ドローンが心停止患者にAEDを届ける

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スウェーデンのカロリンスカ研究所が、心停止状態の救急患者にドローンでAED(自動体外式除細動器)を搬送する試験プロジェクトの結果を発表しました。救急要請5件につき1回ドローンを出動させ、ほとんどのケースで救急車よりも早く目的地へ到着できたということです。この研究結果は学術雑誌『European Heart Journal』に掲載され、欧州心臓病学会でも発表されました。

「心停止の疑いがあると実際に警告された場所へドローンを使ってAEDを届けた研究結果を報告できるのは、世界で初めてのことです」と、ストックホルム南総合病院 臨床科学・教育部門の蘇生科学センター准教授兼カロリンスカ研究所 主任研究員のアンドレアス・クラーソン氏は語ります。

突然の心停止に陥った場合、1分1秒が勝負です。現在、病院外の心停止で助かる人は10人に1人と言われていますが、AEDを用いて電気ショックを与えるなど速やかな心肺機能蘇生(CPR)を実行することで、生存率を50~70%にまで向上させることができます。そのためにはまず、一刻も早く現場に急行することが重要です。スウェーデンの院外心停止(OHCA)の救急医療サービスの2019年の報告によると、心停止の通報から救急車の現場到着までに要した時間の中央値は11分でした。

カロリンスカ研究所では、OHCAの患者に早急に対応するため公立の救急医療事業社のSOS Alarm、現地企業のVastra Gotaland、ドローンサービス企業のEverdrone ABと提携し、救急車と並行してAEDを迅速に配送するためのドローン活用の検討を始めました。2020年の夏にスウェーデン西部のヨーテボリ市とクンゲルブ市で実施されたこの研究では、救急隊員、ドローンパイロット、航空管制官が協力し、円滑に対応するための統合的な連携方法が導入されました。

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4カ月にわたる調査期間中、心停止が疑われる通報53件のうち12件に対してドローンを出動させ、そのうち11件(92%)でAEDを現場に届けることに成功しました。そのうち7件(64%)はドローンが救急車よりも先に到着し、時間差の中央値は1分52秒でした。ドローンは中央値で3.1kmの距離を移動しましたが、周辺の混乱や被害はなかったそうです。なお今回のドローンの試運転は調査目的だったことから、患者への処置はすべて救急車が到着してから実施されています。

「実際AEDを使用するケースはありませんでしたが、現実の救急救命の場面において、ドローンが安全かつ望ましい精度でAEDを搬送できることが明らかになりました」と、ストックホルム南総合病院 臨床科学・教育部門の蘇生科学センター博士課程に在籍するソフィア・シアベク氏は述べています。「実用化を前提として今後心停止した人を助けるために必要なのは、AEDを送る側の人が率先して指示を出し、現場の人が患者に素早く装着できる体制を整えることでしょう」

搬送率と時間短縮を向上させるため、見直すべきところもあると研究者たちは考えています。例えば2020年時点で、夜間や雨天、風速8メートル以上の場合はドローンを飛ばすことができませんでした。また、ソフトウエアシステムが人口密集地の上空を避けるように設定されていたため、地理的に圏外となる通報も見られたそうです。

「調査完了後、いくつかの改善点が見つかりました」と、アンドレアス・クラーソン氏は言います。「2021年4月には新たに、最適化されたシステムによる追跡調査を開始しました。ここではドローンで対応する通報の件数を増やし、対応までの時間を短縮することで、救急車と比較した時間的メリットを改善できるかをテストしたのです。早期に治療を施さないと、生存率は1分ごとに約10%低下します。だからこそ、この新しい搬送方法が命を救う可能性があると信じています。」

調査報告書:
「Automated External Defibrillators delivered by drones to patients with suspected Out-of-Hospital Cardiac Arrest(心停止の疑いがある救急患者にAEDをドローンで搬送)」

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