小売業をスマートにする5Gとエッジコンピューティング

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[Publisher] VentureBeat

この記事はVentureBeatのChris Angeliniが執筆し、Industry Diveパブリッシャーネットワークを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@industrydive.comにお願いいたします

VentureBeat インサイト:

本記事は、インテルの出資により制作された「テクノロジー・インサイト」シリーズの一部です

手に取った商品をそのまま店外に持ち出すだけで決済が完了する「grab-and-go」、便利なセルフサービス型売店、顧客一人ひとりの好みに合わせたおすすめの表示など、米国の小売業界では数多くの先進的なテクノロジーを活用し、顧客満足度向上を図る競争が進んでいます。また、ローカル5Gや、インターネットに接続された自動化技術を使った需要と供給のきめ細やかな調整、仮想現実(VR)を用いた従業員の研修など、小売りの合理化を進めるために、買い物客に意識すらさせない裏側ではさまざまなイノベーションが進められています。

イノベーションの源泉になっているのは、端末から集められた膨大な購入データです。世界有数のリサーチ&アドバイザリー企業ガートナーによると、小売・卸売業界に関するIoT端末は年内に世界中で4億4000万台に増加すると予測されています(2019年は3億6000万、2018年は2億9000万)。

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上図:単にデータ量を増やすだけでは不十分で、リアルタイムでのデータ分析も必要という指摘もある。

画像提供:インテル

ところが、ここで問題が出てきます。小売業者はどうやって、その情報量の増加についていけば良いのでしょうか。何を発注するか、どこに在庫を配置するか、顧客のセキュリティーをどう守るかなどについて即座に決定を下すには、そのための体制が欠かせません。

これから訪れる小売業の姿:

  • リアルタイムで正確な在庫を把握できるようになり、常に棚に商品がある状態を維持し、機会損失なく店舗を運営できるようになります。
  • データ分析から導き出される適切な人材配置により、これまでより便利なショッピング体験の提供だけでなく、従業員の健康と安全に配慮することもできるようになります。
  • 今日のヘッドマウントディスプレイよりも安価なデバイスが普及し、拡張現実(AR)やVRを用いた従業員研修が可能になります。

顧客にとって便利で快適と感じられるショッピング体験というのは、サーバーなどのインフラと店舗に設置するセンサーやカメラとが5Gでつながることで実現されることが、これからますます増えていくと想定されます。そのため、ショッピングをもっと効率的で顧客にとって快適なものにするために、データを集める重要性が高まります。5Gによってすでに小売業の裏側にはどのような影響が出てきているのでしょうか。その事例をいくつか見ていきましょう。

正確な在庫管理で顧客の需要を確実に満たす

米国の調査会社IHLグループの指摘によると、ほとんどの小売業者が在庫管理を人力で行い、結局十分に把握できていないと言います。小売業者が十分な在庫があると考えていても、顧客は、10回の買い物につき2.5回は欲しい商品が見つからないことがあると思っているという統計が出ています。このギャップにより、世界全体で年間1兆1000億ドル(約120兆円)を超える損失を生み出していると試算されています。

RDIFタグとセンサー、カメラを組み合わせれば、小売業者は商品ごとに情報管理ができるようになります。そうすれば、在庫が底をつく前に棚に補充をしたり発注したりすることも可能です。それだけでなく、顧客が歩き回る店内のルートや立ち止まる場所、手に取るものに関するデータを集めることもできます。

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上図:Badger Technologiesの自律型移動ロボットは、品切れや商品配置の適切性、価格の適切さといった課題に関する分析結果を提供できる。店内の監視も可能。

画像提供:Badger Technologies

これらは今も可能ですが、5Gが加われば、現場の対応力をまた一段と高められます。2019年米国の通信大手AT&Tと小売企業向けロボットを手がけるBadger Technologiesが、5G対応ロボットを活用した小売自動化プロジェクトにおいて提携することを発表しました。Badger Technologiesのロボットは、5Gの活用によって品切れやラベルの間違い、配置場所の改善提案を見つけ出し、分析結果を管理画面に表示します。

「店舗データをすべて現場から収集・共有しようとすると、店舗内のWi-Fiネットワークに大きな負荷がかかります。その結果、通信状況が悪化し、店舗の運営や顧客のショッピングにも支障をきたします」とBadger Technologiesの最高経営責任者(CEO)であるティム・ローランド氏は語ります。「Badgerのロボットは移動式データ収集システムとして、5G接続の恩恵を受けながらも、店舗の現場で、通信回線を使わずとも、より多くのデータを収集、共有、分析することができます」

