Do you know ORIX? Do you know ORIX?

ORIX Challenge ビジネスを創造し進化するオリックス

多岐にわたる事業で成長を続けるオリックスグループのユニークなビジネスの考え方をご紹介します。

  • オリックスが成長分野の一つと捉える「農事業」最前線

    2018年3月19日

    2004年以降、オリックスグループは全国5カ所に野菜の生産拠点を展開。青果物の流通事業への参入を念頭に、農事業の経験とノウハウを蓄積してきた。2004…

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    オリックスが成長分野の一つと捉える「農事業」最前線

    2018/3/19
    2004年以降、オリックスグループは全国5カ所に野菜の生産拠点を展開。青果物の流通事業への参入を念頭に、農事業の経験とノウハウを蓄積してきた。2016年にはオリックス・フードサプライを設立し、提携生産者からの青果物の仕入れや販売にも取り組んでいる。
    高齢者や働く女性、単身世帯などの増加に伴い消費者のニーズも多様化するなかで、農産物の安定供給につながるさまざまな取り組みを進めるオリックス。なぜ、農業に参入したのか。日本の農業はこれからどのように変わるのか。オリックス(株)農事業部 部長の倉科正幸氏に話を聞いた。
    変化する業界にはビジネスチャンスがある
    オリックスは創業以来、経済環境やニーズの変化に対応し、新たな領域に事業を拡大してきた。近年では、ヘルスケアやIoTなど、人々の関心を集める分野にも積極的にチャレンジを続けている。
    その中でも長期的な成長分野のひとつとして見込んでいるのが農事業だ。
    オリックスと農業。異質な組み合わせにも思えるが、接点が皆無だったわけではない。たとえば、2004年に誕生したアジア最大規模のトマト菜園である「加太菜園」は、オリックスとカゴメの合弁会社だ。
    とはいえ、加太菜園への出資は、オリックスはあくまでファイナンサーとしての立ち位置で、自ら農事業を手掛けるものではなかったという。
    そのような状況が大きく動き出したのは、2013年11月。国内営業統括本部で、金融機関や商社を対象とした営業を行っていた倉科正幸氏は、部内にアグリビジネスチームを立ち上げた。
    「もともとは農業に関する経験も知見もありませんでした。しかし当時から、TPPの交渉、農地法改正による規制緩和、農業従事者の減少など、農業を取り巻く環境が大きく変わることが予想されていました。
    既存の枠組みが変化するところには新たなビジネスチャンスがあると考え、農事業への本格的な参入を決めたのです」(倉科氏)
    ファイナンスを提供するのみならず、自社で農事業に取り組むことはできないのか。その方法を模索するためのチームは当初2名体制からスタート。「社内公募制度」を利用して少しずつ規模を拡大し、農事業に特化した部門として独立した。
    「オリックスには、新規事業の立ち上げや既存事業の拡大に伴い、その部門が社内からメンバーを募る『社内公募制度』があります。
    新たな領域への参入にあたり、せっかくなら農事業に携わりたいという希望を持つ社員と進めていきたいと考え、この制度を利用しました。予想以上に多くの社員から応募があり、一から事業を立ち上げたいという社員の多さを再認識しました」(倉科氏)
    農事業は「試行錯誤の繰り返し」
    チームが発足した当初は、農業に携わってきた人材がいない以上、何ごとも手探りだった。
    一口に農業といっても、「生産」「流通」「販売」などさまざまな工程がある。「生産」にしても、何を作るのか、どのような方法を採用するのかによって、大きな違いがある。さらに、自社では農産物をつくらずに、生産以外の工程に特化するという選択肢もある。
