トップインタビュー

世界を舞台とするビジネス創造企業として、
社会のニーズに応え続けます。

琴坂 将広(慶應義塾大学総合政策学部准教授) × 井上 亮(取締役 兼 代表執行役社長・グループCEO)

9期連続で増益を達成するなど、安定した成長を続けるオリックスグループ。1964年に日本にリースという新たな産業を普及させるために創業し、今では38カ国・地域で多角的に事業を展開しています。社会の変化に応じてビジネスチャンスを世界各地で見いだす柔軟性、専門性と高いリスク管理能力、外部の事業パートナーとのネットワークなど、さまざまな強みを武器に、オリックスは次世代における真のグローバル企業を目指し挑戦を続けています。

オリックスは巨大なスタートアップ企業

琴坂:グローバル市場で新しいビジネスモデルを開発するスタートアップ企業が注目されていますが、オリックスはまさに起業家の集合体であり、巨大なスタートアップ企業といえるのではないかと感じています。

井上:創業時から手掛けるリース事業のイメージもいまだに強いようですが、現在のオリックスは、さまざまなノウハウを積み重ねながら「ファイナンス」から「投資」、「事業」へと事業領域を拡大してきています。

琴坂:本来、金融の役割は、単なるレンディング(融資)ではなく、まさにオリックスのように事業の成長性や将来性を見極めて投資することです。ダイナ ミックに事業を創造し続けるオリックス独自のビジネスモデルを、正しく投資家に伝えていく必要があります。

オリックスの競争力の源泉とは

琴坂:新しい事業領域への投資基準をどのようにお考えですか。

井上:中期的な経営目標で掲げている「ROE11%以上」を達成できる案件かどうかを一つの指標にしています。この指標がマイナスからのスタートでも良いのですが、この目標を達成できる見通しがなければ事業投資を行いません。

琴坂:将来の成功を見込みやすい案件は多くの投資家との競争となり、オリックスが案件を獲得しにくくなるという懸念はないのでしょうか。

井上:確かに良い案件ほど競争も激しくなり、決断にスピードが求められます。そのため、現場には自ら判断し交渉できるプレイヤーが求められます。事業投資をトップダウンで指示しても概してうまくいきません。決裁権限はトップにあっても、案件は常にボトムアップ型で社員から醸成される仕組みであることが重要です。

琴坂:多様な領域での事業投資を成功させる力の源泉として、創業時から培われてきた専門的な金融知識が基盤になっていると感じます。

井上:投資する事業の将来性を見極め、リスクをコントロールするためには、金融に加えて会計、法務、税務などの専門知識が不可欠です。事業の将来性 を見極める役割は主に営業部門が担いますが、一方で会計、法務、税務などの専門チームを設け、案件を精査できる体制を築いています。

琴坂:満期があるリースや融資などの取引に比べて、投資には常に詳細なモニタリングが必要になります。

井上:オリックスにも失敗事例はありますが、失敗があるからこそ次の成功につながると考えています。失敗から学ぶノウハウは100件の成功に匹敵するとの思いから、担当者にペナルティーを科すことはありません。

現場で培われたオリックスへの信頼

琴坂:優れた経営資源をお持ちだということは理解しましたが、その上で比較的有利な条件で投資案件を成立させることができているのはなぜですか。

井上:これまでに培ってきた知見や専門知識をもとに案件を検討し、投資価格を間違えなければ大きな失敗はありません。商社をはじめとしたさまざまな業種の企業と競合しますが、他の企業では既存事業との相乗効果を目的とするケースも多いと思います。しかしオリックスは常に当該案件単体の採算から判断して投資しますので、案件のデューデリジェンス(査定)と投資価格の妥当性の見極めを非常に慎重に行います。

琴坂:安くて良い案件には競合も多いはずです。オリックスの場合は入札ではなく相対取引が多いそうですが、なぜオリックスが投資先企業からパートナーと して選ばれるのでしょうか。

