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海外お金事情 Part.2 詳細

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vol.16UAE アラブ首長国連邦

2006.6.30 MAF ORIX Finance PJSC 佐藤 文彦

急成長するドバイの挑戦は続く

(1ディルハム=¥31.25 2006年6月現在) 
 

約1年半前にこの海外お金事情パート1で、急発展しつつあるアラブ首長国連邦(以下UAE:United Arab Emirates)について概要をお伝えしました。その後もドバイではウォーターフロント開発、椰子の木の形をした人工島、ショッピングモール、レジデンス(高級マンション)、新空港、地下鉄、モノレール建設などの巨大プロジェクトが着々と進んでいます。「最大の・・・」とか「最高層の・・・」というキャッチフレーズは、この国のチャレンジ精神と勢いを如実に表していますが、一方で、その急速な変貌ぶりは数々のひずみも生み出しています。UAEの人々はこのひずみを「Growing Pains」と呼びます。成長による痛みということですね。今回は、急成長するドバイとそれに伴うGrowing Painsについてお伝えしたいと思います。
 

1.砂漠にスキー場がオープン


Ski Dubai

2005年11月、ドバイに人工スキー場「Ski Dubai」がオープンしました。高さ85メートル、幅80メートル、ゲレンデは最高400メートルの長さで、ホームページでは世界一の広さをうたっています。スノーパークという子供向け公園もあり、子供たちが元気よく雪投げをして遊んでいます。室内はマイナス4度に設定されていますが、一歩外へ出れば気温は50度。「心臓麻痺に気をつけてね」という冗談が意外に現実味を帯びています。

「Ski Dubai」は中東一の規模を誇る巨大複合ショッピングモール(Mall of the Emirates)の中にあります。そのモールには500店近くのお店が入っていて、さらに巨大スーパーマーケット、レストラン、映画館が同居しています。
「Ski Dubai」は手ぶらで行けるのが売りで、ウェア、ブーツ、板、スノーボード、その他の小道具まですべてレンタルすることができます。入場料は、大人2時間で130ディルハム(約4,030円)。子供がスノーパークで遊ぶだけなら40ディルハム(約1,240円)です。施設規模からみるとかなり安い料金設定になっています。その理由をオーナーのマジッドさんに聞いたら「灼熱の国の人たちに雪を経験させてあげたいんだ。儲けは二の次さ」と涼しい顔。さすが中東の富豪は太っ腹です。ちなみにマジッドさんはオリックスのパートナーでもあります。

スキーの後はモールのお店で買い物をしてもいいし、レストランでおいしいものを食べることもできます。もちろん最新の映画を見ることもできます。ここの映画館にはゴールドシートというものがあり、100ディルハム(約3,100円)でまるで重役が座るようなふかふかで革張りのリクライニングシートで映画を観ることができます。さらに鑑賞中に食事をすることもできます。

このショッピングモールから車で10分ほど行ったところには、現在「The Dubai Mall」という新しいモールが建設されています。ここにはスーク(アラビア語で「市場」のこと)、スケート場、水族館ができて、これまた大規模になりそうです。さらにここには、「Burj Dubai」という世界一の高さを誇るビルの建設も着々と進んでいます。このビルは2008年に、200階建て・750メートル以上で完成予定です。なぜ750メートル以上かというと、建設中にこの高さ以上の建物が建った場合に計画を変更し、さらに高いビルを目指すからとのこと。とにかく「世界一」を目指しているようです。
次々と新しい斬新なアイデアを実現させていくドバイ。引き続き目が離せません。

 

2.ゴールドといえばドバイ

 

ドバイが「City of Gold」と言われているゆえんに、ゴールドスークの存在があります。ここには宝飾品の店が道の両側にずらりと並び、ウィンドーショッピングだけでも充分リッチな気分になれます。
ゴールドを身近に感じるのは何もここだけではありません。ドバイのランドマークとなっているバージュ・アル・アラブは、部屋、風呂場、ロビーのあらゆる床、柱、装飾にゴールドが使われています。とても豪華なため、マスコミから7つ星ホテルとも言われています。他にたくさんある5つ星レベルのホテルでも、あちこちにゴールドの装飾が施こされています。街全体でゴールドを体感することができます。