    倉科氏は、まずは業界全体を俯瞰し、オリックスが農事業に参入する意義やビジネスチャンスをじっくりと見定めることにした。
    「農家の方々、農機具メーカー、種苗会社、農学部の大学教授、農地の有効活用を考えている自治体、農水省など、日本全国の農業に携わる人に話を聞きました」(倉科氏)
    1年以上かけてさまざまな人の話を聞き、農事業参入に向けた戦略をじっくりと検討。「生産」から「流通」、「加工」、「販売」までバリューチェーン全体を捉え、「生産」よりも川下の「流通」をメインの事業領域に設定した。
    農業というと「生産」が注目されがちだが、「生産」のみに特化していては、企業が求めるスケールで展開していくことが難しいからだ。ただし、すぐに流通事業に着手したわけではなかった。
    「農業関係者の方々から話を聞くなかで、『そんなに甘い世界じゃないよ』と言われることも多かったのです。まず、農業に対する肌感覚がないとうまくいかないのでは、という懸念がありました。
    もうひとつ根本的な問題もありました。素人の私たちがいきなり『青果流通をやります』といっても、商品を仕入れるルートがなく、売るものがありません」(倉科氏)
    多少遠回りにはなるが、まずは自分たちで生産拠点を持ち、そこで生産した青果物を売ることにしたのだ。
    農業の根本である「生産」から取りかかる
    2014年から16年にかけて、野菜の生産拠点として、兵庫県養父市の「オリックス農業」「やぶファーム」、長野県諏訪郡富士見町の「オリックス八ヶ岳農園」、静岡県磐田市の「スマートアグリカルチャー磐田」を、事業パートナーと連携しながら開設した。
    オリックス農業は、廃校になった小学校の体育館を植物工場にしたもので、フリルレタスやサンチュなどの葉物野菜を生産する。もともと、オリックス不動産が自治体から廃校の有効利用について相談を受けた際、植物工場としての利用を提案したことがきっかけだった。
    完全人工光型植物工場では、外気を遮断することで無農薬栽培が可能になる。異物混入のリスクも少ない。さらに、季節や天候の影響を受けにくいため、農産物の安定供給にもつながる
    一方、オリックス八ヶ岳農園については、生産拠点とする場所の検討から自分たちで行った。
    「日照時間や水質、物流の利便性など、あらゆる条件を精査し、青果物の生産に適した土地を選定していきました。全国各地にあるオリックスグループの営業拠点からヒアリングをしたり、自治体とコンタクトをとったりして情報を収集し、候補地には自ら足を運びました。
    その結果、事業パートナーである本多園芸とご縁があり、年間を通して日照時間が長く、比較的雪が少ない上に夏も涼しいことから、長野県の八ヶ岳高原を生産拠点とすることに決めました」(倉科氏)
    オリックス八ヶ岳農園では、サラダほうれん草やルッコラなどの葉物野菜を栽培する
    ほかにも越えなければならない壁はたくさんあった。
    たとえば、改正農地法により、農地を所有できる法人への企業の出資比率は50%未満と定められているため、オリックスが97%出資しているオリックス八ヶ岳農園は自ら農地を保有することができない。地域の農家の方々から土地を借用する必要があった。
    「土地をお貸しくださる地域の農家の方がいらっしゃるからこそ、八ヶ岳高原で野菜を生産することができる。地域の方々と丁寧にコミュニケーションをとり、信頼関係を構築することで、そのうち『こっちにも土地があるよ』とご紹介いただけるようになりました」(倉科氏)
    また、農地整備のために、自分たちで泥だらけになりながら石を拾ったこともあったという。
