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インタビュー

名和 高司 × 井上 亮
世界各国で多様な専門性を発揮する
マルチナショナル・ブティック・エンタープライズとして、
オリックスグループは進化を続けます。

8期連続で増益を達成し、安定した利益成長を継続するオリックスグループ。多角的な事業ポートフォリオを基盤とする独自のビジネスモデルは、見る角度によってさまざまに“呼び名”が変化する。しかし、その根底には未実現の価値を見いだし、新しい価値をつくり出す力と、時代に即して自らを変化させていく企業姿勢がある。

オリックスとは何者か
金融を軸に、事業運営に乗り出す独自のビジネスモデル

名和 高司 氏

一橋大学大学院国際企業戦略研究科教授
東京大学法学部卒、ハーバード・ビジネス・スクール修士(ベーカースカラー授与)。三菱商事の機械部門(東京、ニューヨーク)に約10年間勤務。 2010年まで、マッキンゼーのディレクターとして、約20年間、コンサルティングに従事。自動車・製造業分野におけるアジア地域ヘッド、ハイテク・通信分野における日本支社ヘッドを歴任。日本、アジア、アメリカなどを舞台に、多様な業界において、次世代成長戦略、全社構造改革などのプロジェクトに幅広く従事。

名和 今日は「オリックスとは何者か」を解き明かしたいと思っています。

井上 オリックスは「その他金融」「ノンバンク」と分類されがちですが、収益の大半は非金融事業によるものです。リース事業を主業としていた時代から事業内容が大きく多角化してきたにもかかわらず、実態を伝えきれていないもどかしさがあります。

名和 総合商社も金融機能をもった事業開発・運営企業と言われますが、商社はいわば商流から入って金融機能を有するようになりました。オリックスは、逆にリース事業をはじめとする金融業を軸に、事業運営に乗り出してきたように見えます。

井上 商社は格付機関の事業カテゴリにおいて、「SOGO SHOSHA」という独自のカテゴリを確立しました。オリックスも「ORIX」という独自のカテゴリを確立するくらいになりたいと思っています。

名和 私は企業を比較する際に、事業を深堀りすることに強みを持つ「ファーマー(農耕民族)型企業」と、新規事業の開発に強みを持つ「ハンター(狩猟民族)型企業」に分類しています。メーカーの多くはファーマー型企業、金融機関の多くはハンター型企業に分類されます。一方で、オリックスは両方を兼ね備えている「ノマド(遊牧民族)型企業」だと思います。

井上 オリックスには投資案件に嗅覚を働かせるハンターもいれば、地道に事業を運営するファーマーもいます。逆境を乗り越えるために新たな事業運営に進出する例も多く、おもしろいと思います。例えば船舶リース事業で回収が困難になった際に、船舶の運航・管理業務に進出しました。不動産や航空機事業もきっかけは同様でした。オリックスには金融知識や金融マインドがあるため、事業運営でもリスクをコントロールすることができます。

オリックス流の成長の方程式とは
金融機能を駆使して、未実現の資産価値を見いだす

名和 オリックス流の成長の方程式の1つが、ブルーオーシャン(競争のない未開拓市場)に飛びつかず、自社の強みが活用できる周辺領域にターゲットを移すことで新規事業に進出することだと感じました。

井上 オリックス初の海外プライベート・エクイティ投資*1を担当した経験があるのですが、真剣にスキーム作りに取り組めば、未経験分野でも、その領域のプロと伍していけるものです。

名和 用心深く、大胆にリスクをとるわけですね。新規案件を実行する際の法則はどのようなものでしょうか。

井上 基本的には契約時点での条件次第です。結果的に半分ぐらいの案件を辞退しています。海外案件には、為替、ソブリン*2、リーガル面など、さまざまなリスク要因があり、信義則を守るパートナーの見極めも重要です。大半のプライベート・エクイティ投資は成功し、リターンも高く維持しています。社員には、取引の実現が最優先ではなく、会社のためになる取引かどうかを常に考えるように伝えています。一度開始した案件には思い入れも強くなり、中止しづらいことも多いと思います。社員には「会社のためにならない」と判断すれば、いつでも途中でやめる勇気を持てと言っています。

名和 オリックスには、「未」を「実」に変える力があると思います。つまり金融機能を駆使して、社会でフル活用されていない資産価値を見いだす力があります。例えば太陽光、風力、地熱などの再生可能エネルギー事業、国有資産の価値を引き出すPFI*3やコンセッション事業*4などです。まさしく事業を通じて社会的価値を創造するプロセスを実現しています。

井上 結果論とも言えます。太陽光発電事業は、原発事故後にニーズが高まり、新規参入でも十分に採算がとれると判断しました。介護事業は、10年ほどトライアンドエラーを重ねることでノウハウを蓄積し、収益も向上してきたと自負しています。社員に失敗を許さないとノウハウは得られません。私自身も失敗から多くを学びました。

名和 最近のコンセッション事業などは、40年以上の長期契約で、かなり先を見通す力がないと、利益を確信できないのではないでしょうか。

井上 関西・大阪(伊丹)両空港の経営権を譲り受け、2016年4月から運営を開始しています。PPP*5、PFIなど公共サービスの運営に民間資金を活用するニーズをとらえ、約2兆円の費用を充分に回収できると判断して参入しました。コンセッション事業では、不動産、事業投資、会計、環境エネルギーの各部門から50名から60名程度のタスクチームをつくりました。こうした柔軟性はオリックスの特長だと思います。

