テクノロジーで中小企業の起業家精神を支援する

f:id:ORIX:20210420170421j:plain

[Publisher] e27

この記事はe27のLuc Hovhannessianが執筆し、Industry Diveパブリッシャーネットワークを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@industrydive.comにお願いいたします。

2020年11月時点の予測では、楽観的な見方をしても、今後数カ月の世界経済と国際貿易の見通しは暗く、不透明なままとなっています。国際通貨基金(IMF)が2020年10月に発表した世界経済の展望は、同年6月の予測を上回ったものの、2020年通年の世界経済は4.4%のマイナス成長になるとみており、世界貿易機関(WTO)も2020年の世界貿易は9.2%のマイナス成長を見込んでいます。これは同年4月に発表された12.9%の落ち込みから比べると多少持ち直しているものの、まだまだ明るい傾向とは言えません。なお、2021年1月段階ではマイナス3.5%となっています。

東南アジア諸国連合(ASEAN)の貿易にとってプラスとなるのは、世界的に先行きが不透明な中、ASEANと主要貿易相手国が地域的な包括的経済連携協定(RCEP)への取り組みを改めて表明したことでしょう。

RCEPが締結されれば、世界の国内総生産(GDP)の約3分の1近くを網羅することになり、国際貿易の継続的な発展、地域統合、地域全体の経済発展への強力な推進力となることが期待できます。

国際貿易への継続的な支援は、ASEAN各国政府にとって、地域の重要な中小企業部門を保護する上で重要になります。中小企業はASEAN経済を支える屋台骨であり、企業人口の約97~99%、雇用の60%以上を占めています。

しかし中小企業は、国際貿易ではその価値を適切に評価されていません。

中小企業の国際貿易への参入を妨げる最大の要因は、資金調達手段がないことでしょう。アジア開発銀行(ADB)によると、現在の国際貿易のための資金力格差は推定1兆5000億ドル(約164兆円)で、その半分はアジアおよびアフリカの発展途上国の中小企業との間によるものです。

世界経済フォーラム(WEF)では、この資金力格差が2025年までに2兆5000億米ドル(約273兆円)まで広がる可能性は十分あると分析していますが、この予測自体がコロナ禍より前に実施されたもので、その後の国際貿易はさらに悪化しています。

ASEANの中小企業が障壁を克服するための支援とは

オープンバンキングやプラットフォームから、モノのインターネット(IoT)、データ分析に至るまで、テクノロジーを統合することで、中小企業が国際貿易に参入し、資金調達の障壁を解消する機会を創出する動きが見られます。

グエン・ヴァン・ソン氏が経営するベトナム、ダラット地方のコーヒー農園、Son Pacamara(ソン・パカマラ)を例に考えてみましょう。ソン・パカマラでは、環境に配慮した自然な有機農法を採用していますが、この方法でコーヒーを栽培するのは難しく、コストもかかります。事業を維持するために必要な資金を確保することは重要な問題であり、グエン氏は地元のVietbank(ベトバンク)に相談しました。

ベトバンクはテクノロジーを活用し、グエン氏の過去の財務実績だけでなく、過去の収穫量を含むビジネスのあらゆる側面を考慮し適性だと思われる融資額を評価しました。この情報を元に、気候パターンや為替変動などの予測分析とデータに連動させ、事業の可能性と実行可能性を試算し融資を実現させました。

さらに、グエン氏はベトバンクのテクノロジーを活用して、事業運営のさまざまな側面でアドバイスとサポートを受けました。ベトバンクでは、最先端のフィンテックを活用し、事業者向けのグローバルな情報ネットワークにアクセスすることができます。これは、ビジネスのリスク分析にも役立ちます。

現在、ソン・パカマラは、韓国、英国、米国を含む世界中の顧客にコーヒーを販売しています。グエン氏とバイヤーは、エンドツーエンドのサプライチェーンを完全に可視化し、商品の現在地だけでなく、荷物の温度や湿度などの物理的要因も管理しています。そのため、すべての商品が完璧に近い状態で配送されます。

グエン氏とベトバンクの提携事業は、テクノロジーと情報に基づいた意思決定があれば、中小企業は起業家精神を発揮させ、グローバルなビジネスを構築できることを示しています。

テクノロジーは金融機関だけで活用されるのではなく、中小企業のデジタル化支援においても有効です。​2020年初め、Finastra(フィナストラ)は、Mastercard(マスターカード)とアジア開発銀行(ADB)と提携し、卸売業者向けの新しいデジタルクレジットビジネスの構築を支援しました。

このビジネスは、テクノロジーの応用を通じて、中小企業の取引のデジタル化を推進し、グローバルへの販路拡大を後押しするものです。インドネシアの500社の小売業者からスタートし、2021年第1四半期末までには、5,000社の小売業者に拡大することを目標に掲げています。

WTOでは、新型コロナウイルスの収束後も金融市場の信頼性が(コロナ禍の負の状態から)回復するには時間を要するため、中小企業の資金力格差がさらに拡大するのではないかと警告しています。各国政府は景気刺激策を導入し、資金繰りの問題に対して流動的な支援を行っていますが、中小企業の場合、コロナ禍という世界的な危機による衝撃からの回復力や柔軟性に欠けるため、今後も現実的なリスクは続く可能性があります。

東南アジアの政府や企業は、多国間貿易への継続した支援と参加に意欲的を見せていますが、現地企業が貿易金融へのアクセスを改善し、新しい環境の中で持続可能なビジネスを成功させるには、新しいテクノロジーの導入と適用を迅速に進める必要があります。


画像提供:Tim MossholderUnsplash)
本記事「新技術を活用したASEANの中小企業貿易の推進」は、e27に掲載されたものです。


中小企業の活性化

事業を通じた社会課題への貢献

ページの先頭へ

ページの先頭へ