    「大規模な施設の建設には苦労もありましたが、今では自然光を利用した水耕栽培施設で、年間19回ほど野菜を収穫しています。水耕栽培では、ハウス内の環境制御と養液管理を行うことで、1年を通じて安定した収穫ができるのです。
    今でも試行錯誤を繰り返していますが、まずは生産から着手するという方針は間違っていなかったと思います。農家の方々の思いや苦労を実感したことで、これから農業に取り組む企業としての土台ができたと感じています」(倉科氏)
    新鮮な野菜を安定して供給するために
    オリックスは現在、生産者とのネットワークを拡大し、流通事業に本格的に着手している。
    「飲食事業者や食品スーパーにとって、野菜を安定的に調達することはとても大切です。ですが、天候不良や農業従事者の減少により、市場に集まる野菜の量は減少傾向にあります。さらに野菜の量が減ると、効率的な輸送も難しくなります。
    こうした状況から、従来の市場からの調達だけでなく、より多岐にわたる調達ルートが求められているのです」(倉科氏)
    このような課題に対して、生産者と小売業者をつなぎ、農産物を全国に安定供給するための仕組みづくりを進めているのだ。
    オリックス八ヶ岳農園での作業風景
    昨年7月には、全国規模で青果専用のコールドチェーンを展開するファーマインドと資本業務提携を行った。
    「ファーマインドがもっている多機能な物流ネットワークを活用することで『かさばるけれど安価』な野菜を、コストを抑えて効率よく、適切な温度管理のもとで運搬できるようになりました。
    これにより、生産者が野菜を販売できるエリアを広域化するとともに、食品スーパーや飲食事業者が新鮮な野菜を全国から安定調達できる仕組みを整えていきたいです」(倉科氏)
    また、生産者の減少という課題に対しても、企業としてできることがないか模索している。
    「農業がきちんと収益をあげられる事業になれば、新規の就農者も増えていくでしょう。
    ITなどの新しい技術を用いて生産効率をあげたり、効率的に野菜を運ぶための物流ネットワークを構築したりすることで、生産者側がきちんと適正な利益を上げられるような仕組みづくりに貢献したいと考えています。
    また、農業は『野菜』という生き物を相手にする仕事なので、朝早くから夜遅くまで休みなく働かれる生産者の方も多いと聞きます。企業が労働環境を整えれば、若い方も農業に携わろういう気持ちになるかもしれません」(倉科氏)
    現在、農事業部は、生産拠点に常勤する社員も含めて17名。そのほとんどは農業にゆかりのないメンバーだ。まったく経験がない状態からのスタートだったが、こうして振り返っていくと、あらゆるところで既存事業から得た知見やノウハウが生きている。
    「たとえば、事業パートナーとJVを組むときには事業投資で得た知見が、生産拠点をつくるときには不動産開発に関するノウハウが役立ちます。さらに、オリックスグループの営業拠点が持つ食品スーパーや外食チェーンとのネットワークも大きな強みです。
    そして何より、未経験の分野でも知見を貯めてチャレンジしていこうという前向きな姿勢は、これまで『隣へ隣へ』と事業を拡大してきた中で培った大きな財産だと思っています」(倉科氏)
    隣の事業、さらにその隣の事業へと領域を拡大するのは、オリックスの特徴的な手法だ
    将来の流通事業への参入を見据えて、じっくりと野菜の生産に向き合ってきたオリックス。これから数年でどこまで事業を拡大できるか。そして日本の農業の発展に寄与することができるのか。
    「スピードアップ、スケールアップは常に求められており、社内のプレッシャーも強くなっています(笑)。スーパーの店頭でオリックスの野菜が並んでいるのを見ると、より一層気合いが入りますね」(倉科氏)
    (編集:大高志帆 構成:唐仁原俊博 撮影:加藤ゆか)