店内の通路を回るロボットは、本来の役割範囲を超えて、顧客の安全を守るためにも働いています。Badgerのロボットは、在庫管理という役目に加え、床に落ちている危険物(棚から落ちた商品や床のぬれなど)を検知・報告し、さっと掃除をすることもできます。米サンディエゴに本社を置くBrain Corpの「Brain OS」を搭載したロボット床掃除機は、センサーやインターネット接続の機能を備えており、店舗で掃除をしながらクラウドに現場の状況をアップロードしています。

掃除や在庫管理などの業務を自動化できれば、ソーシャルディスタンスにもなります。また、作業負荷が高まっている丁寧な消毒などに従業員が集中できるようにもなります。

5Gを店舗に導入する

ロボットを5Gへ接続するには、小売業者はどうすれば良いでしょうか。AT&Tは、ゆくゆくはロボットが携帯電話回線でネットワークにつながると考えています。その上でデータ処理の優先順位付けと実行をロボット内で行うことにより、ロボット動作遅延を最小限に抑えます。即座に実行しなくてもいいような処理は、クラウドに送られます。小売企業が心配するなら、一部のデータを自社内に設置したサーバーに保持する選択肢もあります。

米大手通信キャリアのベライゾンと通信サービス会社のボインゴ・ワイヤレスは昨年、ミリ波を利用した5G回線を空港、球場、オフィスビルへ導入するための提携を発表しました。また最近では、2020年2月にフロリダ州マイアミで行われたスーパーボウルのために、ベライゾンが同都市に8000万米ドル(約88億円)以上の投資を行いました。投資は、人気のホテルやショッピングセンターでのインターネットアクセスのために充てられました。さらに、同都市にある2つの空港には5G回線が導入されました。

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一方、同じく大手キャリアのAT&TとT-モバイルは、米国全土への5G展開に向けて、4G通信の周波帯域インフラの再利用という別の手段をとっています。2社は、2億人以上の人々にそのネットワークを広げていると言います。一つの電波塔で「数百平方マイル」もの範囲をカバーするよりも、850MHz帯(AT&T)や600MHz帯(T-モバイル)といった帯域を使う方が5G回線を屋内に引き込むのに優れていると説明します。

高速・低遅延という特徴を持つミリ波は、多くの建材を透過することができません。そのため基地局は、小売業者が売り場で安定接続できるように取り組んでいます。ベライゾンが素材メーカーのコーニングとの実証実験を成功させ、実用化に向けた道筋を示しました。「5G回線が普及すれば、企業に自社施設内に自社専用のクラウド環境を構築するという選択肢がでてきます」とベライゾンの技術開発担当副社長を務めるアダム・ケッペ氏は言います。「企業のデジタルトランスフォーメーションの加速にもなりますし、ベライゾンのミリ波帯域と安定性があれば、大量の端末を管理することもできます。さらに、人工知能(AI)や機械の目となるセンサーなどの先進的なテクノロジーも実用的なものになります」。

あらゆる研修を、リスクなしで

5Gを店舗で活用する取り組みは、顧客との接点だけではありません。5Gは、従業員の教育や事故の防止にも活用できるのです。2019年の米国では、従業員教育に約9兆900億円もの資金が投じられました。それだけの投資を、OJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング:実地研修)よりも理解度がはるかに低い座学やマニュアルを読むだけの受け身的な教育にとどめるのはもったいないことではないでしょうか。ARやVRは、安全な環境で従業員に実地研修をさせられる上、研修に専念させることで学習を深めることもできるため、期待されています。

2017年、ウォルマートではVRを用いて、実際とそっくりの環境で従業員に研修を行いました。同社は、社内研修制度「ウォルマート・アカデミー」で提供している30のプログラムにOculus Goのヘッドセットを導入しました。そうすることで、いちかばちかの賭けに頼ることなく、人々が殺到し現場が混乱するブラック・フライデーのセール対応を現場マネジャーにシミュレーションさせたのです。この研修は現場から好評で、同社は全店舗にヘッドセットを配布することになりました。現場に配られた数千台ものヘッドセットを通じて、100万人以上の従業員が各種研修コースを受講できるようになりました。

実は同社が導入したヘッドセットは、処理能力がそれほど高くありません。よりリアルな研修を行うなら、高画質でスムーズな画面処理が求められるでしょう。通信機器メーカーのエリクソンは、こうした用途に必要となる高速・低遅延・安定性は、自社専用の5G回線によって実現可能だと説明します。

おすすめ商品の関連度が高くなること、決済がスピーディーになること、あらゆる買い物シーンで満足度が高まること――これらはすべてに効率化技術の向上とパーソナライゼーション技術の改善が必須なのは間違いなしです。そして、わたしたち買い物客には見えない裏側でも、5G回線が与える劇的な変化はたくさんあるのです。ショッピングがこれからどう変わるのかを考えると、ワクワクが止まりません。

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