インパクト投資が急速に注目を集めている理由

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この記事はe27のe27.co/paul.meyersが執筆し、Industry Diveパブリッシャーネットワークを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@industrydive.comにお願いいたします。

2020年代に突入した今「インパクト投資」が広まっています。新型コロナウイルスを抜きにしても、インパクト投資は2020年代の投資戦略において不可欠なものとなっています。資金の力を生かして社会的に良い行いをするということが、急速な広がりを見せています。

米国に限らず、オーストラリアやシンガポール、中国など各国において、社会的影響を重視する投資ファンドが毎週のように新設されています。レディ・ガガやマット・デイモン、セリーナ・ウィリアムズといった有名人も、「社会的に良い行いをすることで業績を上げている」企業に投資を行っています。

さらに、ブラックロックやゴールドマン・サックス、KKRといった大手の資産運用会社やプライベート・エクイティ・ファンドも、2019年にインパクト投資を軸とするファンドを立ち上げました。

以前は、インパクト投資というのは、投資業界に属さない一般市民や一部の非政府組織(NGO)が、良い行いをしているものの収益が出ていない企業へ利益を求めず投資する慈善活動と認識されていました。

ところが、事態は急変しました。一体何が起きているのでしょうか。

インパクト投資とは

まずは、インパクト投資の定義から見ていきましょう。グローバル・インパクト投資ネットワーク(GIIN)では、「財務的リターンと同時に、測定可能かつポジティブな社会的・環境的インパクトを生み出す目的で行われる投資のこと」と定義しています。

インパクト投資は、その前身である社会的責任投資(SRI)やESG投資とは少し異なります。SRIやESG投資は、主に社会の持続可能性の観点でネガティブな企業を選別し投資しないようにするものです。一方でインパクト投資は、次の2点を同時に実現することを目標としています。

  • 社会や環境に関する課題への資金流入
  • 財務的リターンの創出

2020年代の今、企業や機関投資家、個人投資家の間では、こうした社会課題への取り組みが広まっています。GIINが世界全体を対象に行った調査によると、インパクト投資の市場規模は2018年末時点で5020億米ドル(約54兆円)に上り、2017年の倍近くになったと言います。現時点でも、この上昇傾向が終わっているとは考えられません。そして2020年代において、ますます拡大するでしょう。

では、なぜこれほど急激な変化を遂げたのでしょうか。それは、三つの重要な出来事が一挙に起こったことによるものと考えられます。

1.市民意識の変化

ここ数年で、地球上で私たちが直面している問題の大きさや範囲、緊急性にほぼ誰もが気付きました。気温の上昇だけではなく、海面上昇、大きな天災、飲用水の不足や大気汚染、ハチの大量死やコアラの激減をはじめとする動植物種の減少など、数え切れないほどの問題が生じています。

またグレタ・トゥーンベリ氏の運動に限らず、地球上に80億人近くの人々が住んでいることと、その影響の大きさについて、誰もが理解するようになっています。そして、この現実に向き合い、失望したり諦めたりするのではなく、個人投資家や機関投資家は積極的に問題解決に貢献しようとしているのです。

2.人類共通の目標であるSDGsによる企業行動の変化

第二に挙げられるのは、17の持続可能な開発目標(SDGs)の策定です。2015年後半に国際連合の加盟国によって採択されたSDGsは、2030年までを期間として、定量・定性的な指標と目標年を定めています。

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「貧困をなくそう(目標1)」「安全できれいな水とトイレを世界中に(目標6)」「気候変動に具体的な対策を(目標13)」などの目標に加え、各目標に紐づけられたさらに詳細な目標と行動は、数々の世界的な問題に対処するための共通のロードマップを示しています。

これらの目標は、これまでも必要とされてきた定義や枠組みを提示し、どう取り組めばよいかと悩んでいた人々の悩みを解決しました。つまりSDGsは、行動を起こすための論点や枠組みを提供したのです。

だからといって、SDGs以前に行われた重要な取り組みの価値が下がるわけではありません。国連はただ単に、目標を設定することで問題と課題の絞り込みと合意形成を図り、世界中のより多くの人々が取り組めるようにしただけなのです。