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  • オリックスが考える再生可能エネルギー事業の勝算

    2017年12月15日

    地球温暖化への対策や電力の安定供給が世界的な課題として注目を集める中で、一見、環境エネルギーとは無縁とも思えるオリックスが、重点分野のひとつとして再生可能エネルギ…

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    オリックスが考える再生可能エネルギー事業の勝算

    2017/12/15
    地球温暖化への対策や電力の安定供給が世界的な課題として注目を集める中で、一見、環境エネルギーとは無縁とも思えるオリックスが、重点分野のひとつとして再生可能エネルギー(以下、再エネ)による発電に取り組んでいる。
    オリックスは、1990年代に環境エネルギー関連事業に着手し、廃棄物処理や省エネルギーサービス、電力供給など幅広い分野で事業を拡大。中でも再エネ事業においては、太陽光発電、地熱発電、風力発電、バイオマス発電など多様な電源を開発し、2010年以降、さらにビジネスを加速させている。国内の太陽光発電では最大級の出力規模を確保し、世界各地でも再エネ事業の展開を進めるオリックス。彼らが同事業を手がける理由を探る。
    オリックスが再生可能エネルギーに着目した理由
    そもそもオリックスが再エネ分野に進出するきっかけになったのは、1995年、風力発電事業に出資したことだった。
    「当時は、自分たちで発電所を運営して事業を展開しようと考えていたわけではなく、ファイナンスの延長線上で、何か新しいことをしようと取り組んだうちの一つでした」
    こう話すのは、オリックス(株)環境エネルギー本部の髙橋英丈副本部長だ。オリックスの再エネ事業が転機を迎えた2011年、環境エネルギー事業とはまったく異なる部門から異動してきた。
    言うまでもないが、2011年は東日本大震災が発生した年だ。
    国内の原発事故、世界的には温暖化が深刻な問題とされるなか、「再エネによる発電事業は、これから注力すべき分野だ」と判断した経営層は、それまで本社の営業本部の一部に過ぎなかった環境エネルギー事業部門を事業投資本部として独立させた。
    きっかけは震災だが、その判断の前提となったのが、オリックスも経営方針を大きく変える契機となったリーマンショックだ。
    世界的に金融事業に対する規制が強化されるなか、オリックスもバランスシート上のレバレッジを下げるべく行動をはじめた。金融中心の事業領域から、サービスの提供、そして事業の運営へとポートフォリオを変えていったのだ。
    祖業であるリースをはじめとしたファイナンスのイメージからすると、発電事業はずいぶん遠いものに感じられる。しかし、再エネ事業者に求められるさまざまな要素は、オリックスがこれまで携わってきた事業の至るところにちりばめられていた。
    「風力発電への投資や、電力小売事業を手がけていた経験から、どういう仕組みで電気が作られるのか、どのように企業や家庭まで届くのか、といった基本的な知識はありました。
    また、発電所をつくるためには、土地を借りたり、行政から許認可を得たりする必要がありますが、そこでは不動産事業で得たノウハウが役立ちます」(髙橋氏)
    そして、プロジェクトを立ち上げ、資金を調達し、遂行していく過程には、他社のさまざまな事業にプロジェクト・ファイナンスを提供することで蓄積してきた知識や経験が生かされる。
    隣の事業、さらにその隣の事業へと領域を拡大するのは、オリックスの特徴的な手法だ。
    「たとえば、水族館や旅館などの運営事業と再エネ事業はまったく異なるものに見えますが、両事業とも、オリックスがこれまで蓄積してきたノウハウを用いて、新たな分野に挑戦した結果生まれた事業なのです」(髙橋氏)
