スペインの街セビリア 廃棄オレンジから電力を作り出す「ロールモデル」に

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[Publisher] The Guardian

この記事はThe GuardianのStephen Burgen(バルセロナ在住)が執筆し、Industry Diveパブリッシャーネットワークを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@industrydive.comにお願いいたします。

春にはオレンジの花の甘い香りに包まれるスペイン南部の都市セビリア。ところが冬になると、街中にある4万8000本ものオレンジの木々から570万キログラムの実が路上に落ちてきます。歩行者にとって危険で、市の清掃課は頭を悩ませていました。

そこで、不要なオレンジから、まったく別の産物を作り出す仕組みが誕生しました。その産物とは、電力です。セビリアは、オレンジの実が発酵するときに生じるメタンを使って、クリーンなバイオガスを生み出す取り組みを試験的に開始しました。

地元の水道事業者Emasesaが計画する第1弾では、35トンのオレンジからクリーンエネルギーを生成し、市内の浄水場を動かすのに使うといいます。すでに有機物による発電に用いられている設備があり、オレンジはその設備に投入されます。オレンジを発酵させてメタンガスを回収し、それによって発電機を稼働させるという仕組みです。

「近いうちに、市内のオレンジをすべてリサイクルできるようになる予定です」とEmasesa環境部門のトップを務めるベニーニョ・ロペス氏はいいます(2021年2月現在)。その実現のためには、同市は約25万ユーロ(約3200万円)の投資を行う必要があるとロペス氏は見込んでいます。

「オレンジに含まれるフルクトース(果糖)は少数の炭素が鎖状に結合しており、この炭素鎖は発酵時にとても大きなエネルギーを生み出します」とロペス氏。「メリットは、コスト面だけではありません。私たちは、同市の悩みの種である廃棄オレンジから付加価値を創出しているのです」。

現時点では浄水場の稼働にこのエネルギーを使うことが目標とされていますが、最終的には、余剰電力を電力網に戻すことも計画されています。プロジェクトを運営する人々によれば、ゴミとして埋め立てられる果物や肥料として使われる果物が大量にあることから、非常に大きな可能性が眠っているといいます。試験的な取り組みにより、オレンジ1000キログラムで5世帯の1日分の消費電力量にあたる50キロワット時(kWh)の電力を生み出せることが分かりました。もし市内のオレンジがすべてリサイクルされ、その電力が電力網に戻されたとすると、7万3000世帯に電力を供給できることになります。

セビリア市長のフアン・エスパダス・セハス氏は、プロジェクトの始動を発表する記者会見の中で、「サステナビリティと気候変動対策において、Emasesaは今、スペイン国内のロールモデルとなっています」と語りました。

「浄水場では、飲用水と衛生的な環境を市民に提供するために電力の40%近くが消費されています。まずはこの施設に新たな投資を行っています」。

「このプロジェクトは、排出量の削減、エネルギーの自給自足、サーキュラーエコノミーという私たちの目標の達成に貢献するものです」。

木になっているうちはきれいなオレンジは地面に落ち、車に踏まれてつぶれると、道路は果汁でべとべとになり、ハエがたかって黒くなります。セビリア市は、オレンジ拾いに約200人のスタッフを雇用しています。

アジアに由来するビターオレンジは、およそ1000年前にアラブ人によってスペインに持ち込まれ、南スペインの気候に適応してきました。

「オレンジはこの地に根付いています」とセビリア市公園課の課長であるフェルナンド・モラ・フィゲロア氏は指摘します。「セビリアは世界最大のオレンジ園だともいわれています」。

セビリアでは1万5000トンのオレンジが生産されていますが、その大半はスペイン人が食べるわけではありません。このあたりで作られるオレンジの多くは英国に輸出され、マーマレードに加工されます。またセビリア産のオレンジは、コアントローやグランマルニエといったリキュールの主原料にもなっています。

ちなみに、マーマレードの誕生については、さまざまな言い伝えがあります。一説では、鉱業大手のリオ・ティントの作業員としてスペインの都市ウエルバ近くの銅鉱で働いており、19世紀末にスペイン最古のサッカーチーム「レクレアティーボ・ウエルバ」を創設した英国人らが由来だとされています。

ところが、スコットランド・ハイランド地方のサザランドにあるダンロビン城からは、1683年と記されたマーマレードの手書きレシピが発見されました。言い伝えによると、スペインからオレンジを運んでいた輸送船がスコットランドのダンディーに一時的に避難した際、地元のお菓子メーカーであるジェームズ・キーラーが、オレンジが食べられなくなってしまう前に加工したのが最初だといいます。これも作り話である可能性もありますが、キーラーは1797年に、初の消費者向けマーマレードブランドを実際に作っています。

いずれにせよ、スペインのオレンジが新たな歴史を生み出す日はそう遠くないのかもしれません。

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