創業40年、イタリアの村をひっそりと活性化させたブルネロ・クチネリ

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この記事はInStyleのEric Wilsonが執筆し、NewsCredパブリッシャーネットワーク を通じてライセンスされたものです。ライセンスに関する問い合わせはlegal@newscred.comにお願いいたします。

あたりがひんやりとした空気に包まれ、大理石のタイルがあざやかなピンクに変わる。そんな火曜日の夕暮れ、ウンブリアのソロメオ村でサンセット・プレスカンファレンスが行われました。

「尊厳という言葉は、人によって意味合いが違うのでしょうか?」

「あなたの人生で最悪の出来事は?」

「人生の意味とは?」

記者たちがこうした哲学的な質問を投げかけた相手は、イタリアで最も哲学的な思想を持つファッションクリエイターとして知られるデザイナー、ブルネロ・クチネリ氏です。

確かに、世界中から500人以上の記者がフィレンツェとローマの間にあるこの村に集まったのは、40年以上に及ぶクチネリ氏のカシミヤ帝国が育てた成果を見るためでした。それは機械的に大量生産された商品ではなく、人間の尊厳と社会的利益を優先してきた企業が大切に育ててきた果実です。

65歳の誕生日を迎えたばかりのクチネリ氏は、数十年かけてソロメオ村の活性化に数百万ドルもの投資を行ってきました。村の頂上にある中世の城と要塞(ようさい)の再生から始め、かつて山の麓の景観を汚していた工場や倉庫の修復、撤去作業を続けています。

ひまわり畑を作り、民主的な組織であることを感じさせる広い作業スペースを備えた最新式の工場を開くとともに、将来的にはブルネロ・クチネリ氏のビンテージを醸造するワイナリー建設を予定しており、最近はトラバーチン大理石で壮大な記念碑を建てました。

この記念碑は『人間の尊厳への賛辞』と呼ばれる直径80フィート(約24メートル)の半円構造で、アメリカ、ヨーロッパ、アフリカ、アジア、オセアニアの五大陸をシンボル化した5連のアーチで支えられています。

何千年もの間、維持できるように設計されたこのアーチは生涯にわたって、絶妙なバランスが取れた会社であることを追求してきた証しだとクチネリ氏は語ります。これは、価格が数千ドルのカシミヤセーターやスーツの販売をなりわいとする責任者が掲げる目標としては理想主義的に聞こえるかもしれません。それでも水曜日のニューヨークファッションウィークに続いて、ロンドン、ミラノ、パリでもコレクションが開催されるなど、熾烈(しれつ)なファッションショーのシーズンを迎える今こそ、彼の事例は真剣に調べる価値があるのです。

テクノロジーの進化や高級品に対する意識の変化、ミレニアル世代の間でマーケティングの流行(バズる)が受け入れられるなど、さまざまな要因によってデザイナーの状況は大きく変わりつつありますが、クチネリ氏のビジネスは20%以上も収益を伸ばしています。この数字は、富裕層が丁寧で季節を選ばないような無駄のない服を求めているという証しでしょう。

クチネリの服は長年愛用できるようデザインされています。

430,000平方フィート(約39,950平方メートル)の工場(カシミヤのニットやレザージャケットの製造工場)を見学したゲストが目の当たりにする製品はどれも美しいものばかりです。

この工場では労働者も役員と同じ待遇を受けています。始業は9時、昼食休憩は会社が補助し、5時半に退社した後は、仕事に関するメールのやり取りは禁止されています。同社の従業員は1,700人を超えます。

以前から「人間主義的資本主義」というコンセプトに賛同を示しているクチネリは、収益の大部分を環境美化プロジェクトや専門学校の設立など、地域社会全体に貢献をもたらす取り組みに投資しています。

ソロメオ村自体は「カシミヤのディズニーランド」と呼ばれており、同社では観光ツアーの一環として見学を受け入れていますが、ワイナリーや記念碑が設立され、ますますその魅力を増しています。

長年かけてクチネリ氏をインタビューし、取材を重ねてきた私は彼のビジョンにすっかり魅了されてしまいました。より多く販売し、より多く製造し、より多く搾取する。そんな一般的なぜいたくの考え方とは完全に逆行しているように思えたのです。そして時々、不思議に思うのです。この人は実際どうやってもうけを出しているのだろう?と。

突き詰めると、それはすべて自己の利益ではなく、皆が幸せになる『善』のために行動するという彼の信念にたどり着きます。若い頃から哲学に関心を持ち、貧しい農民を支援してきたクチネリ氏に染み付いている考え方です。

クチネリ氏は、ほとんど電子メールを使わないことで知られています。それは、個人のプライバシーのためだけではありません。スタッフが時々席を立ってお互いに行き来できるよう、席が離れたオープンプランのオフィスをデザインしました。こうした彼の信念は、著書の「The Dream of Solomeo: My Life and the Idea of Humanistic Capitalism(ソロメオ:わが人生と人間主義的資本主義の概念)」に掲載されており、企業のリーダーの間で定期的に共有されています。

「私たちは親として大きなミスを二つ犯したと思います」と、次世代に伝えたいメッセージとしてクチネリは語ります。「まず常に警戒心を持て、恐怖心を持てと子どもたちに教えてきたこと、それと学校の成績が悪いと死ぬまで働きづめになるぞと言ってきたことです」

人間の魂に目を向けずに、科学だけで世界を支配しようとするのは間違いだと彼は言います。

記者会見では「人生の意味」を即答できなかったものの、あの質問は良かったと彼は強調しました。

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