    グループの強みを最大に生かした立ち上げ期
    2011年に再エネの専門部隊ができたとき、異動したばかりの髙橋氏を含め、メンバーはたったの5人だった。しかし、経営陣からは「人材も資金も必要なだけ確保して、どんどん事業を拡大するように」という指令を受けた。
    「これは大変なことになったぞと思いましたね。ですが、最初の人材集めの段階から、オリックスグループとしての強みが発揮されました」(髙橋氏)
    用地確保の担当者、発電所の建設に必要な技術者から、資金調達、税務・法務の専門家まで、ほとんどの人材を社内から集めることができたのだ。
    現在では、再エネ事業を手がける部門の人員は60名ほどだが、やはり大半は社内から異動してきた人々だ。しかし、なぜ巨大なグループの大勢の社員から、即座に適切な人材を選出することができたのか。
    「オリックスにはグループ各社間で社員が交流する機会が多くあり、部門や会社を超えたつながりが生まれやすい環境があります。部門を超えた異動が多いことも一因ですが、グループ全体で目標に向かって『協業』する文化が根付いているからです。
    別部署で働く社員とはほとんど交流がないという企業も珍しくないようですが、私たちは日ごろから『協業』することで、部門を超えた横のつながりを持っているのです」(髙橋氏)
    震災による原発事故を契機に、国内では再エネによる発電が注目を集めたが、参入しようとする多くの事業者がゼロからのスタートだった。一方、オリックスには関連するノウハウの蓄積があり、専門性をもつ人材がすでに確保されていたため、即座にスタートが切れたのだ。
    全国での同時多発的な展開も、オリックスだからこそ可能だった。メガソーラーには大規模な土地が必要になる。しかし、都市近郊にはそのような土地がほとんどなく、交渉のために各地を訪問するだけでかなりの労力が必要となる。
    「そこで、全国の支店で働く営業担当者に協力を依頼しました。各地から、メガソーラー建設に適した土地を紹介してもらうこともできたし、お客さまも紹介してもらえました。
    結果、スピーディに土地を確保できたのです。お客さまが保有する工場や倉庫の屋根を賃借して太陽光発電システムを設置する屋根借り方式の太陽光発電でも、現地事情に精通する営業担当者の協力のもと、事業を拡大しました」(髙橋氏)
    枕崎市枕崎空港第一発電所・第二発電所
    再エネ事業は、長期間にわたる事業運営であるため、地域との共生が求められる。
    鹿児島県枕崎市では、空港跡地を借り受けて、メガソーラーを運営している。枕崎空港は、1991年に地域空港として開港したものの、2004年以降、旅客機の離発着がない状態になり、空港の管理・運営における財政の圧迫や市民の負担増加が問題視されていた。
    そこでオリックスは枕崎市にメガソーラーへの転用を提案。空港は最大出力8.2MWのメガソーラーに生まれ変わったのだ。
    メガソーラーを建設するだけではなく、敷地内に天文観測所を設置することで、地域住民が集う場所も提供。また、空港ターミナルビル内を改修して太陽光発電に関する学習施設も作った。その結果、地域の観光ルートにも加えられるなど、枕崎市の活性化にもつながっている。
    「再エネ事業を通して、地方創生に貢献していきたいと考えています。地域の活性化は、事業の活性化にもつながっていくからです」(髙橋氏)
    世界各国で事業を拡大。オリックスは立ち止まらない
    2011年からしばらくの間、再エネ事業における課題は「メガソーラーを建設するための土地を確保する」ことだった。しかし、運転を開始した発電所が増えるにつれ、新たな課題も浮き彫りになってきた。
    「たとえば太陽光発電は、電化製品を『野ざらし』にするようなものです。カラスが落とした石や飛んできたボールで、太陽光パネルが割れることもあります。台風や地震など、天災の影響も無視できません。改めて、ファイナンスとは異なる事業運営ならではの難しさを感じています」(髙橋氏)
