ニュージーランドの国鳥「キーウィ」を守るドローン

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[Publisher] The Guardian

この記事はThe GuardianのEleanor Ainge Royが執筆し、NewsCredパブリッシャーネットワークを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@newscred.comにお願いいたします。

ニュージーランドで絶滅が危惧される鳥、キーウィ。薄暗い林を走り回りながらそのヒナを狙う巨大ネズミ。しかし、このげっ歯類を狙う天敵がいます。害獣対策ドローンです。

ニュージーランドの環境保全省(DoC)は国内の生物多様性を守るため、新たなハイテク戦略を検討しており、こうした光景がニュージーランドの広大な原野で繰り広げられるのもそう遠いことではないでしょう。

この害獣対策ドローンは、長さ7メートルの小型ヘリコプターのような外観で、切り立った崖や深い峡谷、密生する植物に阻まれて、人間が立ち入ることができない地帯の害獣駆除を目的として開発が進められています。

通常、自然保護官が、遠隔地まで向かい、罠を仕掛け、イタチ、ネズミ、オポッサムなどの害獣対策を行っています。

人間の立ち入りが難しい区域では、有人ヘリコプターを使用して広範囲な駆除を行っていますが、死亡事故が立て続けに起こったことで、DoCでは安全でコストがかからず、環境にやさしい代替策を検討しています。

ドローンはヘリコプターの3分の2のコストで済み、CO2排出量を85%削減できます。これは、2050年までのカーボンニュートラル達成を掲げている政党の優先事項でもあります。

罠を落とすとき、ドローンはヘリコプターよりも精度が高く、その誤差はわずか数センチ。的確にターゲットを狙うことができます。絶滅危惧にひんしている在来種が誤って罠にかかってしまう事故が後を絶たないため、これは重要な要素になります。

「在来種が繁殖できる環境を復元するには新しいツールや手法が必要です」と、ユージーン・セイジ大臣は説明します。「ドローンには、画期的な変化をもたらす可能性が秘められています」。

「Predator Free 2050(2050年までに害獣を根絶することを目標にした、ニュージーランド政府が発表した計画)」プログラムの責任者を務めるブレント・ビーヴェン氏は「ニュージーランドにおける害獣駆除の対象地域は100万ヘクタール以上の面積になるため、ドローンを使える場所が山ほどある」と言います。

「今、世界は大きな変化の時を迎えています。現在ヘリコプターを使ってはいますが、CO2排出量をゼロに近づけるには、別の選択肢を検討する必要がある」と、ビーヴェン氏は言います。「害獣を検知すると、自動的にドローンを出動させる仕組みを完成させたいのです。そうなったら、素晴らしいと思いませんか?」

ビーヴェン氏によると、3年間に亘り、117の離島で害獣駆除を実施した後、プロジェクトは次の段階に進むのだと言います。

ニュージーランドの新興企業、Environment & Conservation Technologies(ECT)は、79万ニュージーランドドル(約50億円)の助成金を受け、過酷な高山環境や予測不能な天候など、ニュージーランドにおける森林特有の課題に耐えられるドローンテクノロジーの開発に取り組んでいます。

ECTは、太平洋とガラパゴス諸島で、ドローンを用いた同様の害獣駆除プログラムを実施しています。

クマネズミやドブネズミが増殖し、脆弱(ぜいじゃく)な鳥の生態を脅かしていたガラパゴス諸島では、ECTが2基のドローンを配備し、2日間で184ヘクタールの地域で害獣駆除を行う作戦を実施しました。

諸島海洋環境保全(Island Conservation)の南米地域ディレクター、カール・キャンベル氏によると、ドローンは数百ドルもの経費削減になるだけでなく、従来の害獣駆除方法と比較しても、迅速に対応できると言います。ここでもやはり以前はヘリコプターが使用されていたそうです。

「ドローンを使った方がより精度の高い駆除ができます。また、計画の実現性が高く、コストを抑えられるので、世界中の小規模から中規模の島で害獣駆除を実施できるでしょう」と、キャンベル氏は言います。

ガラパゴス諸島における害獣駆除の成功は、世界でも初めての例と考えられています。

ECTのサム・ヴァイ氏は、ガラパゴス諸島でのプロジェクトで得た知識を生かし、自然保護地域でドローンを活用することに意欲的です。しかし、空から害獣を狙う「兵器」としてドローンを使用することはないと強調します。

「ニュージーランドは極端に入り組んだ地形で、人間が罠を設置するのは非常に危険です」と、ヴァイ氏は言います。「ドローンなら、有人ヘリコプターでは危険な場所でも飛行できます。例えば、ヘリコプターでは経費がかかりすぎる離島にも飛ばすことが可能です。有人ヘリコプターと比較しても、精度は高く、正確な位置に罠を設置することができます」。

ニュージーランドの奥地で使用するため開発中のドローンは、大量の罠を搭載することができるだけでなく、必要な人員が、地上のドローンの操縦士1名と制御を担当するエンジニア1名だけになります。

117の離島における害獣駆除に成功した政府は、現在本土でのプロジェクトに注目しています。

ドローンの検証は2022年まで行われ、3段階のテストを予定しているそうです。

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