井上:短期的な視点で収益を追い求める投資家の場合、長期的に見れば投資先の企業価値を損なってしまうケースも多いと思います。一方でオリックスは、投資先企業の長期的な成長をサポートし、企業価値を向上させることを重視しています。例えば、オリックスグループの日本全国の営業ネットワークを活用して投資先企業の商品販売を支援し、オーナー経営者には事業承継のサポートを行うこともあります。また一定のレベルまで企業価値が向上した時点で次の株主に売却するケースもありますが、投資先の経営陣の意向を尊重して売却先を選定します。このような実績からご信頼をいただき、ビジネスパートナーに選んでいただけるケースが多くあります。

琴坂:たとえ短期間で利益を上げることができるとしても、その基本方針は変わらないのでしょうか。

井上:自己資金で投資しているから何をしても良いなどと思ったら、その案件は必ず失敗します。オリックスの株主やお客さま、そして当社社員の全員がハッピーになることが重要です。さらに格付機関の向こう側にいる債券投資家のことも考慮しなければなりません。完全にバランスをとることは容易ではないですが、この四者の利益を意識して事業を遂行すれば、自ずとオリックスの社会的責任が果たせると考えています。

琴坂:オリックスは、事業を通じて社会に貢献する、いわばサーバント(召使い)として存在しているわけですね。

グローバル人材とは

琴坂:世界中で多角的に事業を展開するには、金融・会計・法務・税務の各専門家はもちろん、多様な事業の運営を担う人材が必要です。どのように適切な人材を確保されているのでしょうか。

井上:社内での育成だけでなく、必要に応じて専門知識をもつ人材を社外から採用します。国内だけでなく、海外も同様です。

琴坂:社内にこだわらず、常に最適な人材を世界中から採用できるネットワークをお持ちだということでしょうか。

井上:海外でも40年以上にわたりビジネスを展開しているので、オリックスの事業に参画したいと言ってくれる人材を比較的スムーズに見つけることができます。

琴坂:日本のみならず世界中で、事業投資を受け入れる企業からだけではなく、事業を運営する人材からもオリックスが選ばれているということですね。

井上:日本企業は、日本人社員をグローバル化することばかりに注力しがちです。一方でオリックスは、米国市場なら米国人、中国市場なら中国人を採用しています。数年間駐在するだけの日本人社員よりも、ローカルの社員の方が業務をスムーズに進行できるのが現実だからです。

琴坂:現地でパフォーマンスを発揮できる人材を採用しようとしたら、日本人ではなく、現地の人材だったというのは自然ですね。

井上:現在38カ国・地域で事業を展開していますが、日本人駐在員は約60名のみで、主に財務やリスク管理業務を担っています。グローバルに事業を展開する上でガバナンス体制を整えるためには、現状では日本人が経営管理に携わる必要があります。企業統治を全世界でしっかりと行うために、日本人社員を少数精鋭で派遣しています。

琴坂:外部の専門家に現場を任せながらも、本社がきちんと統治するということですね。では、日本国内での次世代の育成については、どのようにお考えですか。

井上:若手のうちからさまざまな領域の事業を経験させることが重要だと考えています。私が入社したときは、オリックスは社員数約500名の会社だったため、毎日のように違う業務を経験することができました。会社が大規模になっているからこそ、優秀な社員を一つの事業部門で抱え込まないように意識する必要があります。

オリックスから世界に新しいビジネスモデルを

琴坂:現在のところ、オリックスが新たに手掛けるビジネスは日本からスタートしています。日本がいわば「ビジネスの実験場」としてふさわしいということでしょうか。

井上:海外と国内に分けて考えることなく、ビジネスチャンスがどこにあるかを重視しています。現時点では日本発の事業が多いのですが、既に投資に関しては米国発の案件も多くあります。まだ実現できていませんが、米国発の事業を日本に持ち込みたいという相談を受けることもあります。

琴坂:世界各国から現地発の事業が出てくるようになれば、まさに真のグローバル企業といえると思います。

井上:東南アジアでは現在はリースを中心に事業を展開していますが、例えば優秀な社員を多く抱える中国の投資先企業と一緒になって、東南アジアでもフィンテック*1やIoT*2を活用したビジネスを展開できないかと模索しています。

琴坂:日本で生まれたビジネスモデルが海外に広がり、同時に世界中の拠点からも新しいビジネスモデルが生まれる。それらを世界中から採用した才能ある人材が各地域に広げていく。近未来の理想像への挑戦が既に始まっているということですね。

