低水準にあることも挙げられます。アメリカの産業市場の一部は3%未満、大抵は5%未満の傾向にあるとジェット氏は言います。

また専門家は、倉庫は特に魅力的な資産だと指摘します。建設される施設数が増える一方、サプライチェーン危機の中でもいまだに需要に見合うだけの商品がないためです。

セール&リースバックの契約を結ぶ際には、複雑な要素も検討する必要があります。その一つは、改正された米国会計基準です。従来は、リースに伴う債務は営業経費として計上されていましたが、改正後の基準ではファイナンスリースと同じように貸借対照表に計上することになります。

アメリカのFTIコンサルティング社でシニアマネジングディレクターを務めるジャン・ブロドウィン氏によると、金利が上昇すると、セール&リースバックのメリットを十分に享受できる余地が小さくなるそうです。

資産価値はキャッシュフローに基づいて測られており、金利が高くなれば、自己資本として得られる現金が減ってしまうのです。

それでも、現金の優先度が高い限り、セール&リースバックは現金調達をして自己資本を得るための手段として、コスト効率の良い方法でしょう。

「市場が好調で、キャッシュフローに比べて不動産の価値が高い場合は、不動産の所有者はこの戦略によって収入と流動資本を得ることができます。それを元手に他の投資や株主配当を行ったり、株式を買い戻したりするなど、事業上の他の用途に活用することができるのです」とブロドウィン氏は語ります

また、不動産の価値が帳簿価額(物件の取得原価から、それまでの減価償却費を差し引いた金額)を超える程度まで、企業の貸借対照表を改善できるという点もセール&リースバックのメリットだと付け加えました。

商業不動産アドバイザーのヴォイトワークス・グループによると、セール&リースバックは買い手の企業にとっても、融資を行うより大きなリターンを得られるチャンスだといいます。

「セール&リースバックはローンとは見なされないので、アメリカの利息制限法が適用されません」と同社は述べています。「セール&リースバックの買い主は、不動産所有者に対して従来の抵当貸し付けを行った場合よりも、投資額に対して高いリターンを得られます」

企業が核となる事業に資金を再配分し、より良い収益率を実現できるという点で、セール&リースバックはとても魅力的な方法だと同社は称賛しています。

また売り主の視点からは、リース料の動向は通常、販売価格の動向に遅れるため、資産価値を最大化しながら有利な稼働コストを考慮することで、交渉に有利になると同社は述べています。

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