男性の育児休暇とキャリアについて語る起業家「どちらか一方を選ぶなんてありえない」

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[Publisher] The Guardian

この記事はThe GuardianのMiranda Bryantが執筆し、NewsCredパブリッシャーネットワークを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@newscred.comにお願いいたします。

米国初の情報投稿ソーシャルサイト「レディット(Reddit)」の共同創設者、アレクシス・オハニアン氏は自分が父親になるとわかってから約3年の月日がたってなお、自分がいずれ死ぬということを深く意識していると話します。

テニス界の女王であり、現在の妻でもあるセリーナ・ウィリアムズから陽性反応を示す妊娠検査薬を渡され、その数カ月後、娘のオリンピアを出産中に生死の境をさまよう彼女を見たとき、そんな考えに襲われたそうです。彼は今後もこの感覚は消えないだろうと考えています。

「圧倒的なあの死の感覚は本当につらいものでした。この先、一生かけて克服しなければならない、最も大きな課題なのかもしれません。」と、企業投資家であり、大富豪でもある36歳のオハニアン氏は、フロリダのパームビーチからメッセージを発します。自宅で仕事をしている彼は、2歳になったオリンピアを学校へ迎えに行きます。

米国はいまだに産前産後休暇・育児休暇を義務化していない国の一つであり、この制度を導入している企業もほとんどありません。

しかし、オハニアン氏のケースは違いました。彼は16週間の有給育児休暇を取得したのです。

「妻とキャリアをてんびんにかけなくてはならないなんて想像もできないし、1秒たりと考えたことはありません。現代社会でそんなことを要求するのは、あまりにも非人間的なことです」

子どもを持った経験はオハニアン氏に大きな影響を及ぼしました。今では米国のイクメンとして有名になり、有給の育児・介護休業の法案成立を提唱しています。

「私と妻の場合、自分たちのキャリアがあり、家族もいて、子どもが生まれるとき、これ以上ないほどのアドバンテージがありました。それでも、この時期のことはトラウマとして記憶に残っているのです」と彼は言います。妻のウィリアムズ(当時38歳)は、緊急帝王切開で出産した後、肺塞栓(そくせん)症を患いましたが、九死に一生を得ました。何度も手術を受け、オリンピアが生まれてから6週間は寝たきりの状態だったため、育児のほとんどをオハニアン氏がすることになりました。それまで、彼は赤ちゃんを抱っこしたこともなかったと言います。

「オムツの替え方や、さまざまなことを学びました。私の担当となったこのちっちゃな人間の扱いに、とにかく慣れようとしたんです」

この短期集中育児を経験したおかげで、彼は何が起こっても切り抜けられる自信がついたと言います。「最初に何がどうなっているのか見当もつかない混乱した時期を経験したおかげで、自信と冷静さが身についたと思います。じっくり考えて、うまくいったと思っています」

子どもが生まれた当初から、イクメンとしての経験をSNSで共有してきたオハニアン氏は、父親が育児をするのはいたって普通のことだと言い、偏見をなくそうとしています。

文化は変わり始めていて、その証拠に、SNSやグループチャットでは「育児するパパ」がいっぱいだと彼は主張します。

「SNSには、(育児担当の)パパの日常がいかに平凡で変わりばえしないかが掲載されるようになりました。ただの父親。子守ではなく、父親であること。それは重要な変化だと思います」

米国では、アーティストのチャンス・ザ・ラッパーや野球選手のダニエル・ハドソンなど、育児休暇を取得する有名人が増えており、「男らしさ、そして父親に対する認識が大きく変化している」とオハニアン氏は話します。

オハニアン氏の共同創設者であるスティーブ・ホフマン氏は、2005年にヴァージニア大学を卒業後、レディットを創設し、その翌年には1000万ドルから2000万ドルで会社を売却しています。現在レディットは、米国で最もアクセス数の多いウェブサイトの一つです。

男性の育児休暇取得を奨励するためには、男性の成功者のイメージを再定義することが重要な役割を果たすと彼は言います。「どちらか一方を選ぶなんてありえないんです。子どもが生まれるとき、育児休暇を取得するか否かにかかわらず、男性はキャリア志向にも、意欲的にも、効率的にもなれるんです」

父親になるまで、育児休暇に対して現実味がなかったとオハニアン氏は言います。レディットが育児休暇のポリシーを導入したとき、正当だと考えたものの、その重要性を算出したことはないと認めています。

自分が数年後に取得するまで、この制度が不可欠なものであることに気づきませんでした。実際は誰でも利用できるべきなのに、米国では、一部の幸運な男性にしか許されていないことにも気づきませんでした」

昨年、彼は父親グループとともにワシントンDCへ向かい、議員と面会しました。「双方が(育児休暇は)必要な制度だと同意でき、非常にポジティブな気分で戻ってきました」と、彼は言います。

最大の課題は資金の調達方法ですが「そこまで議論を進めることができてうれしい」とのことです。また、210万人の連邦政府職員に12週間の有給育児休暇を支給する法案が可決されたことにも期待を寄せているようです。

複数の育児休業法案のうち、どれを支持するかは明らかにしていないものの、資金に関していえば、保険基金モデルを通じて一部の州で導入されている有給育児・介護休業策は、全国で機能するのではないかとオハニアン氏は考えています。新米パパママの場合、育児休暇は半年が理想としながらも、それは「高望みしすぎかもしれない」と認めます。

数年後に自分が取得するまで、この制度が不可欠なものであることに気づきませんでした。

アレクシス・オハニアン

母親を脳腫瘍で亡くした彼は、病気の親族の介護も育児・介護休業法案の対象にしてほしいと希望しています。「20代前半に病気で衰弱した親の介護を経験したので、その大変さはよくわかります。私の場合は、起業家という立場が幸いして、好きなように予定を組むことができましたが、現実はその自由がない人がほとんどです」

国内で法律が制定されていないため、テクノロジー業界を中心とする民間企業が、福利厚生の一環として、有給の育児・介護休暇を提供するケースが増えています。Facebookの最高経営責任者(CEO)マーク・ザッカーバーグは、次女誕生に伴う育児休暇取得を発表。同社で設けている4カ月の育児休暇制度を公表する良いチャンスと捉えたようです。

育児休暇をめぐる企業間の競争を「軍核競争」に例えて興奮気味に語るオハニアン氏。今後10年間で、他の業界でも技術職の人材需要が高まるため、育児休暇を取り入れる企業は増えると予測しています。

育児休暇は、従業員の定着率と生産性にとっても有効です。「自分の城をきちんと管理し、家庭がうまく行っているという安心感があれば、従業員の生産性が上がる。それは本能で感じたことでした」

イニシャライズド・キャピタルでは16週間の育児休暇を提供しています。昨年は、3人の父親を含む従業員の4分の1が休暇を取得しました。自らを「ビジネスパパ」と称するオハニアン氏は、母親向けの求人サービス「Mom Project」や育児アプリ「Kinside」などの「ファミリー向けテクノロジー」企業への投資も始めています。

しかし、男性も女性と同様に育児休暇を取得しなければ、男女平等を実現することはできないと彼は言います。「誰が妊娠したとしても、両親がそろって育児休暇を取れれば、出産で一方だけに負担が増えることはないはずです」

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