井上:先日、世界から幹部が集まり、グループの経営会議を開催しました。日本を含む各拠点で展開する事業を紹介し、「このビジネスモデルはうちの地域でも展開できるね」と議論しながら、コミュニケーションを深めました。

「白鳥」ではなくまだまだ「アヒル」の自覚

琴坂:100年後のオリックスは、どのような会社になっていると想像されますか。

井上:全く異なるビジネスモデルの企業になっていると思います。これまでも社会や経済環境の変化に応じて、新たな事業領域へとチャレンジを続けてきました。

琴坂:ではそのときに変わらないものとは何でしょうか。

井上:お客さまと真摯に向かい合う姿勢です。新たなビジネスチャンスは常に現場にあります。新しい事業の種を見いだすための経験と知識を、常に現場での仕事を通じて蓄積し続けなければなりません。

琴坂:100年後も変わらず現場に軸足を置き、お客さまとの対話から時代が必要とする機能を見いだし、それを提供する。まさしく社会の潤滑油としての本来の金融機能だと思います。オリックスは大企業でありながら、起業家精神をもった多くの社員が新しい事業を創造し、結果として9期連続で増益を達成している。一見優雅に泳いでいるようで、私たちに見えない水中では足を一生懸命に動かしている「白鳥」のようなイメージが浮かびました。

井上:たしかに足はバタバタ動かしていますが、「白鳥」というよりもまだまだ「アヒル」だという自覚をもち、日々真摯に取り組んでいきたいと思っています。

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オリックスならではの強みを生かした国際化

金融というイメージとは裏腹に、現場でお客さまと密接に関わる中から新しい事業を見いだし、専門性の高い金融知識を用いて、しかし現場に軸足を置いた付加価値を実現している企業だとあらためて感じました。
また、オリックスのグローバル化は、単に日本のビジネスモデルを海外に輸出する、いわば旧来型の国際化ではなく、オリックスの強みを生かしながら、現地の人材やネットワークを最大限に活用・連携して展開しています。伝統的な金融の枠や多国籍企業という枠にとらわれない、非常にユニークかつ将来性ある独自の事業と組織形態だと強く感じました。

国内外の専門家とのネットワーク力が競争力の源泉

オリックスが投資先企業から選ばれる理由は、ステークホルダーの長期的な繁栄を念頭に置いた事業価値創造を続けてきたからです。長年の取引を通じたオリックスへの信頼ゆえに、入札取引ではなく相対取引が主体となり、オリックスだから任せたいという案件成立を積み重ねています。これにより、価格競争に陥らず、魅力的な案件に投資できる。さらにオリックスの強みは、投資される側からの信頼に加えて、世界中のさまざまな分野における専門家たちとのネットワーク力でもあります。彼らに「オリックスの案件であれば私もプロフェッショナルとして一緒に働きたい」と言わしめる魅力ある企業であることが、競争力の源泉であり、今のオリックスのパフォーマンスと事業成長を実現しているのだと思います。

これからのオリックスへの期待

これまでは主に日本において新しい事業を創造する、いわば日本を「新規事業の型を創る実験場」として培った事業成果をもとに、海外の各市場に応用し、事業を拡充・展開してきました。しかし、既に新たなステージへの挑戦は始まっているようです。未来のオリックスに期待することは、全世界に広がる拠点から新しい事業の種を見いだし、同時多発的に世界で新しい事業を創出・展開していくことです。そうした形に今のビジネスモデルを昇華させることができれば、本来の意味でのグローバル企業として、長期的な事業成長を確実なものとしていくことができると感じています。

琴坂 将広氏

慶應義塾大学総合政策学部准教授
博士(経済学・オックスフォード大学)

マッキンゼー・アンド・カンパニー、英オックスフォード大学などを経て2016年から現職。専門は国際化戦略および制度と市場。

用語解説

1  フィンテック
ファイナンスとテクノロジーを組み合わせた造語。情報技術を活用した金融サービス。

2  IoT
あらゆるものをインターネットに接続し、情報を収集・管理する仕組み。
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