    オリックスは、全国各地に点在する発電所を効率的かつ安定的に運営するために、個々としても、全体としても最適なかたちを模索している。
    また、太陽光発電以外の再エネ事業の拡大にも積極的に取り組んでいる。そのひとつが、地熱発電だ。
    今年7月、地熱発電における世界的企業、Ormat Technologiesの筆頭株主となったことからも、オリックスが本格的に地熱発電の事業化に取り組んでいることがわかる。
    Ormat Technologiesが保有・運営するMcGinness Hills Complex発電所
    「太陽がよくあたるところ、風の強いところに設備を置けば発電できる事業と違い、地下1500~2500メートルまで掘ってみなければ、その土地が本当に発電に適しているかがわからないのが地熱発電です。
    地表調査や電磁探査などの事前調査である程度までは分析できるものの、掘ってみるまで正確なことはわからないのです」(髙橋氏)
    地下に地熱発電に適した資源があっても、地上に必要な設備を設置するための土地を借りられるとは限らない。蒸気や熱水を取り出すための井戸は、温泉法に基づき、地域の温泉審議会と県知事の承認を得られてはじめて掘ることができる。
    つまり地熱発電は、太陽光発電や風力発電と比較すると、時間と労力が必要とされることに加え、無事に事業化できるかどうかのリスクも高い。
    日本の地熱資源量は世界第3位で約2,300万kWと言われているが、運転済みの地熱発電設備の容量は約55万kWにすぎず、1,000kW以上の規模の発電所となると全国で20弱しか存在しない。
    そのような状況で、オリックスが「小規模なものでも稼働までに5年かかる」と言われる地熱発電に力を入れるのには理由がある。
    「地熱発電は気候変動の影響を受けにくく、ベース電源としてのポテンシャルがあると評価されています。
    一方で、開発に時間がかかり、事業化までのリスクも高いことから、参入障壁が高い。このように難易度の高い事業でも、オリックスは挑戦していくべきだと考えています。
    グループで運営する『別府 杉乃井ホテル』は、自家用の地熱発電所を運営しています。温泉事業者としても地熱発電事業者としてもノウハウを有するため、結果的に温泉地の方々との関係構築がスムーズに進むこともあります」(髙橋氏)
    別府にある杉乃井地熱発電所
    本拠地アメリカのほかに、アジアやアフリカなどでも実績のあるOrmat Technologiesとの連携は、積極的に海外に展開していこうとする意思の表れでもある。
    ブルームバーグ・ニュー・エナジー・ファイナンスの予測によると、再エネの発電コストの低下により、今後2040年までの世界の発電事業への投資総額の4分の3を再エネへの投資が占めると言われる。
    また、新興国では、大規模な送配電網を整備するかわりに、地産地消の分散型の電源として再エネが普及していく可能性も高いとされる。日本とは比べものにならないほど、世界の再エネ事情は大きく動いている。
    「私はオリックスのことを『ニッチビジネスのかたまり』だと感じています。だからこそ、お客さまのニーズや環境の変化に対応した大胆な事業シフトができる。
    もちろん、新たな分野への進出に際し、社内でリスクや事業性を精査しますが、そこでふるいにかけられた事業が、何かしらの関連を持ちながら新たな事業に育っていくのです。
    再エネの普及、蓄電池の技術革新やスマートグリットなどの登場により、巨大なインフラを必要とする旧来の中央集約的な電力システムは崩壊していくかもしれません。そこで、チャレンジ精神旺盛なオリックスに何ができるか。私は今からとてもワクワクしています」(髙橋氏)
    (編集:大高志帆 構成:唐仁原俊博 撮影:加藤ゆか)

