米国電波塔企業が100%カーボンニュートラルを達成、資金調達も有利に

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[Publisher] FierceWireless

この記事はFierceWirelessのBevin Fletcherが執筆し、Industry Diveパブリッシャーネットワークを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@industrydive.comにお願いいたします。

2020年6月、米国の株式非公開企業の中では最大手の通信インフラ企業バーティカル・ブリッジが、100%カーボンニュートラルの目標を達成しました。電波塔企業の中では世界初となります。

フロリダ州ボカラトンに拠点を置く同社は、カーボンニュートラルプロトコルに基づくカーボンニュートラル認証を公式に受けたことを発表しました。

同社の共同創業者兼オペレーション担当エグゼクティブバイスプレジデントであるバーナード・ボーゲイ氏は、通信業界メディア『FierceWireless』の取材に対し、今回の目標達成は同社のESG(環境、社会、ガバナンス)の取り組みの一環であり、過去4~5年にわたり同社が行ってきた取り組みの成果だと述べました。

同社のカーボンニュートラル目標に関わる事業活動全体のCO2排出量を算定するという大変な作業は2020年1月に始まりました。2月頃、ボーゲイ氏はナチュラル・キャピタル・パートナーズの協力のもと、従業員が飛行機に乗った回数や自動車を運転した距離、オフィスのエネルギー消費量、電波塔の運営や建設による排出量など、事業活動に伴うカーボンフットプリントを見積り、算定しました。そこから、これらを削減する方法を検討しました。

CO2排出量を減らす取り組みの一環として、同社は、暖房・換気・空調システム(HVAC)や航空障害灯システム、発電機を高性能のものに切り替えるなど、エネルギー効率が高く環境の面で安全な技術を採用しています。またボーゲイ氏の話によると同社は、複数回分の訪問や点検を1回の出張でまとめて行うことで、現場運用チームの出張ルート計画の効率も高まるように指導しました。

同業他社の多くと同じように、同社も、電波塔に設置された旧式の航空障害灯をすべてLEDに切り替え、電力消費の削減を図ったとボーゲイ氏は言います。さらに、鳥にやさしい障害灯システムをいち早く採用し、設置を開始しました。

「企業市民としての責任があるということ、そして技術が発展すれば、さらにより良い市民となるために技術を活用できる、またそうすべきである。心から、そう思っていました」とボーゲイ氏は語ります。

同社の事業規模を考えれば、もちろん、現時点では避けられない排出も一部あります(同社が所有・運営・マスターリースする電波塔、屋上/広告板/公共施設設置型設備、その他無線通信の導入用設備は計26万9,000を超えます)。今のところ、どうしても発生してしまう排出の中でもっとも大きなものは同社の設備やオフィスでの電力消費となっていますが、前述の通り、同社はエネルギー消費を削減しようと取り組みを進めています。

こうした避けられないCO2排出を相殺する手段として、同社では、温室効果ガスの削減・除去に取り組む北米の四つのプロジェクトを支援しています。各プロジェクトとの関わり方については、ボーゲイ氏の説明によると、カーボンオフセットのクレジットを購入することで支援しているといいます。

四つのプロジェクトは、次の通りです。

(1)コロラド州とモンタナ州の草原を保護し、土壌へのCO2固定化と農地への転換によるCO2排出防止に取り組む「Grasslands Portfolio」

(2)埋め立てによる環境影響の削減に取り組む「Seneca Meadows Landfill Gas」

(3)240万エーカー(約97万ヘクタール)を超える土地固有の森林保護に取り組む「The Mississippi Valley Reforestation」

(4)1万5,600エーカー(約6,300ヘクタール)に及ぶカナダの北方林の細分化と影響の大きな伐採から守る「DarkWoods Forest Conservation」

通信企業にとって嬉しい5G展開は、カーボンニュートラルの取り組みへの影響なし

これから5Gが急速に展開し、キャリア回線の高密度化は進む一方とされています。こうした事態に対応するため、インフラ設置の必要性は増大すると予測されており、電力ニーズが鈍化することもないだろうと考えられています。米国ではTモバイルが帯域を新たに獲得して自社の5Gネットワークを拡充したほか、ディッシュ・ネットワークも、アメリカ全域に広がる新たな5Gネットワークの構築に向けて準備を進めています。

ウェルズ・ファーゴのアナリストらが6月に発表した調査書によると、バーティカル・ブリッジと、公共電波塔企業のアメリカン・タワー、クラウン・キャッスル、SBAの各社は、先頃行われた投資家向け説明会でこの点に触れ、電波塔の収益源について「需要が高まっている」ことを示しました。シニア・アナリストのジェニファー・フリッチェ氏率いる同アナリストチームは、導入が必要な帯域幅を考えれば、電波塔の基本的な成長要素は中長期的に損なわれることはないと指摘しています。

フリッチェ氏は次のように記しています。「TモバイルUSの拡大などについて電波塔企業各社は、2020年上期の事業拡大を非常に前向きに捉えている。」

5Gが急拡大しても、同社はカーボンニュートラルを維持できる自信があるとボーゲイ氏は言います。なぜなら、事業活動におけるCO2排出源を把握しており、それを減らすための方法も理解しているからだといいます。

「バーティカル・ブリッジが終わりを迎える日まで、今日からずっと、カーボンニュートラル認証の維持に全力を尽くします」とボーゲイ氏は宣言しています。

大手通信キャリアの主要拠点はすべて、環境影響の低減とカーボンニュートラルの達成を宣言しています。

「当社が達成できたことを誇りに思います。また、同業他社や提携先も今日の当社の発表に続いてくれれば、と心から願っています」とボーゲイ氏。「5Gの導入により暮らしを変革している業界がESGの取り組みにおいてもリーダーになれたら、すばらしいことでしょう」

環境負荷を低減すること自体にも価値がありますが、それ以外にもメリットがあります。例えば、航空障害灯をLEDに切り替えることで省エネルギー化が進み、コスト削減にもつながったのです。

「社会的に正しい行いであるだけでなく、当社の事業にもメリットがありました」とボーゲイ氏は言います。また同社は、発電機や、ディーゼル燃料の切り替えのほか、自社の拠点の一部を再生可能エネルギー設備設置企業に提供しています。

同社は、環境にやさしい技術に切り替えることでコスト削減も実現しましたが、企業文化の面でも価値があったとボーゲイ氏は言います。「当社の社員の中からも賛同の声があがっています。企業として善い行いをするために継続的に取り組んでいる様子を見て、当社の社員も大きなやりがいを感じてくれています」

またボーゲイ氏は、社会的責任を犠牲にすることなく収益を出して成長することは可能だと、企業が示すべきときだとも付け加えました。

同月、同社は新たな発表を行いました。資産担保証券(ABS)の非公開取引を通じて、電波塔の収益にかかわる担保付社債5億3400万ドル(約585億円)を発行したのです。同社がこれまでに行ってきた証券化の中で5番目の規模に達し、ボーゲイ氏が「大成功」と語るこの資金調達は、好評を博し、募集枠を10倍も上回る応募があったといいます。

今回の資金調達は、新型コロナウイルスの感染拡大に伴いABS市場が閉鎖して以来、最初のものとなり、アメリカ49州とプエルトリコに広がる2,800近くの電波塔拠点に対して担保が設定されました。

ボーゲイ氏は、次のように語っています。「電波塔業界の継続的な成長と安定性を、投資家や金融業界が認識していると示せました。このような非常に大きな規模で、投資家を引き付けられたのは、当社の全社員の実行力が物語っています」。

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