コロナ禍で進むサプライチェーンのデジタル化

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[Publisher] e27

この記事はe27のIvan Seowが執筆し、Industry Diveパブリッシャーネットワークを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@industrydive.comにお願いいたします。

新型コロナウイルスの感染拡大により、世界経済はぐらつき、大きな影響を受けました。しかしそんな中でも、サプライチェーン・物流テックの分野は力強く成長し続けています。2020年に結ばれた融資契約は400件を超え、資金調達の活動は12%の成長率を維持すると予想されています(CBinsights2020Q2調べ)。

またコロナ禍で先行きが不透明な中でも、ロボットを活用したフルフィルメント(注文から配達までに必要な業務全般)やデジタルを駆使した貨物輸送、返品の最適化、在庫状況の事前予想などを手掛けるスタートアップは成長が見込まれています。

世界のサプライチェーンにおけるデジタルトランスフォーメーション(DX)の重要性は、投資家も間違いなく認識しています。テクノロジーを活用し、東南アジア全域でラストワンマイル物流サービスを手掛けるシンガポールのニンジャ・バンは2020年5月、投資家から2億7900万ドル(約306億円)の資金調達を実現しました。新型コロナウイルスの感染拡大以降、東南アジアのスタートアップとしては最大規模の資金調達のとなりました。

2020年11月の現在でも、サプライチェーン・物流分野のファンドにアジア全域で40億ドル(約4440億円)以上の投資が集まっており、ここに大きなチャンスが眠っていることは確かなようです。

またコロナ禍で、サプライチェーンの分散の必要性も浮き彫りになりました。独立性の向上や事業継続のため、多くの企業が世界に広がるサプライチェーンを分断したり、製造拠点を自国内に戻したりしているのです。ですがその一方で、サプライチェーンの深さや複雑さから深刻化したジレンマに陥っている企業も多くあります。

国をまたぐサプライチェーンはロックダウン(都市封鎖)により大打撃を受け、世界の需要と供給は落ち込みました。しかし、物流を途切れさせることなく維持するために、サプライチェーンのデジタル化によってこの分断に橋を架けることは今や必須であり、またこうした複雑なバランスを保つことも欠かせません。

デジタル化のメリット

グローバルサプライチェーンの確保においては、企業間の相互のつながりが重要になります。これは、打撃が頻繁に生じる中、それによる破壊的な影響を緩和するためです。

収益やコストなどの要素を検討するにはサプライチェーン全体の可視化が求められますが、多くの企業は理想には遠い状況にあります。デジタル化は、こうした状況の改善だけでなく、サプライチェーン全体における透明性も向上します。透明性が向上すれば、戦略的な意思決定とそのために必要なデータを得ることができます。

衛星技術やIoT端末、デジタル供給ネットワーク、人工知能、機械学習などの新興技術を取り入れれば、サプライチェーンの最適化のためにより大きな価値が解き放たれるのです。

コロナ禍は、サプライチェーンのデジタル化を後押ししたに過ぎません。各国政府は、サプライチェーン・物流分野のスタートアップに対する資金提供や助成制度に一層注力することで、デジタル化の後押しに積極的に関わっています。コロナ禍が起こるずっと前の2017年、シンガポール政府は、スタートアップのサプライチェーン・物流機能の向上支援を目的とした「サプライチェーン&ロジスティクス・イノベーション・プレイグラウンド(SCLIP)」の取り組みに280万シンガポールドル(約2億円)の予算を確保しました。

また最近では、シンガポール政府はコロナ禍の打撃に対応する形で、物流分野で働く約8万6300人の労働者が新しい職に就けるように支援する職業訓練を盛り込んだ物流業界デジタル計画の強化版を発表しました。同計画では、さまざまな成長段階にある中小企業へのデジタルソリューションの提供も盛り込まれており、約5300社が対象となります。

また東南アジアでは、数多くのレストランのほか、日用品を扱う家族経営のコンビニエンスストアまでもが店舗のデジタル化を進めており、外出自粛要請に対応しています。しかし店舗のデジタル化は、ほんの一部でしかありません。それと同じように大切なのは、商品が顧客に届くまでの工程が効率的で、コスト効率が高く、かつ管理しやすいということです。これらをすべて実現するには、デジタル化がカギとなります。

スタートアップの役割

スタートアップは、サプライチェーン・物流分野のイノベーションとデジタルトランスフォーメーションにおいて重要な役割を果たしてきました。

サプライチェーン一括管理システムを手掛けるシンガポールのテック企業Tramésは、運送会社と各社の物流パートナー企業のために、無駄のない統合されたワークフローを構築することを目指しています。すべてのステークホルダーをデジタルプラットフォームに参加させれば、効率はおのずと向上します。そして、従来は長く、手違いが発生しやすかった業務プロセスの短縮につながります。

同社が目指すのは、サプライチェーン全体に開かれたアプローチでデジタル化に取り組み、各社のデジタル分野の能力に関係なく、変革を実現できるように支援することです。

暗い雰囲気がただよう現在の市況により、スタートアップが失敗をおかすリスクは高まっています。そのため、スタートアップの生存を支えられる環境を作ることが極めて重要です。革新的なスタートアップをまとめ上げ、受け入れることで、サプライチェーンに関するデジタルソリューションの新時代を切り開くためのイノベーションの土壌を醸成することが可能になります。

未来を見据えて

コロナ禍により、あらゆる規模の企業がコスト削減に取り組んでいます。現在の状況において費用の確保やバランス維持も重要ではありますが、それと同時に未来にも目を向けて、強いサプライチェーンのエコシステムを築くことにも価値があります。

サプライチェーンインフラのデジタル化へ投資を始めるのは、必要不可欠です。またテクノロジーは進化し続けることを踏まえると、こうした投資は継続的に行う必要があります。

大企業は、自社の部門に対しこのような投資を行い、この分野における研究開発の資金確保とアイデアの創出を図ることが必要です。同じように同分野のスタートアップも、十分な資金調達と協働の機会が必要になります。スタートアップはさまざまな面で、同分野の新たな発展の最前線に立っているのです。

しかしこうした取り組みにおいて、スタートアップが単体で成し遂げられることはほとんどありません。スタートアップが継続的な支援のもとでイノベーションを起こし続けるには、民間企業や政府とのパートナーシップが大きな役割を果たします。

業界団体や政府、スタートアップを含めた業界全体が、未来のサプライチェーンのデジタル化という共通の目標の達成に向けて力を合わせれば、計り知れない成果がもたらされ、あらゆる面でメリットが生まれます。

本当の意味で持続可能、強靭かつ収益性の高いサプライチェーンを築き上げるという目標を達成するには、エコシステムを中心に据えたインクルーシブなアプローチこそが唯一の手段となるのです。

画像提供:Macau Photo AgencyUnsplash

本記事「サプライチェーンのデジタル化に投資すべき理由(原題:Why it is imperative to invest in digitalising the supply chain)」は、e27に掲載されたものです。

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