チリ初、輸送コンテナで作られたサステナブルなホテル

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[Publisher] Food & Wine

この記事はFood & WineのLane Niesetが執筆し、NewsCredパブリッシャーネットワークを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@newscred.comにお願いいたします。

チリの主要港、バルパライソ。パナマ運河が開通するまで、南米でもっとも重要だったこの港では、毎年100万を超えるコンテナが行き交います。海辺のそばにはいくつもの丘が立ち並び、海から丘の頂上にかけては迷路のような道や古びたケーブルカーが伸びています。

ここの丘は、目を引くストリートアートや鮮やかに彩られた家々で知られており、その色彩は、造船所からくすねられてきたペンキがベースとなっています。ノーベル賞を受賞したチリ出身の詩人パブロ・ネルーダ氏をはじめ、多くの著名人が、「太平洋の宝石(バルパライソの愛称)」の由来となった色鮮やかな建物に惹かれ、この都市に移り住みました。

「この都市は、建築にこだわりがあるのです」。オープンしたばかりのホテルWineBoxの屋上でワインを手渡しながらそう言うのは、ニュージーランド出身のワイン生産者、グラント・フェルプス氏。彼の経営するこのホテルは、今は美術館となっているネルーダ氏の邸宅から少し歩いたところに位置しています。

WineBoxは、バルパライソにある45の丘の中では比較的人通りの少ない、小さな埋め立て地の上に建てられました。WineBoxは、近くの港で使われていた輸送用の使用済コンテナで作られています。

集められたコンテナは25個。これらのコンテナがWineBoxにたどり着くまでに移動した距離は、合計1億6000万キロメートルに上ります。花火から、インスタントコーヒー瓶の中に隠された119キログラムのコカインまで、それぞれのコンテナには、さまざまな歴史があるのです。

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ワインに力を入れているこのホテルは、リサイクルをテーマとしており、すみずみまで徹底されています。家具から、400ガロンの容量を持つ160年物のチリワイン樽で作られた浴槽まで、何もかもがワイン関連のものを再利用して作られています。カサブランカ・バレーのワイナリーから持ってきた3000枚以上の木製パレットはベッドフレームや浴室の引き戸の素材として、100個の廃樽の一部は屋上のバーの椅子として使われています。スペインのイビサ島で夕暮れ時に行われるパーティーからインスピレーションを得たライブが、地元のワインメーカーにより、毎週土曜に屋上のバーで開催されます。

バルパライソは、自由奔放な雰囲気や建築スタイルが入り交じった都市です。トタンで簡易に作られた家から、今にも崩れそうな木造コテージ、ビクトリア朝風の屋敷を改装したブティックホテルまで、その中身は実にさまざまです。こうした期間限定のディナーや、ストリートアートのワークショップ、ワインブレンディングの教室が開催される街だからか、WineBoxのような斬新な取り組みもバルパライソらしいと感じられるのです。

この世界遺産都市は、地元住民から「バルポ」という名で親しまれ、マルセイユの船乗りのような物事を大げさに話したがる気性や、海辺に住む人ならではの変わり者気質に加えて、迷路のような坂道に大胆に描かれた壁画でもよく知られています。

「ごちゃごちゃしていて汚いからとバルパライソを本気で嫌う人も、結局来てしまうというのは、本当におもしろいです。彼らは、自分の高級車に傷をつけられたくないと、路上に駐車するのも嫌がるのですよ」とフェルプス氏。驚くことに、バルパライソへ取材に行くために筆者が借りた比較的新しいレンタカーも同じ目に遭ってしまいました。「WineBoxでやりたいのは、そんなことも忘れさせ、また来てもらうこと。そして、バルパライソのすばらしさを体験してもらうことです。だって、こんなにクールな街なのですから」。

家族経営のヴュー・マネントというワイナリーで7年間働いた後、カサブランカ・バレーのカサス・デル・ボスケというワイナリーのヘッドワインメーカーを引き継いだというフェルプス氏。バルパライソに越してきてから17年間、彼はこの土地のある区画を何度も通ってきましたが、「売土地」という看板を目にしたことはただの一度もありませんでした。2011年、彼の故郷であるニュージーランドで地震が起こり、すばやく復興するための手段として輸送コンテナが活用されました。そこで、フェルプス氏はひらめきました。そして、最高級とは言えないもののバルパライソ港を見渡せるこの土地を、サンティアゴから2時間かけて旅行に来るだけの価値がある場所に変身させたのです。「故郷に戻った時、小さなワインメーカーとして独立できるようなプロジェクトは何かないか探していました」と彼は話します。「たまたまそこで、コンテナでできた建築を目にしたのです。思わぬ出来事でした」。

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こうした環境に優しいホテルの建築は、マレーシアやコスタリカでも次々と生まれています。しかしチリでは、使用済コンテナの中でも完全には壊れてないものを見つけることはもちろん、こうした建築資材を扱える建築家や建設業者を探すのは一苦労です。この仕事をしたいという建設業者も、輸送コンテナを扱ったことのある業者も見つけることができなかったフェルプス氏。彼は、当時まだ大学の建築学生だった恋人に助けを求めました。2015年に、2人は自ら建設会社を立ち上げ、18カ月に及ぶ施工に取り掛かりました。コンテナは、ボランティアの力も借りて2晩かけて現場まで運ばれました。

オーストラリアを拠点とするサーフボードアーティストや、バルパライソの2人組ストリートアーティストをはじめとして、大勢のアーティストが建設現場に寝泊まりしながら作品の制作に取り組みました。こうしたアーティストたちのおかげで、ストリートアートで覆われたこの建物は、バルパライソの街並みに完璧に溶け込むことができました。

建物を覆いつくすのは、海にインスピレーションを得た壁画です。例えば、青緑色の外壁に大きく描かれた、人目を引く二つ目の生き物。「Toast to the Porteños(港の住民に乾杯)」と名付けられたこの作品は、バルパライソ港の人への敬意を表しています。また、地下にあるワイナリーの壁に描かれた紫がかった船とあごひげを生やした船乗りは、ウルグアイ出身のアーティストによるものです。

自家製ワインを作るホテルとして南半球で初めての存在であり、都市型ワイナリーとしても市内初のWineBox。ここでは、無駄をなくすというフェルプス氏の精神が守られています。グラスやコルク栓の無駄を減らそうという取り組みも行われています。

昨年は、ホテルがオープンして間もない頃に迎えた宿泊客にワイン作りに参加してもらいました。宿泊客がズボンも靴も靴下も脱いで取り組んだのは、マイポ産のカベルネ・ソーヴィニヨンとレイダ産のシラーという品種のブドウの櫂(かい)入れです。

ホテル初の自家製ワインは一般に売り出される予定です。チリ産ワインの60%が輸出されている中、WineBoxの自家製ワインはホテルの宿泊客や訪問客のためだけにとっておこうとフェルプス氏は考えています。

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