           金だらけの宝石店

スークでは金貨、金銀製品、その他の宝石類が売買されています。価格は金の価格+デザイン+加工料です。金の価格はその時の市場価格で決まるため、値切ることはできません。つまり、激しい値切り交渉はもっぱらデザイン+加工料の方ということになります。昨今の金相場の上昇により商品の値段はずいぶんと上がりましたが、宝石商の話によれば、売れなくなるどころか以前よりもさらに売れるようになったそうです。値段が高くなると欲しくなる。人の心理は不思議ですね。
ゴールドスークでは細工のすばらしい24金製品がきらびやかに飾られています。UAE人の女性が外出するときには、足、手、頭をすっかり覆う黒い民族衣装を着ますが、実はこの衣装の下に、このような宝飾品をたくさん身につけているそうです。もともとUAE人は砂漠の民、「ベドウィン」だったので、財産として宝飾品を砂漠を移動する上で常に身にまとっていました。その風習がまだ残っているのかもしれませんね。

ドバイで金製品を作っている職人はもっぱらインド人です。サイズ直しなどは30分もあれば手際よくやってくれます。ドバイとインドは昔から貿易で深くつながっていることや、インドの輸出品目の第一位は宝飾品であることからもインド人の活躍はうなずけます。
スークの宝飾品価格は日本よりだいぶ安いようですし、バラエティーも豊富なので、お土産にとても適しています。また、昔、手に入れた古い金製品などを持ち込めば買い取ってもらえるので、財産を現金化することができます。手に入れた時の金の価格によっては、キャピタルゲインを得られるかもしれませんね。

 

3.競馬の賞金は6億円

UAEでスポーツというと、いったい何が思い浮かぶでしょうか。サッカー?サンドバギー(sandとbuggyを合わせた造語で、砂浜をタイヤの太い自動車で乗り回して楽しむものです)?マリンスポーツ?そう言えば砂漠ならではの、らくだレースというのもありますね。ここUAEでは、歴史的にベドウィンが馬をスピードとスタミナで評価付けをし、その持ち主の階級と富のシンボルとして扱ってきたことから、競馬が盛んです。今でもアラブ純血種(サラブレッド)へ傾ける情熱は高いといっていいでしょう。


ドバイワールドカップ

UAEにはドバイワールドカップという世界でも最高峰の競馬レースがあります。UAEの副大統領と首相を兼ね、ドバイ首長でもあるシェイク・ムハンマド氏は、自ら耐久乗馬レースの選手の一人で、ゴドルフィンという競馬チームを持ち、国際的なレースで成功しています。賞金総額は世界一で、なんと6億2千万円。世界各国から選りすぐりの実力馬と騎手たちがそろって出場するので、この日一日はドバイが沸き立ちます。今年3月に行われたドバイワールドカップには、日本から9頭の馬と武豊騎手を含む2人の日本人騎手が参加しました。

ところで、競馬といってもUAEでは日本のようにお金を賭けるということはありません。代わりに各7レースの1位、あるいは1位から3位までの到着順を予想して、当たった人に賞金総額17万5千ディラハム(約542万5千円)が出るという形式を取っています。この社交界の頂点ともいえるイベントの会場となるナド アル シェバ競馬場には、昼過ぎから最高に着飾った紳士、淑女たちが集まります。過去にイギリスの保護領だったお国柄、英国人が多いので、まるでイギリスにいるかのような錯覚にとらわれます。敷地内のきれいな芝生には有名飲食店が出店し、夜の12時まで人々のざわめきがたえません。お酒を飲むセクションもあり、そこは大賑わいです。イスラム圏でもドバイならではの寛大さです。
レースは45分の間隔をおいて行われますが、その間、ベストドレッサー賞、ベストハット賞など、訪れた人々を対象にコンテストがあります。夜になるとステージでモダンダンス、花火やレーザーを使った派手なショーがあって、観衆を楽しませてくれます。
一般チケットは175ディラハム(約5,425円)ですが、企業や地元の富裕層対象のボックスシートは日本でいうVIPルームのようなもので、100人程度収容可能で食事も付き、最高で28万ディラハム(約868万円)です。
今年は最後を飾る一番のレースで先に述べたゴドルフィンチームの馬が優勝し、祭典の幕を閉じました。自国の馬が優勝し騎手はもちろん有頂天、普段は難しい顔をしているドバイ首長も、この時ばかりは満面の笑みで声援に応えていました。


