危機に直面する太平洋諸島、海運業のCO2排出量ゼロに挑む

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[Publisher] The Guardian

この記事はThe GuardianのBen Dohertyが執筆し、NewsCredパブリッシャーネットワークを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@newscred.comにお願いいたします。

2050年までに太平洋でのすべての海上輸送におけるCO2排出量ゼロにすることを目的に、フィジー・マーシャル諸島、サモア、バヌアツ、ソロモン諸島、ツバルといった五つの島国が「太平洋ブルーシッピングパートナーシップ」を締結しました。この目標に向け、同パートナーシップは5億ドルの資金調達を目指しています。

このパートナーシップでは、2030年までにCO2排出量を40%削減し、そして2050年までに完全な脱炭素化を実現することを目標としています。

国際機関からの助成金や融資、民間セクターからの直接投資に加え、「ブルーボンド」と呼ばれる域内債の発行によって資金調達を見込んでいます。

この資金は、現在使用中の客船や貨物船を低炭素技術で改良するため、またCO2排出量ゼロの船舶を新規購入するために使用されます。太平洋諸島に住む人々は、移動や医療、日々の暮らし、世界とつながりを持つために船に頼った暮らしをしています。

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こうした島国は、燃料を輸入に頼っており、燃料高騰や供給遮断の影響をもろに受けています。これらの地域では、必要な燃料の95%を輸入しており、平均国内総生産(GDP)の40%を石油の輸入が占めています。そして、燃料消費量は輸送部門が最多となっています。

広大な海域の中に小さな島が集まった諸島では、地域社会のつながりや経済発展のためには、海を渡ることが欠かせません。日常的に利用できる島間の交通手段がなければ、国内の社会的・経済的発展、対外貿易が大きく阻害されることになります。

気候変動の影響により海を渡ることはますます困難となり、移動手段が断たれていきます。海面が上昇し異常気象も増える中、海上の移動は難しく時間もかかるようになり、便の欠航が頻発するようになっています。また港や給油設備などの交通インフラが老朽化し、破損する事態も発生しています。

フィジー政府とマーシャル諸島政府が共同で発表した資料によると、他の主要産業部門と比べ、「太平洋諸島における、海運業の持続可能な発展に向けた投資は、これまでごく限られた範囲でしか行われてこなかった」とされています。

「持続可能かつ脱炭素化された海運業を行うには、相当な額の投資が必要となります。その第一歩として、まずは10年間の取り組みを推進するため、少なくとも5億ドルの投資が必要です」。

マーシャル諸島のデイビッド・ポール環境大臣はニューヨークで行われた国連気候行動サミットで、資金を確保することにより「われわれの地域での海運業に急激な改革」を起こせるだろうと語りました。

世界全体のCO2排出量のうち、太平洋諸島の排出量はわずか0.03%と推定されています。しかし多くの事例を踏まえると、気候変動の影響を真っ先に、そしてどこよりも身に迫って感じているのは、太平洋諸島なのです。西太平洋地域の一部では、世界平均の4倍近くの速さで海面が上昇しています。また自然災害が頻発する中、ますます深刻化していく大災害に何度も見舞われた国では復興力が弱まってきています。

フィジーのフランク・バイニマラマ首相は2019年5月、世界の主要排出国や経済大国は太平洋の気候変動適応に向けた支援を十分に行っていないと指摘しました。

「適応基金やグリーン気候基金を補充するなど、主要経済大国には資金調達に協力してもらわなければなりません。現代において、今、決定的な危機的局面を迎えているのです。行動を起こさなければ、危機的事態はあっという間に大混乱を巻き起こし、全世界で壊滅的な被害が出るでしょう。」

またバイニマラマ首相は、太平洋諸島が海運に依存していることについて、「海運部門の改革が必要であり、そのためには、二国間や多国間で協力して財政面でのパートナーシップを新たに確立することが求められます。域内債券のブルーボンドの発行も視野に入れています」。

ブルーボンドとは、環境や経済、気候の面で良い効果をもたらす海運・海洋プロジェクトの資金を集めるために、政府や開発銀行などが発行する債券です。

セーシェルは昨年、世界初のソブリンブルーボンドを発行しました。海洋環境の保全と漁業の保護のために、10年債として1500万ドル分発行しました。

南太平洋大学のミクロネシア持続可能輸送センターで科学・技術顧問を務めるピーター・ナトール博士はガーディアン誌に対し、太平洋のどの国にとっても海運は「絶対的なライフライン」だと述べました。

「海運なしでは太平洋諸島の経済は止まり、国民たちも暮らしていけません。ソロモン諸島やマーシャル諸島などの地域では、物資全体のうち8割から9割が船で運ばれてきます。海運にかかる費用は世界で最も多く、輸送ルートの距離は最長、しかし船の品質は最悪なのです」。

またナトール博士は、太平洋諸島は燃料の高騰の影響をもろに受けやすいと言います。その一例として、石油の価格があまりにも高騰したため、太平洋の離島で医師の訪問治療など、命に関わるサービスが遮断されてしまった事例を挙げました。

さらにナトール博士は次のように語っています。「太平洋は他の地域が動き出すのを待っていられません。もし解決の望みがあるなら、太平洋諸島に合わせた解決策を練らなければなりません。太平洋諸島が弱体化していくのを黙って見ているわけにはいかないのです」。

「太平洋諸島は、どこよりも大きなリスクを抱えています。そしてそれは、自分たちが気候変動を引き起こすような行動をとっているわけではなく、他国が引き起こした気候変動の影響です。人々の暮らしを守るために、私たちに今何ができるでしょう。答えは誰の目にも明らかです。そして、もう猶予は残されていません」。

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