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  • リース会社からスタートしたオリックスが水族館運営に成功した理由

    2017年8月29日

    今、多くの企業が生き残りをかけて新規事業の立ち上げに取り組んでいる。社内にとどまらず、ベンチャーと組んで事業開拓をする企業もあるほどだ。しかし、残念ながら頓挫する…

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    リース会社からスタートしたオリックスが水族館運営に成功した理由

    2017/8/29
    「オリックス」と聞いて「野球チームがあるな」と連想した人は正しい。「保険の会社」と答えた人も正解。「自動車」「環境エネルギー」「ホテル・旅館運営」、これらもすべて正解だ。実はオリックスは、1964年に法人向けのリース会社として創業して以来、さまざまな事業を展開し続ける異色の企業なのである。
    多くの大企業が新規事業の立ち上げに苦戦するなか、なぜオリックスは多角経営に成功しているのか。すみだ水族館、京都水族館を運営する、オリックス水族館株式会社の三坂伸也社長に話を聞いた。
    実は世界一の水族館大国、ニッポン
    今、多くの企業が生き残りをかけて新規事業の立ち上げに取り組んでいる。社内にとどまらず、ベンチャーと組んで事業開拓をする企業もあるほどだ。しかし、残念ながら頓挫するケースも多いのが現実。
    しかし、オリックスは、私たちの気づかぬ間に多角化に成功していた。なかでも、すみだ水族館・京都水族館の運営は、およそ金融を主軸に成長してきた企業とは無縁とも思われる事業だ。なぜ、このようなことができるのか。
    オリックスが最初に水族館事業に携わったのは、神奈川県の新江ノ島水族館だ。オリックス水族館株式会社の三坂伸也社長は、当時を振り返ってこう語る。
    「水族館をやるらしいと噂を聞いたとき、はじめは『さすがに門外漢すぎるな』と思いました。また、水族館の事業責任者に任命された当時、私はまったく関係のない部署にいたので、一瞬途方にくれました。
    でもオリックスには、失敗を恐れずチャレンジし、失敗をも糧とする文化があります。だから私もイチから挑戦できたのです」
    そもそも、オリックスの水族館事業への参入は「偶然」からはじまった。公共事業を民間の資金力で活性化させるPFI(プライベート・ファイナンシャル・イニシアティブ)法が施行された1999年、旧江ノ島水族館を再生させるという案件が舞い込んできたのだ。
    全国に100を超える水族館がある日本は、世界一の水族館大国だ。しかし、多くの水族館の収益化が難しい状況にある。それでも存続しているのは、水族館の教育的見地が重視され、多くが行政主導で設置、運営されてきたからだ。
    「水族館は教育的・文化的施設で、人を楽しませる場所であることは間違いありません。事業を成立させるためには、このような施設をどうビジネスと結び付けるかが肝心です。
    私たちは『水族館運営のプロ』ではなく、『ファイナンスのプロ』として参入したために、水族館の持つポテンシャルをニュートラルな目で見ることができた。それで、ストレートに『どうすればお客さまを呼べるのか』という課題と向き合えたのです」(三坂氏)
    ファイナンサーの立場から水族館事業を再定義
    旧江ノ島水族館の最終的な年間集客数は30万人だったが、2004年の新江ノ島水族館のオープンに際して、目標は180万人に設定された。
    「考えてみれば、私自身も小学校の遠足以来、水族館に足を運んだ記憶がありませんでした。ほかにも娯楽があるから、そちらに流れてしまうのです。
    ですが、180万人という目標を達成するためには、『週末は映画館に行く』という人にも『仲間とフットサルをする』という人にも来てもらう必要があります」(三坂氏)
    そこで三坂氏が注目したのは、水族館の教育施設、文化施設としての側面ではなく、エンターテインメント施設としての側面だ。さらに、両側面をトレードオフするのではなく、共存させる方法を探りはじめたという。
    「ジンベエザメやシャチのような希少性のある生き物で集客する、というのが一般的な水族館のセオリーです。当時も、各館は希少性のある生き物を競って導入し、大規模水族館がもてはやされ、規模と集客は比例すると信じられていました。
    でも、生き物を目玉商品にすると、死んでしまったときや人気が落ち込んだときのリスクが大きい。事業をローリスクで継続させるためには、楽しく快適な『場』そのものを目玉商品にしなければならないと気づいたのです」(三坂氏)
    「貴重な生き物を見る」体験を売るのではなく、「どこにでもいる生き物と、これまでにない体験ができる」ことを商品にする。それがうまくいけば、人は集まり、事業としても安定するはずだ。
