イギリスの就職前線とグリーンジョブ~環境分野でキャリアを歩むには?~

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[Publisher] The Guardian

この記事はThe GuardianのEmma Sheppardが執筆し、Industry Diveパブリッシャーネットワークを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@industrydive.comにお願いいたします。

英国北西部にある都市プレストン出身で、大学を卒業したばかりのレア・ベネットさん(23歳)は、「社会をよりよくしたい」と考えさまざまな活動をしてきました。その内容は、海岸の清掃ボランティアや、アマゾン森林火災の裏にひそむ政治工作に関する調査、プラスチック容器包装の代替物に関する研究のほか、環境団体Louder Than The Stormのデジタルマガジンの編集などです。

やりがいのある仕事が人気に

大学卒業後に環境セクターで働きたいと思っている人は、ベネットさんだけではありません。英国のビジネス・エネルギー・産業戦略省が2018年に発表した調査によると、18~24歳の中で環境に貢献する「グリーン経済」の分野でキャリアを積みたいと考えている人は60%近くに上ります。ほかの業界でも、若い求職者は、社会の持続可能性に真摯(しんし)に取り組む企業で働きたいと考える傾向にあります。新卒採用アプリDebutによると、しっかりとした環境方針を掲げる企業で働きたいという在学生・卒業生の割合は、女性では89%、男性では80%に上るという結果が出ています。求人広告では、たとえその職種自体が「グリーン」なわけでなくても、そうした側面がアピールされることが増えています。

「企業にとっては、確かな差別化の要素になりつつあります」とDebutのマーケティングディレクターを務めるキム・コナー・シュトライヒ氏は指摘します。「それに、従来型の『グリーン』な企業以外にも、チャンスは山ほどあるのです。新卒採用の機会もたくさんあって、企業のビジネスの全体像を理解した上で、後々専門性を選んで高めるキャリア開発の方法もあります」

「グリーン」のブーム

幸いなことに、環境分野の雇用市場は急速に成長しています。英国は2050年までにCO2排出量を実質ゼロにしようという目標を掲げており、その計画の中核に、再生可能エネルギーや電気自動車(EV)、スマートテクノロジーを据えています。国際労働機関(ILO)が発足させた「仕事の未来世界委員会[Microsoft2]」の予測では、グリーン経済の結果として、2030年までに世界全体で2400万もの職業が新たに生まれるとされています。

英国政府の研究資金助成機関「イノベートUK」のもと、EV向けのバッテリー開発に取り組む「ファラデー・バッテリー・チャレンジ」をリードするジャッキー・マレー氏は、英国のゼロカーボン目標の達成においては、STEM(科学、技術、工学、数学)領域の卒業生が鍵になると言います。しかしSTEMだけでなく、仕事を進めるためのさまざまなスキルもまた重要であると認識してもらうための啓発を自身のミッションとしています。「STEM領域の仕事では、常に心構えが大事になってきます」とマレー氏。「問題解決の側面もあれば、チームワークの側面もあります。それに、誰でも貢献できる領域です。世界のトップを走る科学者にはなれなくても、世界のどこかの研究所で、ほかの人たちと力をあわせて何かに取り組む人にはなれるでしょう」

「私たちの取り組みにおいては、領域横断的な性質こそが真の強さとなります。STEMがグリーン経済の中核になることは確かでしょう。ですが、コミュニケーション力や、アイデアを言語化して人に伝える力も本当に大切なのです」

新鮮な視点の価値

Green Recruitment Solutionsの創業者イルファン・ローヒアー氏の話によると、2013年の創業以来、廃棄物のリサイクルや水資源、再生可能エネルギー、グリーン投資などの業界で、新卒者を求める企業が増えていると言います。「企業は、人材を確保する必要性に気付いています。これらの産業では、高齢化が進んでいますから」。またローヒアー氏は、技術的な職種の募集が多く、工学分野の学位を持つ人材の需要は非常に高いとも指摘します。「プロセスエンジニアリングの募集が多いですね。あとはケミカルエンジニアリングも多いです。水資源や廃棄物管理、エネルギープロセスといった業界で活躍できますので」

エネルギー・持続可能性に特化したコンサルティング業界では、Inspired Energyが2019年9月に同社初となる新卒採用の制度を導入しました。多様な学歴から6名の応募者が採用され、同社内のさまざまな部門で2年間の経験を積むというものでした。この制度は大成功を収め、2020年には採用枠が20名に拡大されました。「卒業生はやる気に満ち溢(あふ)れていて、準備万端です。そして当社としても、彼らの新鮮な視点をありがたく活用しています」と、同社でコマーシャルディレクターを務めるマット・ジョーンズ氏は言います。「この分野に強い関心を持つ彼らが熱意に燃える姿を見ると、感無量です」

自分にぴったりの職に就く

社会的インパクトを生み出せる領域で働きたいという人々や経営者に対しコーチングを行い、『Good Work: How to Build a Career that Makes a Difference in the World』の著者でもあるシャノン・ウード氏は、グリーン経済の領域で自分にぴったりの職に就こうとするとき、その領域の広さが課題になると指摘します。

「私は、五つの主要カテゴリーに分けています。『企業の社会的責任と持続可能性』『社会的インパクトと国際貿易・開発』『サステナブルファイナンスと社会的責任投資』『環境(再生可能エネルギーなど)』それから『スマートシティーと食料』の五つです」。ユニリーバやパタゴニア、ナイキなどの有名企業のほかにも、公共セクターや非政府組織(NGO)、業界団体、コンサルティングなどに目を向けてもチャンスは広がっているのです。「中小企業でも、関心を向ける価値のある企業はたくさんあります。サステナブルなファッションから、ビーガンフードの企業まで、いろいろです」。

将来を見据えてキャリアを設計する

新卒者は、関係構築力やコミュニケーション力、プロジェクトマネジメント力、研究、分析、リポート制作力といったスキルをアピールすべきだとウード氏は言います。また面接では、社会、環境等の関心のあるトピックを1~2個に絞って話すと効果的です。冒頭のベネット氏もこの方法を取り入れ、自分の持つスキルをアピールした結果、パートタイムの有給インターンの内定を3件もらったと言います。彼女は現在、ランカスター大学のグローバル・エコ・イノベーション・センター(Centre for Global Eco-Innovation)で環境・持続可能性専門の研究者として働いています。「面接では、『私は研究にも熱心に取り組んできましたが、その情報を伝えることと、広めることにも取り組んできました』と話しました。これらのスキルは、いろんな企業や業種で重宝されるんです」。

さらにウード氏は、コロナ後の厳しい雇用市場においては、グリーン経済に身を置くのが賢明かもしれない、とも付け加えました。「この分野は、これからもっと成長が見込まれます。自分の価値観を大切にすることにもなりますが、それ以上に、自分のキャリアの未来を守るための道筋にもなると確信しています」

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