金融業界の社会課題「金融包摂」を進める三つのフィンテックのイノベーション

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[Publisher] e27

この記事はe27のTanvir Zafarが執筆し、NewsCredパブリッシャーネットワークを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@newscred.comにお願いいたします。

携帯電話とインターネットの普及により、近年、すべての人が金融サービスを利用できるようにする「金融包摂」は継続的に強化されています。2018年に発表された世界銀行年次報告書によると、世界の成人の69%がすでに銀行口座を持っているか、同様の金融機関を何らかの形で利用しています。

銀行や金融サービスへのアクセスを確保することは、貧困を解決するための重要なステップと考えられています。2012年から2018年まで世界銀行総裁を務めたジム・ヨン・キム氏は「金融包摂が実現すれば、家族の必要性に応じて貯蓄したり、事業支援のための融資を受けたり、非常事態に備えて対策を準備することができるようになります」と語ります。また、危機を乗り越え、復興を目指す人々を支援するものでもあります。

ここでは、金融包摂の推進に大きく影響を与えそうな三つの具体的な潮流について紹介します。

事業拡大に貢献するデジタル決済サービス

オンライン決済市場は、かつてはクレジットカードやPayPalが独占していましたが、現在はさまざまな競合企業がひしめき合っています。Apple、Google、Alibaba、Samsungなどの大手企業もそれぞれのモバイル決済プラットフォームを備えています。通信キャリア事業者も、オンラインのモバイル決済機能を提供しています。

新しい送金方法が利用できるようになれば、オンラインショッピングの利用者が増えることになります。企業がオンライン店舗を設置する必然性が増しており、売り上げに伸び悩む企業が、集客や売り上げアップのためにオンライン販売を検討しています。

新たに店舗を開設するよりも、まずオンラインでの事業拡大を検討する方が賢明なのは間違いありません。商品が配達できなくて困るという可能性はほとんどありません。事実、新型コロナウイルスが世界中で大流行する中でも、宅配業界は活況を呈しています。代引きや着払いに対応する配送業者も世界中で増えています。

他にも、暗号通貨(仮想通貨)やブロックチェーンが、金融包摂の拡大に貢献しています。「International Journal of Engineering and Technical Research」に掲載された研究では、eコマースの普及にブロックチェーンとフィンテックが重要な役割を果たしたことが報告されています。

「ブロックチェーンの利点として、単一のプラットフォームで複数のオンライン取引を実行できるため、売買の効率が向上することが挙げられます。また、一度ブロックチェーンに入力された情報は変更できないため、返品や購入のプロセスを確認するのも簡単です」と、Capgeminiのヴィヴェック・ドゥビー氏は語ります。

新しい決済方法やブロックチェーン技術は、購入者にとって便利なだけではありません。売り手側も、国や地域の枠を超えて買い手を見つけることができます。フィンテックのイノベーションにより、さらに効率的で安全で、直感的な使い勝手になる可能性があります。

オンライントレーディングの普及

株式などの市場から利益を直接得たい個人は、フィンテックを利用して、本格的な個人投資家やトレーダーになることができます。多くのデジタル取引プラットフォームは、すぐに始められるように整備されています。また、世界各国の通貨を含む幅広い資産の取引もサポートしています。価格変動をライブ配信で伝え、さまざまな株式チャートやニュースフィードを提供し、個人投資家の意思決定をサポートします。

これまで専門のトレーディング会社が独占的に取り扱っていた業務に個人が参入できるようになるのです。

「新型コロナウイルスの世界的流行によって、経済の津波とも言えるほど現在の市場は変動が激しい状態です。一部のエコノミストや経済のカリスマ的専門家は、金融投資に特に慎重になるべきだと主張しています。しかし、アービトラージ(裁定取引:金利差や価格差を利用して売買し利鞘(りざや)を稼ぐ取引)などの手法は、不安定な経済情勢に基づくもので、価格の変動が大きいほどアービトラージが増えることを意味します」と、Prance Goldの最高経営責任者、アンドレ・ジェラルド氏は述べています。

アービトラージは、市場や取引所間の価格差を利用した投資手法です。経済が混乱し、取引所間で価格差が広がると、その価格差を利用しやすくなるという特徴があります。ニューヨーク大学の企業金融学教授であるアスワート・ダモダラン氏は次のように述べています。「アービトラージは、理論上は資金を投資せず、ローリスクで利益を上げることができます」

「現在の厳しい経済情勢の中では、適切に計画・実行すれば、アービトラージは有効な取引戦略です」とジェラルド氏は付け加えます。

新たな資金調達手法の登場

金融包摂のもう一つのメリットとして、起業や緊急の資金ニーズへの対応、あるいは新製品開発や事業拡大の資金調達において、従来とは違う手法を活用できようになることが挙げられます。フィンテックのイノベーションにより、P2P(個人間取引)による資金調達、クラウドファンディング、ホワイトラベルバンキングなども可能になります。

P2P融資とは、2人の個人の間で、直接お金の貸し借りをすることです。クラウドファンディングとは、基本的には目的は関係なく、オンラインで資金を集める行為を指します。一般向けの事業提案書や融資の申請書を作るようなものです。一方、ホワイトラベルバンキングとは、銀行免許を持たない企業でも、銀行サービスを提供できるようにするスキームのことです。

フィンテックは、金融包摂の拡大に貢献しています。

FDIC(連邦預金保険公社)のホワイトペーパーでは、次のような結論がまとめられています

「フィンテック系企業は、銀行の営業所がない地域でのクレジットの格差を埋め、銀行がサービスを提供できていない信用力の高い借り手に金融サービスを提供しています」

個人も企業も、金融包摂の恩恵を受けることで、金融サービスがより利用しやすくなると、事業運営/投資/借り入れ/資金調達などさまざまな局面でメリットがあることに気付いていない人が多いのが現状です。 新しい技術やフィンテック企業は、金融包摂を進める触媒と考えることができます。誰もが平等に享受できる金融サービスが障壁なく利用されるための新しい方法を作り出しているのです。

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