毎年500校が廃校に?増え続ける廃校が、コミュニティーセンターや水族館に大変身!

[Publisher] Travel & Leisure

この記事はTravel & LeisureのIan Centroneが執筆し、NewsCredパブリッシャーネットワークを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@newscred.comにお願いいたします。

「モノやコトをできるだけ無駄にしない『もったいない』という精神は、日本文化に深く根付いています」東京都千代田区の人気のない静かな通りを歩きながらそう説明するのは、シルヴィア・ヤマワキ氏。「もともとは宗教的な意味合いを持っていたようですが、私自身は祖母からこの精神を教わりました。祖母が生まれた第二次世界大戦中は、食べ物がほとんどない暮らしだったそうです」とヤマワキ氏は言います。

東京のビル群へと夕日が沈みかけている時間にもかかわらず、ヤマワキ氏に連れられ向かった中学校の校舎周辺には、多くの人が残っていました。アーバン・アドベンチャーズのローカルガイドとして働くヤマワキ氏。彼女はこの日の夜、米ニューヨーク・タイムズ紙との共同で新たに企画された人気ツアー「東京:過去・現在・再利用」に私たちを同行させてくれました。

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いくつかの門をくぐり建物の入り口に近づくと「3331 Arts Chiyoda」と書かれた看板が見えてきました。学生たちが屋外でグループを作って活動しているのが分かります。あるグループは勉強会を開いているのか、輪になって静かに座わり、また、別のグループは、カメラマンに録音助手、出演者といったスタッフがそろうなか、映画制作に取り組んでいます。すぐそばで楽しそうに笑ったり、のんびりとくつろいだり、人々が思い思いの時間を過ごしています。その中を、通り過ぎ、少し古びた校舎を目指し、階段を上っていくと、授業が行われていないことに気が付きました。

「もったいない精神」の典型的な現れである3331 Arts Chiyoda。この社会事業は、都内の練成中学校跡地を利用して運営されています。東京都が世界有数の人口密度であることを踏まえると、廃校舎が貴重な施設として再利用されるのもうなずけます。もう使われなくなった校舎が崩れて荒廃していくのを待つだけでなく、さまざまな目的に使えるアート・文化センターとして、一般公開(完全無料)されることになったのには、そうした事情も手伝っています。廃校舎の再利用は自治体にとっても、学校にとってもWin-Winな関係なのです。

校舎内にはハンドメイド製品の売り場があり、衣料品やアクセサリー、子ども向けのおもちゃ、本などで埋め尽くされています。上階の教室は、ギャラリーや展示スペースとして現在活用されており、日本の芸術作品が入れ替わりで展示されています。さらに、かつてもぬけの殻となっていた廊下の傍らには、会議室やショップエリア、一般向けのイベントスペースもあります。体育館は、仕事帰りにスポーツで汗を流したいという地元住民に利用されています。また、校舎内にはカフェもあるため、おなかがすいても安心です。カフェで提供されているのは、小学校の給食によく出る、子どもたちにも人気のシンプルな「コッペパン」。こちらのカフェでは、昔ながらのこのパンが現代風にアレンジされています。この事業は、全体的にどこか懐かしさを残しながらも、日本社会に深刻な影響を与えている問題に対するクリエーティブな解決策として期待が高まっています。

その問題とは、急速に進む高齢化です。実際、65歳以上の人口が占める割合は、日本が世界で最も高く、およそ27%となっています。2011年以降、人口減少は着実に進行しており、2014年には1億2700万人にまで減少したといわれています。専門家の推測によると、現在のような人口動態の減少傾向が続くと、2040年までに日本の人口はさらに16%減り、1億700万人へ、2050年までには9700万人にまで落ち込むといわれています。

「東京のような大都市では、子どもがたくさんほしいと思う家庭は減っています」とヤマワキ氏。養育費の高さや親の長時間労働などが理由として考えられます。さらにヤマワキ氏は「日本では母親は家で子どもの世話をするものと考えられていますが、女性たちも働くことを望んでいるのでしょう」と指摘します。「一方で、田舎に住んでいる人の多くは高齢者です。子どもや孫たちは、都会に出ていってしまっているからです」。

これらはすべて、若い世代が、定年を迎える中高年層にとって、当たり前とされていたかつての生活スタイルや社会からの期待を塗り替えられているといえます。日本では、十分な生徒が集まらないという理由により、毎年およそ500校が閉校しているといわれています。閉校される学校の多くは郊外ですが、東京や京都のような大都市でも閉校に至るケースもあります。

2010年、文部科学省は、増え続ける日本の廃校活用を促進するプロジェクトを打ち出しました。2002年から2017年の間に閉校した学校7583校のうち、2018年3月時点で、なんと75%もの学校が新たな用途で利用されるようになりました。一部の学校は3331 Arts Chiyodaと同様、アートを活性化するための文化コミュニティーセンターとしてよみがえりました。その他にも、廃虚となった校舎は、さまざまな創意あふれる方法で変身を遂げたのです。

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多くの学校は宿泊施設に変身しました。その形も、素朴なゲストハウスから、ぜいたくなキャンプといわれるグランピング用の施設まで多岐にわたります。一つの例として、ハレとケ デザイン舎があります。徳島県の山あいに位置するこのホステルは旧下野呂内小学校をリノベーションして作られたもので、レストランとカフェが併設されています。気分を変えて、五島列島に作られたノルディスクヴィレッジには、校舎を利用したブティックホテルがあり、北欧スタイルをヒントにしたスタイリッシュな部屋が3室用意されています。また、田舎でぜいたく感のある休暇を楽しみたい方には、「ファームグランピング」を体験できる茨城県のなめがたファーマーズヴィレッジがおすすめです。

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旧校舎は、宿泊施設にとどまらず、さまざまなものに生まれ変わっています。2018年には、四国・高知県にむろと廃校水族館がオープンしました。旧椎名小学校は地域内の深刻な生徒不足により2006年に閉校しましたが、今は活気に満ちています。京都国際漫画ミュージアムも、大勢のファンが押し寄せるようになる以前は、龍池小学校の校舎として利用されていました。また山梨県にあるサイトテック社は古い中学校校舎を利用し、イノベーティブなドローンの新デザインを開発し、製造、実験を行っています。

「廃校に新たな命が宿るのを見るのは、とても面白いことです。ほとんどの廃校は地方にあり、別の用途を見つけられれば持続可能なツーリズムのための観光資源にもなります」と日本政府観光局の広報担当を務める松浦恵子氏は言います。「古い建物を残しながら地域に活気を取り戻し、その地域ならではの魅力を楽しみたいという観光客を引き付けることができます」。

この先、どんなアイデアが新たに廃校をよみがえらせるか目が離せません。「もったいない」は、突き詰めると単に無駄を減らすだけではなく、壊れたものを修復し、モノの寿命が続く限り最後まで活用するという意識を消費において持つことを意味します。まだ使える、今あるものを大切にすること。日本以外の国々も、改めて学ぶべきです。


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