そしてこれは、驚くほどの成果をあげているといえます。これまで発表されてきた多くの国際的な声明とは異なり、SDGsの導入と実践は幅広い企業にとって事業計画における必要条件とされるようになったのです。都市や国、大学、大企業、中小企業などをざっと見てみると、SDGsを考慮した事業計画や予算配分、製品デザインが行われているようです。

筆者自身の身近なところでは、投資を求めるスタートアップの事業プレゼン大会でSDGsをべースにした事業提案が起こっています。筆者がこの1年で見てきた400社以上の東南アジア企業のうち半分は、事業計画書やプレゼンの中で、どのSDGsに取り組んでいるかに触れていました。

しかも、投資家を引き付ける客寄せパンダとしてではなく、事業上の不可欠な要素として位置づけられているのです。これは、ここ数年の傾向です。

3.インパクト投資の効果測定の確立

こうしたインパクト投資普及の第三の要素は、効果測定です。近年まで、インパクト投資には成果を測定する効果的な手段がないことが問題とされていました。

財務諸表なら誰もが見覚えがあり、それをどう活用すれば企業の財務上の健全性を知ることができるかも知っています。ところがインパクト投資には、そうした手法がありませんでした。

インパクト投資の実行性について社会的な合意形成を行うためには、会計でいうGAAP(米国会計基準)のようなものが必要でした。つまり、きれいな空気やジェンダーの平等、教育といった課題への投資が成功しているかどうかを知る手段を投資家に与える必要があったのです。

そうした手法の一つは、GIINとそのパートナー企業によって、この10年で開発されました。「IRIS+」と呼ばれるこのツールは、インパクト投資の評価指標と評価手法を統合し、インパクト投資の効果測定を可能にしました。

IRIS+が目指しているのは、「一般に公正妥当と認められたインパクト評価システム」、つまり米国会計基準のインパクト投資バージョンです。これにより、インパクト投資のさらなる拡大のための基盤が形成されます。

「市民意識の変化」「企業行動の変化」「効果測定の確立」という三つの組み合わせこそが、インパクト投資の拡大をもたらしているカギなのです。

これらを足がかりとして、私たちは、社会をより良くする企業へ資金が配分される社会をつくり、そのような企業を創設する人物を増やすことができます。そして、優れた業績と社会的に良い行いの両方を実現する社会を構築することができるのです。

今後の課題

この記事を執筆している時点(2020年4月)において、コロナ禍はまだ第一波の段階ですが、すでに数百万人の命が危険にさらされ、経済システムは混乱し、政治や公衆衛生の面でも新たな問題が生じています。

これから半年や1年後に私たちの暮らしがどうなっているかを予測するのは、あまりにも気が早いでしょう。投資動向について長期的な予想をする人も減っています。ですが筆者の考えでは、インパクト投資は今後数年でさらに一般的なものとなるでしょう。

コロナ禍を通して私たちは、予想もしなかった形で、世界は相互に依存しているのだと気付かされました。ウイルスはどのようにして国境を超えるのか、情報や支援はどのように国から国へと伝わっていくのか、これほど多くの人々が他国の状況に関心を向けたのはなぜか。SDGsの視点を通してこうした状況を見ると、ヘルスケアや治療へのアクセスは目標3(すべての人に健康と福祉を)、ウイルスの感染防止のための衛生は目標6(安全な水とトイレを世界中に)、家庭での教育は目標4(質の高い教育をみんなに)というように関連付けられます。

コロナ禍で明るみに出たこれら諸問題が、新たな解決策や事業アイデアを持つ若い企業にとっていかにチャンスになるかは明らかです。それは世界のどこにいるかは関係ありません。このような志をもつ企業は「インパクト投資」によって資金を調達することができます。

そうした事業アイデアの一部が、私たちが直面する大きな課題を解決しながらも事業として成長し、収益が上がるという姿は夢物語ではありません。これこそが、インパクト投資の本質なのでしょう。


本記事「インパクト投資が急速に注目を集めている理由」は、e27に掲載されたものです。


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