    「それからは、エラーの多いトライ・アンド・エラーの繰り返しです。気が付いたら1年が経ち、184万人ものお客さまに来場していただけていました。戦略的なやり方ではなく、できることからやっていったら結果的に目標を達成していた、というのが正直な感想です」(三坂氏)
    オリックスが市街地に水族館を作る理由
    ファイナンサーとして新江ノ島水族館の経営に参画しているうちに、水族館事業について、オリックス側にも徐々にノウハウが蓄積されてきた。事業の可能性が見えてきたことで、次なる展開として生まれたのが、京都水族館、そして、すみだ水族館だ。
    市街地に水族館を作るのは島国の日本では珍しいことだが、オリックスが市街地にこだわるのには理由がある。新江ノ島水族館の来訪客の動向から、ある「気づき」を得たからだ。それは、「水族館では自然にコミュニティができる」ということ。
    たとえば、イルカのショーではパフォーマンスの一つひとつに一斉に歓声が上がる。大水槽では、ほかの魚の動きに合わせてイワシの群れが形を変えるたび、あちらこちらから感嘆の声がもれる。
    水族館には「特定の何かのファン」が集まっているわけではないのに、老若男女、嗜好もばらばらの人たちによって、えもいわれぬ一体感が生まれるのだ。
    すみだ水族館で行われているショーの様子
    「この一体感を共有するコミュニティを見て、目指すべき水族館の方向性が固まりました。要は『公園を作りたい』ということです。
    公園は、一人で行ってもいいし、友達と騒ぎに行ってもいい。公園ほど、ありとあらゆる人、シチュエーションを受け入れてくれる場所はなかなかありません。その包容力が公園の強みです。
    公園のような水族館を作ることができれば、『こういうふうに過ごしなさい』と押し付ける必要がなくなり、マーケットの自由に任せられます」(三坂氏)
    京都水族館の開放的なイルカスタジアム。ショーには常に多くの観客が集まる
    魚の飼育という観点では、いくらでも海水が手に入る海沿いに作るという判断は正しい。しかし、コミュニティを作るという観点なら、より人口が集中する市街地のほうが適している。
    ただし、市街地には、土地や物件の事情から大規模なものは作れない。それでも、「公園のような水族館を」という考えのもと、展示の仕方を工夫し、既視感のない空間を演出することで、生き物メインではなく、体験メインで組み立てられる都市型の水族館が完成した。
    この2館では、「水」の魅力を活用することにも力を置いている。
    「水族館に来た方から『癒やされた』という感想をよく聞きます。でも、お客さま全員が大の魚好きとは思えない。それなら、水からも癒やしを得ているのではないか、という発想が出発点でした。
    そういう視点で水槽をのぞいていると、透明で普段は存在感の薄い『水』が、生き物の存在によって際立つことがわかりました。そこで、生き物はもちろん、『水』が魅力的に見えるよう、照明などにも工夫を凝らしました」(三坂氏)
    すみだ水族館のアクアラボ。飼育スタッフとコミュニケーションをとることができる
    この工夫が功を奏し、すみだ水族館の幻想的なクラゲの水槽の前には、常に人だかりができている。
    このようにして、京都水族館とすみだ水族館は、年代や属性を超えて「一緒に楽しむ」という経験を提供するエンターテインメント施設として定着。開館以来、安定した入場者数を維持している。
    オリックス方式=既存事業の「隣へ」拡大する
    「オリックスがさまざまな事業に参入し、成功を収めている理由の一つとして、特徴的な事業の広げ方が挙げられます。
    リースから出発したオリックスは、その隣の事業、さらにその隣の事業へと少しずつ領域を拡大していきました。そのやり方なら、既存事業の蓄積を生かせるからです。
    隣の事業、さらにその隣の事業へと領域を拡大するのは、オリックスの特徴的な手法だ。
    つまり、まったく違う領域に進出しているように見えても、全体で見れば、業態に重なる部分がある。オリックスの事業拡大は一足飛びに儲けを狙ったり、奇をてらったりしたものではないのです」
    その言葉を裏付けるように、オリックスは50年以上の時間をかけて、隣の領域へ染み出すように事業を広げている。
    オリックスは、リーマン・ショックの影響で2009年に一度純利益が落ち込んでいるが、その後驚異的なスピードで回復。ここ数年、最高益を更新し続けている。
    これは、大企業にしかできないやり方ではない。時間はかかるが、しばらくすればいろいろな専門性を持った部門が会社のなかにできあがり、部門同士がコラボレーションすることで無理なく「隣」の領域に新規事業を生み出せるのだ。
    「積み上げていく」のではなく、「領域を拡大していく」事業拡大において、拡大比率は加速度的に大きくなっていく。
    オリックスが次は何をはじめるのか。その展開は、新規事業に挑戦するすべての企業の学びになるはずだ。
    (編集:大高志帆 構成:唐仁原俊博 撮影:加藤ゆき)

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