消費者から選ばれる企業の条件は、経済性と社会性の両立か

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[Publisher] The Guardian

この記事はThe Guardianが執筆し、Industry Diveパブリッシャーネットワークを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@industrydive.comにお願いいたします。

パーパスドリブン(自らの存在意義、目的に忠実)な企業や生産者は、より良い世界を築きたいという目的に忠実なために、消費者の中に広く受け入れられ浸透しつつあります。サステナビリティ(社会の持続可能性)に重点を置いた製品やサービスを通じて、自らの存在意義を全うしようとしています。例えば「サステナブル・ワイン」という製品は、社会的影響や環境への影響を考慮しながら、従来の一流ワインに相当する質を実現することを目指しています。

より良い世界を築きたいという企業が発展していくことは、倫理的でありたい消費者にとって、心に響くということを示しています。こうした傾向から、私たちは未来の可能性について希望を持てるという理由を3人の有識者に尋ねました。

ビジネスリーダーや消費者の間では、サステナビリティは単に考えたほうがいいというだけではなく、必要不可欠なものであるというコンセンサスが高まっています。しかし、サステナビリティによい影響を与えるビジネスを明確に定義するのは、難しい問題です。植林、カーボンオフセット構想、先進的な社会政策、再生可能エネルギー発電に向けた取り組みなどの活動は、その一部に含まれます。ビジネスの成功を売上や利益だけで評価しない、思考の転換が求められています。

例えば、De Bortoli Wines(デ・ボルトリ・ワインズ)は、質が高く、かつ環境にも配慮した製品を生産しています。単なる一時的な流行ではなく、この先数十年にわたってワイン業界全体を形成する動きだと言えるでしょう。グリーンウォッシング(環境配慮をしているように装い、ごまかすこと)で表面を取り繕う企業が広がってはいますが、これからの環境問題や社会課題において、企業は重要な役割を果たすと専門家は指摘します。なにを、どこで、どのように消費するかを真剣に考えることで、私たち消費者も未来を作る一端を担うことになるのです。

消費者は広告ではなく「行動」を見たい

スージー・ベイズ氏(Guardian Australia パートナーシップ・慈善活動責任者):​さまざまな場面で世界の二極化が進む中、消費者は企業に対して立場を明確にすることを求め、曖昧な姿勢を通す企業を批判します。企業が社会をより良くしようとする姿勢は広く消費者に浸透し、今や企業への愛着を生み出す要因の一つです。53%の人が「あらゆる企業は、自社のビジネスに直接影響がないとしても、少なくとも一つは社会問題に関与する責任を持つべきだ」と回答しています。(エデルマン2019年の調査結果内の「CONSUMERS NOT CONVINCED OF BRANDS’ COMMITMENT TO SOCIETY」より)

ただし、単に取り組みや姿勢を表明するだけでは不十分で、実際に取り組んでいるかを透明性高く伝えることがより強く求められているということも明らかになっています。新型コロナウイルスの感染拡大の影響は多くの人々に及んでいますが、だからこそ、広告ではなく「行動」を見たいという動きが広がっています。​クリエイティブエージェンシー、Innoceanが2020年6月29日から8月22日までの間に2000人を調査した結果(2020 Life in the Times of Covid)によると、オーストラリア人にとって最も重要な企業の価値は、共感、寛大さ、透明性であり、これらは半年前よりも「はるかに重要」という認識に変わっているようです。

顧客とのあらゆる接点で企業の存在意義や目的を表明し、真摯(しんし)に世界を動かす行動を行い続けることで、ようやく信頼は築かれます。

利益を上げながらも環境意識に呼応した事業を継続するには、消費者の倫理性に応えることが非常に重要になります。​オーストラリアでは、Thankyou(サンキュー)、Who Gives a Crap(フー・ギブス・ア・クラップ)、Australian Ethical(オーストラリアン・エシカル)、Sendle(センドル)など、さまざまなパーパスドリブンな企業が登場しています。こうした企業が成功することで、既存の企業には、それ以上の取り組みが求められることになります。​国際的に見ると、パタゴニア、チョバニ、テスラなどの10億ドル規模の企業が、より良い社会を作る原動力として、社会の変革を主導しています。

「環境に優しい」と「高品質で高級」は両立できる

ヴィクトル・デ・ボルトリ氏(デ・ボルトリ・ワインズ社 エクゼクティブディレクター):気候変動と天然資源の不足により、ビジネスそのものの持続可能性が危ぶまれる中、環境に配慮したビジネスモデルの構築は緊急性の高い使命になりつつあります。農業そのものが生物多様性に悪影響を与えているという事実を目の前にして、環境スチュワードシップや再生農業などの考え方が世界的に普及しつつあります。

デ・ボルトリ・ワインズ社では、土壌や植物を健康な状態に維持することと、貴重な水資源を管理することが未来につながると考えています。こうした取り組みは、理念的な要素と実用的な要素の両方の側面で実施してきましたが、根底にあるのは、未来の世代によい世界を遺産として引き継ぎたい、という願いです。

弊社では、義務的な要件をはるかに超えて、さまざまな革新的取り組みを導入しています。省エネルギー化により、年間160万キロワット時(kWh)、300世帯相当の使用量を削減することができています。

ぶどう農園を改良することで、環境に対して優しくなるだけでなく、健康的なぶどうが育ち、質の良いワイン生産にもつながっています。その結果、収益性も改善しています。典型的な「ウィンウィン」の関係です。

倫理的な消費行動の広がりは、これらのウィンウィンを目指すサステナブルな取り組みが一時的な流行ではないことを示しています。わたしたちのサステナブル・ワインでは、醸造の過程において、いかに自制心を持ち自然への干渉を最小限に抑え、時間の経過とともに独自の個性を醸し出すワインを作れるかが重要なポイントです。これは、あらゆる高級ワインメーカーに共通するアプローチだと言えます。

こうしたサステナブル・ワインの影響が広がり、高級志向な富裕層の消費者でさえ、自分の消費行動が環境や社会に影響をもたらすことを自覚し始めています。サステナブルな方法で生産されたワインは、ぶどう作りから瓶詰めまでのワイン造りの職人技と透明性を同時に評価する新しいトレンドにぴったりで、消費者が意識的に選択できるようになっています。

収支を考えるだけではもはや不十分

サンドラ・クレンプル氏(トリリオンツリー社 最高経営責任者(CEO)):樹木は、地球上のあらゆる生命にとって、水の次に重要な存在です。樹木は、大気中の二酸化炭素を吸収して酸素として吐き出し、生物がそれを呼吸してまた吐き出すという炭素循環サイクルで欠かすことのできない役割を果たしているからです。樹木がなければ、地球上に現在のような生態系は存在しません。

憂慮すべきことに、文明の夜明け以降、地球上樹木の約50%が消失してしまいました。年間約150億本の樹木が消失しているのに対し、人間が植樹できる数は、最高でも年間50億本です。

​気候変動、つまり地球温暖化問題を解決するためには植林が重要であるという認識が世界的に広まっていますが、この分野でも企業が果たすべき重要な役割があります。

収支を考えるだけではもはや不十分なのです。企業は経済活動と社会活動を両立させなくてはなりません。これは消費主義から脱却する「共有価値の創造(CSV)」という概念です。

植樹活動は、共有価値の素晴らしい例です。デ・ボルトリとTrillion Trees(トリリオン・ツリー)をはじめとするパートナー提携は、樹木による二酸化炭素の吸収を促進するだけでなく、木を植え、育て、世話をするという共通の目的を地域社会に提供します。

事業を通じた社会課題への貢献

 

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