グローバル成長2.0に向けて
オリックスならではの分野にターゲットを絞り、ニーズを掘り起こす

名和 国内で取り組むエネルギー関連事業や介護事業、コンセッション事業などの先進的事業を、日本発で将来的にアジア市場などでも展開していく予定はありますか。

井上 サウジアラビアから介護事業の視察を受け入れるなど、各国からアプローチをいただいています。海外では、オリックスはノウハウを提供する役割を担う場合も多くあります。

名和 イギリスのEU離脱、トランプ政権の誕生など、グローバル化に背を向けるような動きが台頭しつつあるなか、オリックスの事業展開への影響もあるのでしょうか。

井上 オリックスはボーダーレスに事業を展開しており、各国の通貨で資金調達して営業しているためマイナスの影響は受けづらいと思います。米国市場では営業資産約9,000億円の規模にまで成長し、収益も好調です。海外ではターゲットとするエリアを選定することが一番大事です。競合相手の大手外資系投資銀行が狙うのは大規模な案件ですが、オリックスは中規模のビジネスにターゲットを絞っています。一方、GDP約500兆円の日本市場にもまだ手つかずの領域があります。

名和 日本市場は飽和状態という見方もあるのではないでしょうか。

井上 発想の転換が必要です。小説・ドラマの「下町ロケット」のように、必ずこれから発展するテクノロジーがあります。グローバルに通用する技術の種を、目先の収益ではなく中期的視点でプライベート・エクイティ投資を通じて育てていくために、時間をかけて案件を精査するように指示しています。中小企業のオーナー社長と直接向き合ってコミュニケーションをとることが必要だと思います。

真のグローバル企業として確立するために
オリックス最大の資産である社員に向けた施策

名和 オリックスの資産は人だと思うのですが、一般的に社員の皆さんはキャリアローテーションでさまざまな部署に異動されるのでしょうか。

井上 ノウハウを共有していくため、部門を越えた異動も活発に行っています。今後は、優秀な海外スタッフをオリックス本社に出向させるなど、国内外で交流を活発化させたいと考えています。そのために国内本社のシステムなどのインフラも英語に対応させることが、今後の課題であると認識しています。

名和 社員のモチベーションや満足度については、どのようにお考えでしょうか。

井上 事業が多角的であるだけに、グループ各社、部門によって満足度が異なります。生産性をあげて利益率をあげていくと同時に、社員を増やして残業を減らしていくなどのアプローチが必要です。2016年からは働き方改革委員会を立ち上げ、若手女性社員、若手男性社員、課長クラスと別々に課題を検証し、改善を進めています。

「共感共創力」の時代
社会価値と経済価値を両立させる経営を実践

名和 オリックスは社会的価値と経済価値を両立させる、まさにCSV(Creating Shared Value)*6の代表的な事業モデルと感じます。

井上 他の会社が手を出さない分野に進出した結果、社会貢献につながっているのだと思います。社会的意義がある分野に事業機会が眠っているのであって、最初から社会貢献だけを狙っていては事業として成り立ちません。

名和 オリックスは、知れば知るほどファンが増える会社だと感じました。収益を生み出しながら社会に貢献しているため、株主にとっても良い会社だと思います。ESG投資*7銘柄としても魅力的です。企業のブランド価値を算定する数式(アルゴリズム)として「共感共創力」というものがあります。企業価値をあげるには、顧客や市場から企業活動に共感してもらうためのストーリーを創ることが大切という考え方です。

井上 今や当社グループは生命保険、銀行、クレジット、旅館やホテルなどの宿泊施設運営など1/3程度がリテール分野の営業資産です。個人投資家の皆さまにも、オリックスの成長への期待を高めていただくために取り組んでいきたいと考えています。

名和 グローバル企業としてガバナンス体制の強化についてはいかがでしょうか。

井上 一番のテーマは、ERM (Enterprise Risk Management)*8の構築です。国内外の専門家の知恵を結集し、内部統制やグローバルコンプライアンスのルール作りに取り組んでいます。

名和 最後に「最初の質問」に戻ります。オリックスとは何者ですか。

井上 あえて言えば、「マルチナショナル・ブティック・エンタープライズ」(multinational-boutique-enterprise)でしょうか。オリックスの冠で世界中にさまざまな専門ブティックを展開し、それらを集約したものがオリックスグループというのが理想ですね。

用語解説

*1 プライベート・エクイティ投資
未上場企業の株式を取得し、経営をサポートすることで企業価値の向上に貢献し、株式を売却することで利益を得る投資手法。

*2 ソブリン・リスク
国家に対する信用リスク。主に、政情不安、財政赤字などにより、債務不履行が懸念される場合に高まるリスクのこと。

*3 PFI(Private Finance Initiative)
公共施設等の設計、建設、維持管理および運営に、民間の資金とノウハウを活用し、公共サービスの提供を民間主導で行うこと。PPP*5の代表的な手法の一つ。

*4 コンセッション事業
公共施設等運営権制度を活用したPFI事業。公共施設やインフラにおいて、その所有権は公共に残したまま、長期運営する権利のみを民間事業者に売却し民営化する手法。

*5 PPP(Public-Private Partnership)
公と民が連携し、効率的かつ効果的な公共サービスの提供を行う取り組み。

*6 CSV(Creating Shared Value)
アメリカの経営学者、マイケル・E・ポーター氏によって提唱された概念で、事業活動を通した社会課題の解決と企業の利益の追求を両立する考え方。

*7 ESG投資
Environment(環境)、Social(社会)、Governance(ガバナンス)の3つの観点に配慮した経営を行っている企業を選別して投資する手法。

*8 ERM(Enterprise Risk Management)
企業において発生するさまざまなリスクを全社的に管理する体制。