未来のオフィスは「柔軟さ」がカギを握る

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[Publisher] Digital Journal

この記事はDigital JournalのDIRTTが執筆し、Industry Diveパブリッシャーネットワークを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@industrydive.comにお願いいたします。

この記事は、DIRTTが運営する設計・建設業界の見解を共有する論説プラットホーム「Make Space」に掲載されたものです。

「オフィスの時代はもう終わりなのか?」──これは米国・事業用不動産業界のオピニオンリーダーであるティム・ケイ氏が、最近よく受ける質問です。それに対する彼の回答は、「その通りです。少なくとも私たちが知っている職場の形はもうありません」。

ケイ氏は、事業用不動産サービス会社のジョーンズ・ラング・ラサール社(JLL)において、五大湖地域担当のマネージングディレクターとして、米ミシガン州デトロイトを拠点に活動しています。彼は、新型コロナウイルスの登場で変わってしまった仕事環境を踏まえ、CRE(Corporate Real Estate:企業の不動産活用)の再生が起こると考えています。

「オフィスがなくなることはありませんが、形や外観も違ったものになる」とケイ氏は言います。コロナ禍やテクノロジーの進化により場所にとらわれず働けるようになった現代社会に伴い、オフィスのあり方も変わっていくでしょう。

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写真提供:DIRTT

2007年にJLLに入社するまでの14年間、世界的な家具メーカーでの勤務経験を持つケイ氏。オフィスのデザインと機能性に関する洞察は、業界での数十年にわたる個人的かつ専門的な経験に基づくものです。彼の父親が大工を経てゼネコンに勤めていたこともあり、建築への好奇心は昔から人一倍高かったのだとか。

「私は常に、モノがどのように設計され、構築されるのか、その背後にあるメカニズムを考えるのが好きでした」と、ケイ氏は語ります。

彼は現在、建物や空間の開発、設計、建設を統括し、ホテルや医療施設から、企業・学校まであらゆる種類の建築に携わっています。今後の働き方が変わることは必然ですが、この変化に対応する空間設計について、顧客からの相談に乗ることも仕事の一部です。

以前に勤めていた企業が1960年代に初めてキュービクル(半個室)式レイアウトを導入した時、ケイ氏は次のように感じたそうです。

柔軟なオフィスを実現するためのプレハブ工法※1やモジュラーデザイン※2も、こうした変化に該当します。ケイ氏は「本当に必要なのは、ニーズに合わせて簡単に拡張・縮小し、流動的に動くことのできる空間だと人々は気づき始めています」と語ります。

※1プレハブ工法:工場で建材を加工し、組み立てた部材を建設現場で組み立てる工法

※2モジュラーデザイン:互換性が高い部品を事前に設計しておき、それらを組み合わせて多様な製品を設計する手法

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写真提供:DIRTT

新しいハイブリッドなオフィス空間

オフィス空間に柔軟性を持たせるための改修は、以前から進んでいました。企業はすでに、従業員のエンゲージメントや満足度、生産性を高める方法を模索していたのです。

この傾向に拍車をかけたのが新型コロナウイルスの感染拡大です。さまざまな企業が、従業員はオフィス勤務の再開に抵抗を感じていると気づいています。「以前から、空間をどのように利用するかについては多くのトレンドがありました」とケイ氏。「コロナ禍がそれを加速させたのです。当初は在宅勤務を認めていなかった企業でも、今はそれが現実だと認識を新たにしています。Shopify、Twitter、Slack、Microsoft、フランスの自動車メーカーPSAなど、世界中の企業が在宅勤務を増やすためにポリシーを変更しています」と説明します。

S&Pグローバルマーケットインテリジェンスの最近の調査によると、調査対象となった組織の約80%が「コロナ禍をきっかけに在宅勤務制度を導入または拡大した」と回答し、67%が「これらの制度は継続的に維持される可能性が高い」と答えています。

在宅勤務とオフィス勤務の両方を考慮に入れたハイブリッドなオフィス空間について、リビングルームを集めたような「ソフトな空間」が増えるのではないかとケイ氏は話します。従来の固定座席の数が減り、自由にミーティングなどができるコラボレーションエリアが増え、個室のあるオフィスを想像してみてください。

「広いフロアに、コの字型のリビングルームのようなものをいくつか配置したデザインを見たことがあります。固定座席は縮小して移設されていました。代わりに仕切り付きの勉強机に似たデスクや、小さな電話ボックス、ミニ会議室などが配され、集中して仕事ができます」と、ケイ氏は続けて語りました。

このようなレイアウトは、週に何日かは在宅で残りはオフィスで過ごすという、ハイブリッドな働き方にも対応しているそうです。職場はよりクリエーティブな環境になり、企業文化を育む場となるでしょう。

ケイ氏は「オフィス自体はむしろ必要不可欠なもの。人々が学び、共同で作業し、文化が形成され、育まれる場だからです」と言います。「人と会うことは重要です。オフィスにいて、他の人の会話を耳にするだけでも多くの気づきや学びを得られます。共有した一つのアイデアが別のアイデアにつながり、さらに別のアイデアが加わって、企業や業界を変えるようなインパクトのある素晴らしいイノベーションが生まれる可能性があるのです。これはZoomのミーティングだけでは起こらないことでしょう」 。

テクノロジーが実現するシームレスな移行

また将来的には、自宅や職場で仕事に取り掛かる方法など人々の働き方に関わる行動を、テクノロジーが変えていきます。 

ケイ氏は、「今後、働く人々にとって最も重要なことは、テクノロジーの力を借りて、働き方が完全に、かつ、気づかないうちに大きく変化していくことでしょう」と語ります。

「自宅から会社に出勤しても、同じように仕事を再開したい」「顧客先に向かう時や国内外への出張時に、テクノロジーと通信機能を駆使して途切れ目なく作業を継続したい」といった要望が、より増えていくはずです。

職場環境ではオンライン会議のためのスペースを拡大し、リモートで書類にアクセスするためのクラウドベースのプラットホームを用意するなど、従業員がどこにいても同僚やクライアントとつながるための機器やシステムが必要になります。

「何よりも重要なのは従業員の就業体験であり、それをサポートする空間が必要なのです」と、ケイ氏は語りました。

サステナビリティ

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