ゴミに溺れるロシア リサイクルの不十分さに憤る人々

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[Publisher] Digital Journal

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「見てくださいよ、あのピラミッドのようなゴミの山!」ロシアの首都モスクワの向こうに佇(たたず)む悪臭が漂うゴミ山を指さしてため息をつくのは、電気技師のローマン・ユダコブさん(36歳)。

欧州最大級のゴミ集積場であるモスクワ市外のチモホヴォ(家庭ゴミや産業廃棄物が放棄されている場所)には、高くそびえるゴミ山が連なっています。一部でも焼却しようと、モスクワ当局は焼却場の建設を計画していますが、ユダコブさんを含む社会運動家は、焼却ではなくリサイクルを行うべきだとして反対しています。

「当局は燃やすことばかり優先させて、(リサイクルのためにゴミを)分別しようとはしません。そのための準備ができていないのです」。モスクワの東の方に見える高さ157メートルのゴミ山へ吸っていたタバコの吸い殻を投げ捨て、ユダコブさんは言います。

チモホヴォが開設されたのは、1970年代後半のことです。モスクワから80kmほど離れたこのゴミ集積場には、何台もの大型トラックが毎日やってきます。

住民は2013年以来、硫黄のような腐敗臭に対する不満や、廃水で地下水が汚染されているのではないかという不安の声を上げてきました。それに対し当局は、このゴミ集積場が悪臭の原因であることは認めましたが、ろ過システムがあるので今は安全だと主張しています。しかし社会運動家の人々は、その主張を疑っています。

公式データによると、ロシアでは、たった7%しかゴミがリサイクルされていません。欧州連合(EU)の統計局ユーロスタットによると、2017年にフランスは43%、ドイツは68%を達成しましたが、ロシアはその足元にも及んでいません。

ロシアの家庭ゴミのほとんどは、チモホヴォのような場所に行き着きます。そこに積み上げられたゴミは、何km先からでも見えるほどです。

処理しきれないほど溢(あふ)れたゴミやその焼却に対して、モスクワ周辺の住民は抗議の声を上げ、近年、ゴミの管理は激しい論争の的となっています。

Open since the late 1970s Timokhovo receives dozens of lorries every day from the Russian capital s...

それに対し当局が提案した策は、市内のゴミ集積場の一部を無くして、ロシアのゴミの15%を排出するモスクワから、北部のアルハンゲリスク地方にゴミを運び出すことでした。

モスクワから1000km離れた地域で始められた新たなゴミ集積場事業は、空前のデモを引き起こし、抗議する地元住民と建設作業員や警備員との間で対立が繰り広げられました。

意識改革が必要

この問題が一般市民の大きな不満になったことを受けて、ウラジミール・プーチン大統領は2018年12 月、新たにゴミ分別センターを200カ所開設し、リサイクル率を2024年までに60%引き上げると発表しました。

しかし、リサイクルを求める社会運動家の人々は懐疑的な反応を見せています。政府による過去のリサイクル政策はことごとく失敗し、効果が見られたのは、民間機関の取り組みばかりだったからです。

The Moscow region's Timokhovo solid waste landfill is one of the biggest in Europe

モスクワのチモホヴォは欧州最大級のゴミ集積場だ

「政府のリサイクルの話は見せかけだけなのです。地下鉄で広告を出したり、この問題に関する世論調査を行ったりもしましたが、今のところ政府は、国民の支援を急いでいません。」と、モスクワで小さなリサイクルセンターを運営するアリョウナ・ルディアクさんは話します。

2018年11月に開設した同センターは、環境協会ソビラトル(ロシアのゴミ収集サービス)が立ち上げた施設の一つです。毎日何十人ものモスクワ市民がこの施設を訪れ、自分で分別した容器包装材を置いていきます。

ソビラトルは、モスクワ近郊のゴミを収集したり、Social Networking Service(SNS)で回収場所を知らせたり、有料で直接家庭に訪問してゴミ収集を行ったりもしています。

ナタリア・ウンノバさんは、住んでいるアパートのバルコニーでリサイクル可能な資源ゴミの収集や分別を数カ月間続けていましたが、ゴミの回収を依頼することに決めた一人です。

「近くの(リサイクル)センターを調べましたが、閉鎖しているか、ゴミを1種類しか受け入れていないかのどちらかだったんです」とウンノバさんは話します。

ソビラトル創設者のレオニド・シニチンさんは「リサイクルの本格化に向けて乗り越えるべき困難は多くありますが、その原因は主に政府レベルでの意欲不足です。私たちは一般市民に(リサイクルの)やり方を示すこともできますが、それでは問題解決にはなりません。だから、意識と法律を変える必要性があるのです」と語ります。

ゴミ改革

今のところ、政府の取り組みは逆効果になってしまっているようです。

2019年1月に始動したいわゆる「ゴミ改革」は、ゴミ管理の透明性を高めるはずでしたが実際には、ただでさえ国民を煩わせている廃棄手数料が引き上げられ、国民の怒りを買ってしまうことになりました。

The entrance to Moscow region's Timokhovo solid waste landfill where authorities plan to build ...

当局が建設を計画している、モスクワのチモホヴォへの入り口

「引き上げられるべきなのは容器包装材の値段であり、廃棄のための手数料ではありません」と同改革の起草者の一人だったマキシム・シンガーキン前下院議員は言います。「国民が怒っている限り、リサイクルするように動機付けることはむずかしいでしょう」。

モスクワ市政府はAFP通信社へのコメントの中で、廃棄物で溢(あふ)れたゴミ集積場を閉鎖したあと、引き上げた料金分で新しい分別ゴミ箱の準備やコストが上がっている輸送費用に充てると述べました。

また、昨年には三つのリサイクルセンターが開設したうえに、9カ所が建設中であり、70万人以上の児童がリサイクルのメリットについて特別授業を受けたとことも主張しました。

こうした取り組みはあるものの、モスクワ市の主要な廃棄物処分業者にはリサイクルの浸透に向けた意欲が単に欠けているだけなのではないかとシンガーキン前議員は疑っています。

国営企業ロステックが一部を所有するRTインベスト(産業廃棄物の管理を行う投資会社)は、市内4カ所に置かれる焼却施設の建設にも参加していますが、シンガーキン前議員は利益相反が起きているのではと考えています。

「ゴミを分別・リサイクルするということは、焼却するゴミが減るということです」とシンガーキン前議員は言います。

RTインベストはリサイクルへの意欲がないことを一切否定し、同社が建設中の八つの分別センターは「当社の利益にかなうものだ」と主張しました。

エフゲニア・ソコロワ報道官は、「再利用できないものが焼却所に送られるのは、必ずゴミの分別をしてからです」と述べました。

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