グリーン産業革命の現在地

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[Publisher] The Guardian

この記事はThe GuardianのAnna Turnsが執筆し、Industry Diveパブリッシャーネットワークを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@industrydive.comにお願いいたします。

スコットランド発のクラフトビールメーカーであるブリュードッグ(BrewDog)は、スコットランドの高地で、泥炭地の復元や天然林の造成に取り組んでいます。しかし、これはカーボンニュートラルという壮大なミッションに向けた一つの取り組みにしか過ぎません。「サステナビリティ(持続可能性)はボルトで後付けできるようなものではなく、役職に関係なく、すべての社員の中核をなすべきです」と、ブリュードッグの共同創設者、ジェームス・ワット氏は語ります。

3000万ポンド(約42億円)の投資計画の一環として、同社は輸送車両を電気自動車に切り替える計画を進めており、醸造工場は風力発電で稼働しています。使用済みの穀物をリサイクルで燃料に変え、発酵時に発生した二酸化炭素はビールの炭酸化に利用します。

カーボンニュートラル:革命のような響きの言葉

CO2排出量の削減に力を入れる企業や業界が増えれば、グリーン産業革命が進み、関連する雇用の創出に弾みがつく可能性もあります。農業だけを見ても、国連食糧農業機関(FAO)では、気候変動に対応することで、2050年までに世界で2億人の雇用を創出すると試算しています。

プラスチック汚染防止に取り組むオランダのSearious Business社によると「目的を持って仕事をしたい」という応募が急増しており、特にZ世代(1990年代中盤以降に生まれた世代)からの応募が目立つと言います。「環境を汚染して成り立っているような産業は、継続的な人材確保ができず、苦戦しています。世の中にとって良いことをしているという企業文化をアピールできるかどうかが改革の鍵になります」と、Searious Business社の創設者の一人、ウィレミン・ペーテルス氏は話します。

グリーン経済への移行が成功すれば、より安定した雇用が創出されます。2018年の国際労働機関(ILO)の報告書では、循環型経済を推進することで、600万人の雇用が創出されると推定しています。世界全体で見ると、漁業、農業、林業など地球環境に依存する業種における雇用は12億人にも上り、環境悪化と温暖化が存続のリスク要因になっています。

銀行は投融資が主な事業ですが、倫理的な視点で案件を選ぶことができれば、これからの経済を支えるグリーンインフラ強化につながります。トリオドス銀行英国支店(Triodos Bank UK)のCEO、ビーヴィス・ワッツ氏は「銀行はポジティブな影響力を持つ環境イノベーターに融資を行うことで、支援できる」と考えています。例えば、トリオドス銀行英国支店では、電気自動車やインフラ技術の先駆者となる企業に資金を提供しています。

戦略的レピュテーション管理コンサルタント、ランソン(Lansons)の最新報告書によると、英国では投資家の半数以上(58%)が銀行や建築業界に環境が良くなるように投資してほしいと望んでいます。同氏は、現在の経済システムは機能不全に陥っていると考えており、環境にやさしいグリーンな経済支援策と、気候変動のない未来に貢献する新たな雇用創出を政府に呼びかけています

グリーンジョブの需要はどこで生まれる?

地方自治体協議会(Local Government Association)の最新報告書によると、2030年までに低炭素に貢献する産業における雇用のうち46%が家庭や企業に低炭素電力を供給するクリーンな発電業界関連になると報告されています。同様に、電気自動車の製造も成長が期待できる分野です。2015年にロンドンで設立された商用車EVの製造スタートアップ企業、アライバル(Arrival)は、10億ドル(約1090億円)以上の時価総額に達し、「ユニコーン」のステータスを達成しました。全世界で約1,150人を雇用しています。

英国製造技術協会(Manufacturing Technologies Association)が発表した報告書によると、環境に配慮した社会へ移行することで、英国の製造業では最大90,000の職種、サプライチェーン全体ではさらに83,000の新たな職種が生まれる可能性があり、GDPに換算すると、最大200億ポンド(約2兆8,000億円)になるということです。同協会は、環境保護の推進は「選択肢の一つではなく、義務である」と述べています。

明るい未来を拓くことはできるのか?

エレン・マッカーサー財団が2019年に発表した報告書「How The Circular Economy Tackles Climate Change(循環型経済の気候変動への取り組み)」では、わずか五つの分野(食品、プラスチック、鉄鋼、アルミニウム、セメント)が、循環型経済になるだけで、温室効果ガスの年間排出量を2050年までに40%削減できることが実証されています。これは、全世界の輸送機関のCO2排出量をゼロにするのに等しい量です。どの分野に資金を投資するか、選ぶことが重要になっています。

サステナビリティは、あらゆる製品で、設計段階から考慮に入れておく必要があります。製品を長持ちさせることにこだわる設計者が世界にはいます。つくりすぎの無駄を避けながら、生地の端材をうまく活用するサステナブルなファッションブランド、デプロイ(Deploy)の創設者であるバーニス・パン氏はその一人です。10名のチームを率いるパン氏は、グリーンジョブの創出は「サステナビリティ担当役員」のような新しい独立した役職の人を雇用するだけではない、と語ります。「すべての雇用が環境に配慮したものであるべきなのです」と、パン氏は話します。古いノートパソコンをただ廃棄してしまうのか、新しいOA機器を何も考えずに購入してしまうのか。あらゆる意思決定の基盤となるのはサステナビリティであり、サプライチェーン全体で同様の仕組みが必要だと彼女は言います。

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