東南アジアのフィンテック活用最前線

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[Publisher] e27

この記事はe27のStefan Ateljevicが執筆し、NewsCredパブリッシャーネットワークを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@newscred.comにお願いいたします。

東南アジア経済に中小企業はなくてはならないものですが、中小企業にとっての金融サービスの利用のしやすさには依然として課題が残っています。

東南アジア諸国連合(ASEAN)の加盟国10カ国において、全企業のうち88.8~99.9%が中小企業であり、労働者人口のうち51.7~97.2%が中小企業による雇用です。

一方で、ASEAN加盟国各国の国内総生産のうち中小企業が占める割合は30~53%に過ぎません。

これらのことから、中小企業には膨大な経済的ポテンシャルがあると言えるのではないでしょうか。もしかすると、成長を妨げている最大の障壁は資金調達の難しさにあるのかもしれません。

中小企業は大企業とは異なり、事業機会を捉える投資をしたり、赤字事業を続けたりするだけの資金を得るのは困難です。従来の金融機関では、中小企業に賭けるのはリスクが高いと考えられ、潤沢な現金を手元に持っている証明や、価値の高い資産を担保に入れない限り、融資を受けることはほぼできません。

東南アジアにおける中小企業は、銀行以外に信頼できる資金源をほとんど持っていません。その結果、高利貸しに頼ってしまう企業も出てきます。

そこで、テック系スタートアップがこの事態に変化をもたらし始めています。金融市場の分析を行うFortunlyが作成したインフォグラフィックによると、ブロックチェーンやオープンバンキングなどのフィンテック業界のイノベーションにより、中小企業がより好条件の融資を受けられるようになってきています。

ここからは、東南アジアの中小企業がこれまで以上に融資を受けやすくなっている現状の背景にある三つの現象を紹介します。

1.代替データ分析で信用リスク評価を促進

東南アジアにおける中小企業の信用リスクを評価するのは、とても難しいことです。

これらの企業は銀行と取引を行っていないことが多く、十分な信用履歴が存在しないケースが多いのです。これが不十分だと、通常、自動的に融資が却下されてしまいます。

ASEAN諸国の中でもカンボジアやフィリピンは、銀行口座を持っていなかったり、銀行サービスを十分に受けられなかったりする中小企業と、長年にわたり銀行と関係を築いてきた企業の間にある格差を埋めようと取り組んできました。

カンボジア政府とフィリピン政府は、自国の消費者や企業の信用情報を管理する国立機関を設立しました。さらに、信用情報が不十分な起業家の助けとなるフィンテックにも支援を行ってきました。

カンボジアでは、香港に本社を置くAgribuddyという企業が、地方に住む農家が信用を築き、戦略的に資金を用いて再投資を行えるように支援を行っています。またフィリピンのFirst Circleは、事業主の信用情報をより正確に評価できるように、スマートフォンやSNSから代替となるデータを集めています。

2.ブロックチェーン技術による、ふるさと投資ファンドの普及

ふるさと投資ファンドにブロックチェーン技術を取り入れれば、中小企業にとってのメリットが生まれます。

アジア開発銀行は、ブロックチェーン技術を用いることで透明性と信頼性を高められると考えています。地元の村人から海外のピア・ツー・ピア(貸し手と借り手をインターネット上でマッチングすること)の出資者に至る投資家を引き寄せ、東南アジアの中小企業によるリスクの高い地域密着型のプロジェクトやベンチャー事業に参加してもらうために、この技術を活用しています。ふるさと投資ファンドは、グリーンエネルギー関連の取り組みに充てる資金として日本でも使われていました。2011年の福島第一原発事故が起こった際に、1914年に建設され廃炉となっていた奈良県の水力発電所を復活させようという動きで活用された例があります。

ふるさと投資ファンドの成功を受け、この資金調達の仕組みはベトナムでも採用されました。マレーシアとタイも、十分に発達していない自国のベンチャーキャピタル市場が残した空白を埋めようと、ふるさと投資ファンドの可能性を探っています。

3.オープンバンキングにより、中小企業と貸し手の関係が強化

東南アジアの銀行は、近い将来、第三者の金融サービス業者と顧客情報を共有できるようにしていきます。欧州でこうしたオープンバンキングの取り組みが受け入れられ、東南アジアもその潮流に乗ろうと動き始めています。

中でも、オープンバンキングの導入をけん引したのはシンガポールでした。同国ではシンガポール政府が自らAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)のプラットフォームを立ち上げ、より簡単かつ安全にデータを共有する場を作りました。

シンガポール当局の動きにより、銀行などの金融業界の従来のプレーヤーも刺激を受け、オープンAPIをベースとした新たな金融サービスを開発するために、フィンテック系スタートアップと協働するようになっています。またシンガポールは、APIによって生まれたサービスを一覧にして分類できるリストを作成し、利便性を高めています。

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東南アジアの銀行各社には、オープンバンキング向けのITインフラの構築が求められています。これにより、中小企業がオンラインで、より好条件で自社に適した金融サービスを利用できるようになるのです。

ASEAN加盟国の経済成長は、各国内のビジネス環境が中小企業の成長を促すものでなければ持続しません。フィンテックにより、融資を利用できない状況はゆっくりですが確実に過去のものとなりつつあります。そして、大半の東南アジア企業にとって、明るい未来が待っていることでしょう。

画像提供:Armando Arauz

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