4.急発展の裏事情


豊富な資金と首長の強いリーダーシップにより原油依存経済から観光立国へと見事に移行してきたドバイ。しかし、急発展に伴うひずみも現実にはあちこちで見られています。建設現場ではスピードが最重要事項で、低賃金労働者が24時間365日体制で、猛暑の中砂まみれになって働いています。猛暑により死亡者が出たり、賃金支払いの遅れや提供される住環境の劣悪さなどから、怒った労働者がストライキや暴動を起こすこともあります。昨今のインド経済の発展からドバイのインド人労働者が減り、代わって増えているアジア人労働者が問題を起こしていると言われていますが、いずれにしても非常に過酷な労働条件です。
また、急増する人口に対して不足する住宅供給、過熱する不動産投資の結果による土地の値上がりが原因で、家賃が急上昇しています。政府が「家賃の値上げは年間15%まで」という法律を制定しましたが、現実にはあまり守られていないようです。一方、給与は家賃の値上がりに応じて上昇していないので、労働者の生活はますますきつくなるというのが実情です。
また、車の増加によって渋滞が慢性化しており、15分で行けるところに1時間かかることも珍しくありません。ドバイは中東一、車の事故が多く、「ドバイで生活するリスクはテロではなく交通事故だ」とまで言われています。労働環境の改善、物価の上昇をはじめとする生活環境の整備は、現在大きな課題となっています。

蛇足ですが、ドバイの「世界一高いビル」や「海の上のホテル・家」はとても魅力的なデザインの建物ですが、これは地震がないことが前提になっています。地震がないのだから心配ないと言ってしまえばそれまでですが、関係者から見ると建物の耐震についてはちょっと心配なレベルなのだそうです。実は2005年12月にイラン南部で大きな地震があり、その余波が対岸のドバイにもありました。人によっては体感すら難しい程度の弱震でしたが、地震を体験したことのない人々にとっては恐怖だったのでしょう。午後の仕事をすっかり放りなげて帰宅してしまい、その帰宅ラッシュで渋滞するという事態まで発生しました。この地震リスクも無視できないと思います。また、2005年6月に突然の停電事件がありました。ドバイ全域で2時間から6時間の停電があり、オフィス、住宅、モールの冷房、街中の信号機、飲食店の冷蔵庫もすべて止まってしまいました。電力施設の技術的なミスが原因だったようですが、バックアップ体制を考えると、住人にとっては一抹の不安が残る体験だったといえます。

 

5.教育事情と就職問題

急発展するUAEにはいろいろなひずみがあることを述べてきましたが、特に教育に関する改革も重要課題となっています。先日も「教育関係に国の予算を思い切り使う」という新聞記事が一面に出ていました。
約80%は外国人という人口構成(2002年総人口375万人中UAE人73万人、外国人302万人)からも明らかなように、UAEの経済は、外国人の知恵と労働力が支えているといっても過言ではありません。経営トップから医療、教育、技術などの知的労働力から肉体労働まですべてを外国人がカバーしています。いわばUAE人が外国人という使用人を雇って国を運営している、という構図です。国を良くするためにはどうすればいいか?その答えが「より良い使用人を雇ってくる」では国としても大きな問題です。そこで一刻も早く自国民の教育水準をあげることが重要な課題となってくるわけです。
現在、人口の約20%を占めるUAE人の子供たちには、幼稚園から高校までの教育は法律によって無償で行われています。そのせいか、親(特に父親)は子供の教育には無関心の傾向があり、1万2千人の子供が落第したり、登校拒否であるという問題を抱えているようです。また、地元の新聞によると素行不良の生徒も増え、授業中にゲームセンター、映画館へ逃亡するなど、教育関係者を悩ませているようです。
このようにUAEでは、社会が教育に求めている期待と、現在の教育環境に大きなギャップがあるため、卒業後の就職もままならないという現状があります。

UAE人の失業率は16%とも言われています。UAEでは政府が決めている「UAE人の雇用定数」というものがあります。これは企業の従業員の一定比率がUAE人でなければいけないというルールです。民間企業は当局より指導されていますが、実際はなかなか守られていないようです。その理由は、「若者が仕事を選り好みするため」、「女性の保守性と宗教上の理由により適さない職場への就職ができないため(不特定男性と接触する機会のある職場などはふさわしくないと判断される)」、「一部のUAE人にみられる“勤労モラルの低さ”を危惧する民間企業がUAE人を雇いたがらないため」などです。
これらは、アラブ人の「仕事・働く」ということに対する伝統的な考え方や、イスラム世界における女性観が絡んでいて複雑な問題となっています。

このように見てくると、これまでのドバイの発展は多国籍の人・モノ・情報によって作り上げられてきましたが、これからはどこの国の真似でもなく、独自の路線を模索していく必要があるのでしょう。


         シェイク・ムハンマド氏

今年6月に、ドバイ首長であるシェイク・ムハンマド氏が、223ページからなる「My Vision: Challenges in the Race for Excellence」という本をアラビア語で出版しました。ここで著者は、リーダーとしてのあるべき姿、国のビジョン、そしてアラブ社会への貢献などを真摯に語り、「ドバイに“限界”という言葉は無い」と言い切っています。強力なリーダーのもとで国が急発展していく真っ只中に身をおける幸運に感謝しながら、これからもドバイを体感していきたいと思っています。

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