中小企業を救え。英国で提唱される「ナイチンゲール資金」とその作り方

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[Publisher] VentureBeat

この記事はVentureBeatのLeon Gauhmanが執筆し、NewsCredパブリッシャーネットワークを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@newscred.comにお願いいたします。

この記事を執筆されたレオン・ゴーマン氏は、デジタル製品コンサルタント会社、ElsewhenのCSO(最高戦略責任者)です。

英国・ロンドンにあるエクセル展覧会センターというコンベンションセンターがわずか9日間で、4000床のベッドを備えた「ナイチンゲール病院(仮設)」に改装されたというニュースは、新型コロナウイルスのパンデミックの状況下で数少ないほっとするニュースでした。武漢では、中国政府指導の下、1000床の新病院が10日間で建設されました。

世界の中小企業では「企業経営の緊急外来が必要」という認識が増えつつあります。全世界の雇用の約50%が中小企業であるにもかかわらず、ほとんどの企業の手元資金は1カ月分程度しかなく、これまでギリギリで運営を続けていた企業も経営破綻の危機にひんしているのです。

このような危機的状況を受け、各国政府は減税、債務返済の凍結、助成金、緊急融資策など、さまざまな支援策を打ち出しています。しかし、中小企業の手元に現金が届くまでには時間がかかるのが現状です。

そこで、今、矢面に立たされているのが銀行です。2007年から2008年にかけて発生した世界金融危機の後、銀行は企業向け融資プロセスのデジタル化と合理化に苦戦してきました。現在はコールセンターが混乱し、大半のスタッフがリモート勤務に切り替わっていることもあり、迅速に中小企業の申請を処理することに苦慮しています。さらに、不当な制限複雑な申請プロセス政府支援の融資に対する保証人の要求など中小企業の銀行に対する不信感もあります。

この状況を変えていくことはできないでしょうか。

フィンテックとデジタルテクノロジー企業が力を合わせて国際的な特別部門を構築し、新型コロナウイルス感染者を受け入れる医療機関の協働体制の構築など、緊急性の高い問題に集中して取り組むことができたら?迅速に対応できる中小企業向けの融資策をゼロから構築できたら?

これらの解決策は、多くの中小企業を破綻に追い込む恐れのある資金調達の行き詰まりを打破して、中小企業への資金供給をスピードアップさせ、承認、契約、融資プロセスを大幅に迅速化させるものです。

デジタルを活用したスピード融資のコンセプトは、世界中で展開できるようになる可能性を秘めています。

以前は政府が非常事態権限を使って行使していましたが、新しいアプローチでは、トップレベルの民間チームが最大限支援することで、3~4週間以内で実現できます。

そのための設計は以下のとおりです:

「ナイチンゲール資金」の目的とスキーム

英国で検討されている「ナイチンゲール資金」は金融機関の資金を中小企業に届けるためのデジタルを活用したスピード融資策で、金融機関のコールセンターの人出不足問題や顧客を迅速に大量に受け入れるために必要な制約を回避するものです。

「ナイチンゲール資金」のプラットフォーム自体が直接顧客に貸し付けを行うわけではなく、政府が認定する銀行融資を紹介し、仲介するだけです。そのため、プラットフォーム運営会社は銀行ライセンスが必要ないため、許認可を取得するための規制が障害となることもありません。

プロジェクトの緊急性にかかわらず、困窮した中小企業が速やかに申請し、融資を受けられるように、できる限りプロセスを簡素化することを目指し、設計・構築されています。

構築するための組織体制

デザイナー、エンジニア、プロダクトマネジャー、顧客対応の専門家たちで構成される最大100人のチームが必要になります。これらの人材が揃えば、中小企業は何週間も待たされずに、わずか数時間で資金を手に入れられます。

インターフェースの開発

「ナイチンゲール資金」には窓口となる使いやすいウェブサイトが必要です。

中小企業が必要事項を入力し、融資資格の審査結果を確認するほか、名前の入力から承認まで、オンラインで手続きを行うサイトです。政府、中央銀行、および金融機関のウェブサイトからアクセスできるようにリンクが設置されているべきです。

バックオフィスに必要な業務

バックオフィス業務では、申請から最終的な入金までプロセスを管理します。

「ナイチンゲール資金」インターフェースでは、OnfidoJumioなどの顧客確認ソフトウエアを使用して顧客の身元を確認するとともに、ZendeskIntercomなどのクラウドの顧客サービスを活用し大量の中小企業を照会する必要があります。

その他の必要な要素としては、申請者の信用力を評価するためのアルゴリズム開発が挙げられます。これは、融資基準が簡素なため、国ごとの異なる状況を想定しても、容易に実行できると考えられています。

その他には、顧客が誰であるか、これまでの借入額と返済額の記録を保持する大規模で拡張できるデータベースが必要となります。これについても、クラウドサービスであるAmazon DynamoDBGoogle Big Tableを使って比較的簡単に設定できます。

「ナイチンゲール資金」ソリューションには、大量のアプリケーションを管理できる柔軟性の高いサーバー(Google ComputeAWS EC2など)も必要です。プラットフォームの拡張にはほとんど制限がないため、サーバーレステクノロジーも選択肢の一つとして考えられます。

構築のために考慮に入れるべきポイント

第一のタスクは、開発プロセスの全体像を描くことでしょう。プラットフォームを構築する手順と、中小企業が融資を申請する手順の両方を設計する必要があります。この時点で、決算書などの必要なデータを明確にする必要があります。スピードを上げるには、できるだけシンプルで合理的なデータ要件が求められます。プラットフォームは、第三者データを提供する外部サービスを選択し、ソリューションが銀行や会計ソフトとつながるように、設計する必要があります。

構築における重要な点は、開発チームが継続的に改善できるように、1日に数回ソフトウエアをリリースできる堅固なプロセスが必要だということです。開発者、運営者、プロジェクトオーナーのコラボレーションは、こうした素早いプロジェクトには不可欠です。

「ナイチンゲール資金」プラットフォームの最後の手順では、銀行と連携し、銀行のAPI(アプリケーションプログラミングインターフェース)エンドポイントを使って、支払いの承認と開始を行います。

利用価格設定

「ナイチンゲール資金」プラットフォームの利用価格を適正に設定するのは難しい作業です。しかし、このソリューションでは、既存プラットフォームや技術を使用しています。「ナイチンゲール資金」プラットフォーム全体にかかるコストは、予測される新型コロナウイルスによる世界経済損失(2兆7000億ドル)、あるいは金融機関がこれまで費やしてきたデジタルトランスフォーメーションのほんの一部で済むのです。

成果

「ナイチンゲール資金」コンセプトは、世界中の中小企業にとって打撃となる短期的な危機に対抗するために考案されたものです。金融機関の融資機能を活性化させ、中小企業のニーズを満たす融資ソリューションを提供するものです。最速で建設された新型コロナウイルス専用病院と共通する精神で「意志あるところに道は開ける(成せば成る)」ことを証明することを目指しています。

長期的に見ると、こうした混乱に直面した後、金融機関は顧客中心の業務を提供するというプロジェクトから学んだ知識を、将来起こり得る大規模な緊急融資シナリオに生かせると考えられます。この機会を逃すと、俊敏で対応力があり危機的な状況下においても高い信頼性を受けるフィンテック企業に既存の金融機関は取り残されてしまうかもしれません。

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